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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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『君たちはどう生きるか』を観た話※ネタバレ盛り沢山注意

前置き

自分とネタバレと新作と

2023年7月14日。
それはジブリの新作『君たちはどう生きるか』の公開初日だ。
告知を全くしないことで、あのポスター(通称『君生きバード』)以外何も、そう、あらすじさえも分からない状態で、その映画は公開された。

自分はネタバレを酷く嫌う性格だ。
かつてコロナ禍で『鬼滅の刃 無限列車編』が公開された時、いつ劇場へ足を運ぶか迷っていた。
だが、元は漫画である故に知られてる展開だからか、自分は割と早めに重大なネタバレを踏んでしまった。
何なら、実際に観に行く予定を立てその日を待っていたら、とんでもないワードがTwitter(現𝕏)のトレンド入りを果たしたことを嘆いたこともある。

自分がネタバレを踏むのも嫌だが、同時に他者の「初見」の感覚も大事にしたいと考えるタイプでもある。
いわゆる、オタクの「初見の反応からしか得られない栄養がある」というやつだ。

そんな性格をしている自分は、最初はそこまでストイックに『君たちはどう生きるか』(以後、『君生き』と表記させてもらう)の情報を追っていなかった。
公開日を知ったのもやはりTwitterのトレンドに入っていたからだ。

もちろん、ジブリ作品は大好きだ。
特に『もののけ姫』は物心つくかつかないかくらいの小さな頃からハマっていたと親から聞いたほどだ。
あの時の山犬好きが、今の狼好きの原点とも言えるだろう。

さて、話を戻すと自分は結果的に『君生き』を公開初日に観に行った。
理由はどちらかと言えば後ろ向きな思考で単純。
「ドヤ顔ネタバレ勢が湧いた場合、不意にネタバレを踏みたくないから」
それだけだった。

もちろん、内容が気にならないわけではない。
それでも週末などではなく、初日の金曜に行ったのはやはり誰から聞くでもなく己の目で確かめたいという気持ちの方が強かった。

全ての反応がネタバレとなる

そして1人で仕事終わりに観に行った自分は悩みの渦に飲まれた。
感想を言いたい。しかし言えない。
ポスター以外の何も分からない状態で、「良い」「悪い」と言う事でさえネタバレになってしまう。

最近のジブリといえば裏に込められたテーマを考察して読み解きたくなるファンを生み出すほど、難解な時がある。
ポニョなど、「あれは死後の世界だ」「駿監督の母が〜」などさまざまな考察を目にした。
今回の『君生き』がそのような考察が捗るタイプなのかどうか、そして「分かりやすい」のかどうかといった情報でさえネタバレになってしまう。

何なら、主人公が何者なのかと言う情報でさえネタバレになる。

なぜこの記事を書くのか

さて、この記事は映画公開から、そして鑑賞から3ヶ月が経った今、その当時吐き出すにも吐き出せずにスマホのメモに書き殴った感想・考察を一部修正して以下に記している。
この文章も最初はネット上に出すつもりはなかった。
あくまで、同じように映画を観た人にのみ「自分はこんな感想を抱いた」とプライベートで見せていたのみだった。

しかし、そうして見せた友人の1人が「これはネット上に出すべきだ」と言ってくれた。
「何かを感じていても言語化できないでいる人もいる。そのヒントになる内容だ。」と。

元々誰かと分かち合いたかった、語りたかった。
鑑賞後は帰宅しても心が劇場の座席に置いてぼりのような感覚があった。
知り合い(初見)と観に行くまでの1週間は吐き出すにも吐き出せない様々な考えや感情がぐるぐるモヤモヤと胸の辺りを蠢くほどだった。

今や声優陣も明かされ、主題歌も有線で流れまくり、そして海外向けの予告編も公開された。
願わくば、まだ観ていない人がいるならばそれらを調べず、そしてこの記事もここで読むのをやめて映画館へ行ってほしい。

一つだけ明らかに言えることとしては
「映画を全くの0から手探りで観る感覚は何者にも代え難い」
ということだ。

様々な情報が公開されていくたびに、「これらも知らずに、まっさらな状態で観られたことの貴重さ」というものを噛み締めていた。
その経験は日が経つにつれ得ることが難しくなってくる。
気付けばあちこちで当たり前のように内容を知る機会も増えるだろう。

鑑賞中のその感覚はまるで「恐怖心」に似たものだった。
何が起こるのか。どうなっていくのか。
初見は全てが初めての映像なのだ。
身一つで情報という大きな濁流に飲み込まれて、どうにかそれについていこうとする。
前知識という酸素マスクをつけて潜ったのではきっとその濁流の受け止め方も変わってくるはずだ。
叶うならば、なるべく情報をシャットアウトして劇場の座席に座ってほしい。

と、前置きが長くなったが、これより下からその初見後に書き連ねた感想・考察を貼り付ける。
「わかる!」や「そういうことなのかも?」などなど、様々な考えの幅を広げる助けになれば幸いだ。
※考察めいたものも書いているが、自分はガチな考察勢ではないのであまり細かなツッコミは控えていただけるとありがたい。

