ヘダー

グルジア映画を観る【グルジア酔いどれ夜話/Siontak】

第二十一夜

2015年4月に呼称をグルジアからジョージアへと変更した、南コーカサスの国。日本ではあまり馴染みのないこのジョージアへ、シルクロード旅行中にたどりついたSiontakさんのコラムです。ジョージアとはいったいどんな国で、どんな生活をしているのか!?


第2、4火曜日更新
<著者:Siontak>

2016年2月14日未明、生まれて初めての胃痛にベッドから転がり落ちた。

キリキリと締め付けられるような痛みに意図せず小さい悲鳴が出る。洗面器に胃液を吐きながらまんじりともせずに迎えた朝、グルジア語を教えてもらっている渡辺さんに助けてもらって病院へ。

胃カメラを飲んだ後の診断はgastritis、急性胃炎だった。

前日の土曜の夜に風邪薬を飲んだところへ親友トトに呼び出されてチャチャをしこたま飲まされたのがいけなかった。
グルジア人は風邪ひいたと言うと、チャチャやウオッカを飲めば治ると言って飲ませたがるのだ。実際それで治る風邪もあるのだけど。

チャチャとはイタリアのグラッパのグルジア版みたいな蒸留酒。
ワイン醸造時に出る葡萄の搾りかすを蒸留して作るのでかすとりブランデーとも言える。グルジアのチャチャは平均度数50-60度とかなり高い。

胃カメラに映った映像はピンクの胃壁にまだら状に黒く糜爛(びらん)した箇所が広がっている。前日なにをして、なにを食べ、なにを飲んだのか言ってごらんとお医者さんに聞かれる。

その晩は夕飯も食べない空腹の状態でパブロンゴールドを飲んだため顆粒薬が胃壁、十二指腸壁をただれさせてしまったらしい。その後飲んだチャチャがただれた胃壁、腸壁をチャチャが蹂躙しして一晩で立派な胃炎ができあがった。空腹に風邪薬、チャチャは最悪の組み合わせとお医者さんに怒られる。ごもっともです‥

胃の痛みも苦しかったが一ヶ月間酒とたばこを止めるのも辛かった。お医者さんは毎年、冬から春にかけて胃炎を患う男が多いので気をつけなさいと言う。

なぜか?

生理学的な側面もあるのだけれどグルジアでの大きな理由は冬になると寒さのためチャチャ、ウオッカの飲酒量が増えるためだとか。以来、僕も冬は飲酒量に気をつけながら春を待っている。

今年も僕の胃炎記念日、ヴァレンタインズデイが近づいてきた。ここのところは蒸留酒を控えてワイン片手にグルジア映画を観て過ごしている。

日本では珍しいグルジア映画をどうやって見るか。実のところグルジア国内にいてもDVDリリースは正規のものがなく、基本はインターネット上で見ることになる。

グルジアにコピーライト(著作権)といった概念が育つのはまだまだ先のようでimovies.geという身も蓋もない映画ストリーミングサイトが堂々と運営されていたりする。ハリウッドや日本の映画がどっさり公開されてるからびっくりする。

Youtubeにも多くのグルジア映画がアップされている。もちろん日本語で検索しても出てこない。グルジア語やロシア語で検索するとわんさと出てくるのだ。もちろん画質は求めるべくもないが・・

今回は最近観た映画の中から著作権上問題がないと判断できるものはURL付きで紹介したい。全部で5本。
ほとんどソ連時代のものになってしまったが昨年は日本で最近のグルジア映画が2本上映された。ヴァレンタインズデイ、一人でも二人でもグルジア映画を観て過ごすのもそう悪くはない。


不思議惑星キン・ザ・ザ 原題:Кин-дза-дза! (1986)

おそらく日本で一番有名なソ連のカルトムーヴィー。

ひょんなことから別惑星にテレポートしてしまったロシア人とグルジア人の2人がモスクワに帰ろうと悪戦苦闘するSF映画。
作られた時代はソ連末期、監督はトビリシ出身のギオルギ・ダネリヤでタイトルのキンザザはグルジア料理には欠かせないパクチー、グルジア語でキンズィ(ქინძი)から来ていて劇中でもほかのさまざまなグルジアネタが出てくる。

日本では脱力系SF(笑)と紹介されることが多く、事実そのおかしな表情や動作、音楽には腰くだけになる。が、その裏に込めたメッセージはソ連批判だけにとどまらない、きわめてシリアスなSF。

配給元のモスフィルムがUPしてるので著作権の問題はなし。英語の他に日本語でも字幕がついてるのだけれどかなりタイムラグがあるのが惜しい。2時間以上物語が紆余曲折し続けるので時間と集中力がある時におすすめ。

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