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悪癖は一日にしてならず


つい、考えなしに余計なことを言ってしまう。

人手不足で駆り出されて、家業の手伝いをしていた若い頃の話。正直、イヤイヤやっていたので、仕事の合間には従業員だった女の子を相手にだらだらと取り留めのないお喋りをしていた。店の中にはお客さんが数人いた。
何も考えず、「○○のラーメンは美味しくないんだよね。うどんはすごく美味しいよね」と口にした。完全に、友達との雑談モードである。女の子が「あっ」という表情をした瞬間、近くにいた中年女性が「うどん美味しいって言ってくれてありがとうっ」とこっちに向かって話しかけてきた。
その店の奥さんだった。


やってしまった、と察したけれど、私は引けなかった。(謝れなかった)
私は最後まで、「?」という顔をしたまま気づかないふりで、必死にそちらを見ないようにして女の子とお喋りを続行した。かなり苦しかった。

そんな黒歴史が私には山ほどある。

どうして今これを書いているのかと言うと、昨夜夢に見たのだ。
当時と同じ場所で、同じ年で、やっぱり同じセリフを吐いていた。
目覚めは最悪だった。
戻れるなら、戻ってやり直したい。
あんなこと20才そこそこの小娘に言われたラーメン屋の奥さん(そう! その店はうどん屋さんではなくラーメン屋さんであった)どんなに癪に障っただろうか。ごめんなさい。

年齢から考えると今は亡くなっているんじゃないかと思うが、たぶん、私の失言のことはずっと忘れなかったはずだ。やられた方はいつまでも覚えている。ごめんなさい。

感情のまま、言葉にしてしまう悪癖はいったいいつから私に身についてしまったのだろう。確か中学を卒業するまでの私の評価は『消極的』だったはず。大人になって突然、抑えていた感情が溢れてしまったのだろうか。その境目をまったく思い出せなくても。
「今」思ったことを、「今」言いたいのだ。
という私のしょうもないこだわりが持って生まれたものならば、私はほんのちょっぴり、安堵するが。

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