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イラストレーションでの表現はまだまだ可能性がある。

昨年PIE BOOKSから発売された「心おどるイラスト×伝わるデザイン」という本があります。サイフォン・グラフィカの仕事も掲載させていただいたので、もちろんチェックしたのですが、この本は、実に2020年現在のイラストレーションをみごとに捉えているなと思いました。

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ギフトスイーツのパッケージにおけるイラストレーションの価値の向上。アニメ絵から派生したいわゆる萌え絵ではないpixiv系のイラストレーターの一般市場での躍進。誌面や画面以外にも店舗やホテルなどの空間にイラストレーションの活躍の場が広がっていること。それらの成功事例を見事に網羅していて、後年読み返すと2010年代後半のイラストレーションがこんな感じだったんだと総括できる内容になっていると思うのです。ここに足りないものがあるとすると、アニメーションまで手がけるイラストレーターが増えてきていることでしょうか。このへんは以前にこんな記事を書きました。

ギフトスイーツでのイラストレーションの存在。

2010年代後半のイラストレーションのトレンドの中で大きいのはギフトスイーツ業界だと思います。今までもギフトスイーツでイラストレーターが参加するものはもちろん多かったです。しかし大きくこのトレンドを動かしたのはフランセとAUDREYの2つの洋菓子ブランドの成功だと思います。

フランセはTHAT'S ALL RIGHT.のアートディレクター河西達也さんとイラストレーター北澤平祐さんの協働によって2016年にリ・ブランディングされた老舗お菓子ブランドです。

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一方、AUDREYは元々製粉会社からスタートしたプレジィールが新規で起こしたブランドで、アートディレクション及びイラストレーションはKIGIの渡邉良重さんが手がけられています。

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二つに共通するのはイラストレーションがブランドそのものの顔になっているということです。キャラクターではなくイラストレーターが生み出す世界観がイコールブランドの世界観に結び付いているのです。

考えてみれば、昔の洋菓子はそうでした。リ・ブランディグ以前のフランセはそれこそ東郷青児の絵が使われていました。そういう意味で原点回帰的な動きなのかも知れません。しかし、この二つのブランドの成功以降、これをロールモデルにギフトスイーツ業界に広告やエディトリアルで人気のイラストレーターをメインに据えたパッケージが多く見られるようになりました。一人のイラストレーターに個別のパッケージではなく、一つのブランドのイメージ作りを丸々お願いするようなケースです。

イラストレーションの領域の拡大

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THAT'S ALL RIGHT.のアートディレクター、河西達也さんのクリエイティブはとても面白いです。ブランドの着地点を決め、そこに辿り着くための細かいコンセプトはイラストレーターと共に模索します。つまりコンセプト段階からイラストレーターが関わっているのです。既存のコンセプトや描くものが決まった上で請けおう仕事と事なり、協働によりブランドやデザインに深い関係で関わります。

ナウオンチーズも河西さんがアートディレクションし、イラストレーターの杉山真依子さんがイラストレーションを担当するブランドです。こちらでは一歩進んで店舗ファサードにまでイラストレーションが広がり、パッケージを飛び出し空間にまでイラストレーションの世界観がブランドを支配しています。これは本当にエポックメイキングなブランディングだなとひたすら嫉妬したのを覚えています。

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フランセ表参道本店はカフェスペースも併設する店舗ですが、こちらでもパッケージやロゴを越え、お店の世界観がまるごと北澤平祐さんの絵の世界になっています。イラストレーションの領域の拡大をさらに強く感じ、今後イラストレーションがより空間デザインの分野に進出していくことを予感させます。河西さんのイラストレーションの使い方には、まだまだイラストレーションやグラフィックによるビジュアルコミュニケーションには可能性があるとワクワクさせられるものばかりです。

DORP INSPIRATION 2020が2月9日に開催。

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浜松市のデザインカンファレンスDORP INSPIRATION 2020が、2016年以来4年ぶりに開催されます。今回はTHAT'S ALL RIGHT.の河西達也さんにグラフィック表現の可能性とブランディングを。日本デザインセンターに新しくできたオンスクリーン制作室からはクリエイティブディレクターの関口裕さんに、エンジニアと手を組み新しい試みをする今後のデザイナーの形を。浜松を代表するプロダクトデザイナーは地方で東京の大手メーカーとも地元中小メーカーともプロジェクトを進める中で見えて来た、地元メーカーでのデザインの役割、発展性を。三者三様、色々な立場から“今”あるいは“これから”のデザインが見えてくるような楽しいイベントになればと思います。

浜松周辺のデザイナー、イラストレーター、学生はもちろん、今回は是非、自社の店舗や商品づくりに悩んでいるメーカーの方にも強く来場して欲しいなと思っています。地方とは言え、いつまでも東京でのロールモデルを二番煎じして成功する時代ではありません。2020年代の商品・サービス・ブランドのヒントを掴みに来てください。

イベント当日には、こちらも4年ぶりとなる浜松デザインパートナーズ2020が発行されます。浜松を中心に活躍するデザイン関係者74名の仕事を紹介する冊子になります。浜松地方からもクリエイティブなコラボレーション、仕事が増え地域のデザインシーンが活性化することを願っています。

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イベント名DORP INSPIRATION 2020
- 20年代からのデザイン・テクノロジー・エンジニアリング

ゲスト 関口 裕(日本デザインセンター オンスクリーン制作室)
    河西達也(株式会社ザッツオールライト)
    松田優(UO)
日時 2020年2月9日(日)
時間 1:00PM〜6:00PM
会場 会場鴨江アートセンター
料金 2,500円
イベント詳細 https://www.dorp.jp/event/dorp-inspiration-2020/


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