『君生き』ファーストインプレッション※全体の細かいネタバレ注意

序盤。戦時中のシーン。母がいる病院が火事になり無我夢中で走る。主人公以外の人たちが朧げな輪郭で不気味感。
最初の印象は「暗い映画」だった。
ポスターがなまじ非現実味を帯びているから、ファンタジーものだと思っていたがそこに広がるのは高畑勲監督の火垂るの墓かのような映像。

場面変わって疎開先。青鷺にストーキングされ、やっとあのポスターとの繋がりが少し見える。青鷺が歯を剥いて笑う。不気味。
あとあと青鷺の姿がちゃんと出てくるが、基本的に主人公家族以外のキャラデザがどこか不気味さがある。
ばあや達はコテコテにジブリナイズドされたデフォルメされた老婆だし、青鷺も鼻と上唇が合体したような、どこか憎たらしいキャラデザ。
↑7/23 2回目視聴追記。改めて観れば青鷺は一応上唇ありそう。

少なくともラピュタのようなものを期待したら肩透かしは食らうだろう。

ただ、謎の塔が出てきて、なんやかんやでそこに侵入した後はポスターからも感じられる不思議な、非現実味を帯びた世界が広がっていた。
ただし、その世界の仕組みなどが全くつかめない。
千と千尋なら神々の世界といった説明があった。

今回はとにかく説明がない。一応、世界のルールや仕組みなどを説明してくれるキャラは複数いるが「なぜ」その世界があるのかというところはわからない。
ただただそこに世界があるだけである。

人を食らうインコ
現世に生まれる前の魂(わらわら)
魚がいなさすぎてわらわらを食べるしかないペリカン
殺生ができない水みたいな人

ただ、かろうじて読み取れる情報から推察すると以下のようになるのだろうか。

『昔、その地に空から謎の石が落ちてきた。その石に魅入られた大叔父がその石を囲うように建物を建てた。それが塔である。
大叔父は未知の石と契約を交わし、その塔(石?)の中でもう一つの世界を作ることになる。石でできた積み木を積むことで、世界を如何様にも作ることができる。
大叔父はずっと塔と世界を管理し続け、年老いていた。後継者をみつけ、その後継者が新たな世界を作らないと塔の中の世界は存続できない。塔の中の住人は外(現世)へ逃げ出さない限り世界と共に消滅するだろう。

後継者は大叔父の血筋の者でないとなれない。そしてその誘う声もまた血筋の者でないと聞こえない。
主人公の母もまた、子供の頃に塔に呼ばれ、かの世界へ行ったことがあった。そして戻ってきたが異世界へ行っていた記憶はないという。
後に主人公を産み、そして火事で死ぬ。
主人公もまた、塔へ誘われ異世界入り。
様々な出会いと試練を得て大叔父のところまでやってきた主人公は、後継者の座を譲られるが自分にはその資格はない、現実世界で生きると大叔父に告げ、脱出。
彼方の世界の石をこっそり持っていたことで記憶も残るが、時期に忘れるだろうと青鷺に言われ、現実世界での生活へと戻っていく』

人を食らうインコはかつて大叔父が塔の中に放した?のが繁殖し、進化して文明を得た姿?

ただ、結局青鷺が何者なのかは分からないままだと、ここまで書いても思う。
塔の中で出会った少女は母の少女時代の姿であり、助けてくれた船乗りは共に塔に乗り込んだばあやの若い時の姿であった。
一応、それぞれの人物は現実世界での人物とリンクするのだが、青鷺だけは現実世界でもあの世界でも、おじさんの姿になったりして何者なのかが掴めない。
↑7/23追記。青鷺が塔から出てもあの姿に見えたのは眞人が石を持って帰っていたからか?あの塔の魔力が無ければただの鳥にしか見えないのか?

細かいところは置いておくとして、個人的には駿監督自身が「どう生きたか」を描いてるような気がした。
駿監督はマザコンの要素があると昔何かで見た。
主人公は母を火事で亡くし、悪夢として火事の夢を見るほど母に執着している。
最後は義母を母と認め、若かりし実母とは現世に戻る前に改めてお別れをして日常へ戻っていく。

これは、駿監督なりに母への想いを昇華させたのだろうかとも思う。
(追記:駿監督の母を検索したらすごく腑に落ちた)

同時に、大叔父もまた駿監督自身なのではないかと思う。
世界=作品とし、あらゆる形で世界を生み出した。
が、駿監督自身も老いて、毎度引退宣言をしている。
しかし、実子の吾朗氏のことはゲド戦記で酷評しているし、なかなか後継者らしい後継者も現れない。
ジブリのアニメ部門も切り離してしまい、高畑勲監督亡き今、ジブリと言ったら宮崎駿監督みたいになってしまっている。

