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その歌はきっと、世界中を晴れにする

『これからも、ついてきてください』

たったそれだけの言葉と、涙と、歌声が、わたしの毎日を変えてしまった。
そんな漫画みたいな、本当の話をしよう。

***

その人を初めて知ったのは、『アイドルマスターSideM』という二次元アイドルコンテンツだった。

ブラウザゲームからアプリ、楽曲展開からのライブ開催、果ては二度のアニメ化まで幅広くメディアミックスされている。もし気になった方はどの媒体からでも構わないので調べてみて頂きたい。

(ここでは説明は割愛するので、SideMのアイドル46人が全員で歌う代表曲を置いておきます)

2017年2月、わたしは初めてSideMのライブに参加することになった。参加にあたりわたしは、コールやライブの空気感を体感するために過去のライブ映像をできる限り漁ることにしたのである。

そう意を決して見始めた、1stライブ昼の部。
そのステージの真ん中で、楽しそうに歌い、話す、赤い衣装のひとがいた。

『楽しそうだなあ』というのが第一印象だった。
『声量あるなあ』『すごく伸びやかな歌声だなあ』『この人相当歌上手いんだろうなあ』などと、その後に思った。
そして、MCの時にその人が「天道輝役の仲村宗悟さん」であるということを初めて認識し(まだキャラと声優が完全に一致していなかった)、『珍しい名前だなあ』などと思っていた。

それだけのはずだった。
昼の部の、アンコール後の挨拶を見るまでは。

あれだけ終始笑顔で、でもどこかぎこちなく。それでも楽しそうに歌い踊る、その「天道輝役の仲村宗悟さん」が、

泣いていたのだ。

そして泣きながら、言ったのだ。

『これからも、ついてきてください』

ぴしゃん、と落雷でも落ちたような感覚って、あの時感じた衝撃のことを言うのだと思う。

なんだこれは。
なんでこの人は、あれだけ楽しそうにしながら、こんなにも、こんなにも、切実に、まっすぐに、涙ながらに語りかけてくるのだろう。

一体どこから、こんなにエネルギーが出てくるんだ。こんな、見るもの全てを惹きつけてしまうようなエネルギーが。

そんな疑問と、新しい出会いへのドキドキと、初めて体感したライブというものの楽しさと。
なんだか色んなものが混じりあった感情のまま、わたしはテレビの前でペンライトを振っていたのだった。

その少し後。
沖縄タイムズで、宗悟さんの特集記事がアップされる。

わたしはここで、初めてこの人が何者たるかを知った。
「天道輝役の仲村宗悟さん」ではなく、「声優 仲村宗悟さん」そのものを知った。
それと同時に、件の1stライブ昼の部がこの人にとって初めての大きなステージであったことを知った。

なんてすごい人なのだろう。
こんなにも自分の人生を、夢を追いかけることを諦めていない人が、人生そのものを楽しんで生きている人が、この世界に存在するのかと。

ああ、この人が進む未来を見てみたい。
この人の行く先を応援したい、ひっそりとでいいから、輝いていく姿を見ていたい。心の底からそう思ったのだった。

それから、わたしの毎日の色んなことが少しずつ変わっていった。

木曜19時からの配信番組に間に合わせるために、定時で仕事を終わらせるようになった。
遠いと思っていた東京は、現地参加を繰り返すうちに「日帰りで行ける場所」になった。

まるで雨雲の隙間から、晴れ間が見えてくるような。
そんな風に少しずつ、毎日が楽しくなってきた。
ラジオも、曲も、番組も。
宗悟さんの存在と声が、いつだって心の支えだったのだ。冗談じゃなく。

***
 
そして2019年。真夏、某日のこと。
宗悟さんのWeb番組「めんそ~れ!仲村屋」公開収録昼の部に参加させていただいた、あの日。

『仲村宗悟 アーティストデビュー決定!』

その発表に沸いた歓声の響きを、わたしは今でも覚えている。
鳴りやまない拍手と、「おめでとう」の声と、泣き声とが混じり合ったあの一瞬を、今でも鮮明に思い出せる。

その瞬間、わたしは、満面の笑顔で拍手を送っていた。
宗悟さんが上京して10数年追いかけた夢が叶ったことが、そして発表の場に居合わせることができたのが、ただただ嬉しくて。

『嬉しい』と『おめでとう』の感情が、わたしの心を満たしていた。あの瞬間のわたしにはそれしかなくて、一滴の涙も出てこなかった。

同伴してくれたTwitterのフォロワーと喜びを分かち合い、わたしは最終の飛行機で秋田へと帰った。
高速道路を1時間かけて車を走らせ、エアコンのついていない真っ暗な我が家へと帰宅する。
リュックを投げ捨て、電気をつけて。明るくなったわたしの部屋で、真っ先に飛び込んできたのは、

某雑誌の抽選企画でいただいた、宗悟さんのサイン色紙だった。

それを見た瞬間、堰を切ったように涙が出てきた。
宗悟さんの追いかけた夢が、叶ったんだ。その夢じゃない最高の瞬間を、わたしは見たんだ。
それらは紛れもない現実で、その時になって初めて実感した。

***

そして2019年10月。アーティストとして一歩踏み出した宗悟さんの、最初の1曲が世に解き放たれたのである。

敢えて説明は割愛する。とにかく聞いて欲しい。ランティスさんが太っ腹過ぎるおかげでフルサイズで公開されているから。わたしは聞きすぎて発売前に歌詞をすべて覚えてしまった。

さらに勢いは止まらず、2020年3月。2ndシングルが発売。

2ndにして早くも個人チャンネル開設である。ランティスさんあまりにも太っ腹では。ありがとう。

動画タイトルにもあるようにこの曲、日テレの朝番組「スッキリ!」の3月期テーマソングにもなった。3月の平日およそ20日間の間、番組終わりにこの歌声がお茶の間に流れていたのだ。なんてすごい。

ちなみにわたしは、平日のスッキリ!終わりの時間なんてほとんど仕事だったわけで。漸くお目にかかれたのは春分の日の時だけだった。iPhoneをテレビの前で構え、「ほんとに地上波で流れてる……!!」と涙ながらに感動したものである。

とにかく、一度でいいから彼の歌を聞いて欲しい。そして、ご自身の耳をもって体感して欲しい。

老若男女全ての人に手を差し伸べて光の中に引っ張りあげてくれるような、心の底からじんわりと暖かい何かが浮かんでくるような気持ちになるはずだ。

「アーティスト 仲村宗悟さん」の歌声には、そんな力が秘められているのだから。

※当記事は2019年に書いたものを加筆修正し、キナリ杯参加作品として投稿し直したものです。※

仲村宗悟さんの話、続きです。


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椎瑠(しいる)
美味しい肉を食べます