だから、最後は世界が消えてしまう。
ジブリの最期、という印象を受けた。

これはまるで、庵野秀明監督とシンエヴァのようでもあると思った。
庵野監督はシンエヴァにて、TV版から旧劇場版、そしてそれらとは一新したはずの新劇場版を繋げ、そしてエヴァの終焉を描いた。
同じように、「君生き」もこれまでのジブリ作品の幾つかをオマージュし、そして最後には唐突に日常へと戻る終わり方をして、「アニメ=非現実な世界」との決別を描いたのかもしれない。

本当にこれを引退作として作った感じはする。

…まぁ、そこからまた意欲が湧いて作る可能性は大きいが。

ここまで、濁流のような情報に飲まれながらもなんとか自分の中で観てきたものを咀嚼してきたが、敢えてすごく浅い感想を述べるなら「映像は綺麗なのだがアニメーションがぬるぬるしすぎて目が疲れる」
特に序盤なんかは動きのぬるぬるさを感じ、アニメーションとしてはすごいのだが同時にそれがどこか歪さを抱かせた。

とはいえ、その前週にてナウシカ(※金曜ロードショー)を観て「昔のジブリのタッチ良いよなぁ」とか思うから、ツルツルテカテカな質感やぬるぬるとした動きが異質に見えるのかもしれない。


ここまで書き切って、やっと心が自宅の自分の体内に戻ってきた感覚があるため、唐突ではあるがここで文章は終わる。

更なる追記だが、物語のキーワードになる『塔(=謎の石)』はまるでSCPのようだな…など鑑賞時に考えていたことも追加しよう。大叔父が建てた外壁はまるで収容するために専用で建てたセクターのようではないだろうか。多分それっぽく書けば立派な報告書になりそうだ。

情報が明かされた今思うこと

海外向け予告の印象

↑これは海外向けに公開された予告編だ。
こちらは題名が『少年と青鷺』と分かりやすいものになっている。
この題名についてファンが考察を展開させてたりしてるのを見たが、自分はそこまでの知識はなかったので割愛させていただく。

この予告を見た時の印象は「『千と千尋の神隠し』(以下、『千と千尋』と表記する)と雰囲気が似ている」だった。

子供の頃に観た『千と千尋』の予告編の印象は、どこか不気味さと恐さに似たものを抱かせた。
少なくともトトロやラピュタのような「スゲー!楽しみ!」といったものではなかった。
トンネルの向こうの不思議な世界で何が起きるのか?親が豚になる…!?という驚きと好奇心のような感覚だ。

それと似たもので、『君生き』も恐らくこの予告を観て「ルンルン♪」と劇場に行くタイプではないだろう。
不気味さ、警戒心といったものの中に「どうなるんだろう?」という好奇心が湧くタイプの予告編だと思った。

そして、そういった類似を感じながら思ったことがある。
この2つ、似ているのだ。

『千と千尋』はざっくり言えば親を助けるために異世界を冒険する物語だ。
そして『君生き』もやはり親(実母・継母どちらも)を助けようと異世界を冒険する。
また、序盤の「これどうなるんだ?」というハラハラ感も似ていると言えるだろう。

エンディングとスタッフロール

あのエンディングを観た時の衝撃は計り知れなかった。
それは例えるなら、タクシーで目的地までお願いしたら、目的地付近で急ブレーキをかけて路肩に放り出されたかのような唐突さだった。

「え、これで終わり?」となる中流れる主題歌とスタッフロール。鑑賞前にTwitterハッシュタグによりアーティストの予想はついてたが、スタッフロールの序盤はほぼほぼ歌詞が耳に入っていなかった。

「これで終わり?」と衝撃を受けながらも、更に出演で並ぶ豪華な面々に「マジ!?どのキャラ!?(役名は書かれていないため)」と続々と来る衝撃の連続で、主題歌は後半になってやっと耳に少し入ってきた感じだった。

そして、並ぶ制作会社の豪華さにまた鳥肌が立っていた。
自分はあまり制作会社などの裏側に詳しくはないのだが、そんな自分でも知ってる名前が大量に並んでいた。

その豪華さにただただ圧倒されていた。
そして終演し、劇場内に電気が灯ったとき、おそらく自分は一番腑抜けた顔をしていたと思う。
時間が許すなら暫く座席に沈み込んでいたかったほどだ。だから心だけ置いてけぼりになってしまったのかもしれない。

そして帰宅してからは、多くの感想を読み漁った。
イラストで感情表現をする人。動画でビフォーアフターを撮る人。色んな人たちの感想で、大体の人が神妙な面持ちになっていることに激しく同感していた。

最後に

つらつらと書き連ねていたらどのように文章を締めくくるか分からなくなってきた。
なので、映画同様に唐突にこの記事を終わらせようかと思う。

とりあえず、若キリコさんがイケメンすぎて好きです。ヒミ様も可愛かった。(超浅い感想)
あとインコはあれ初見カカポだと思った。回らなければ。


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