ゴールデンカムイ31巻 感想と考察

アシリパさんの世代から積極的にアイヌの伝統や文化・歴史を継承しようとする若者がいなくなったのだろうし、尾形の代で武士道や軍人という職業に憧れる若者がいなくなって、志もなく軍人・政治家になった二世が親の七光りで活躍、戦後の今があるって皮肉だなと。

武士に関しては、俺たち下級武士なんてイャだ〜で明治維新なわけだから、アレなのだけども。
鶴見中尉も何だかんだで、最後の政府お抱えスパイだろうし。

音之進と勇作さんは、ダメ二世の典型だと思うけれども、それに足引っ張られる尾形というオマケポスターも含めて、負け組は死ぬまで負け組って世知辛い。

勇作さんに関しては、死ぬまで父の言いつけ守ったことを尾形が高潔と言ったけれども。

花沢母は嫁いだ先の名誉のため、鶴見中尉を頼った結果が父子共に殉死。

鯉登家は父が息子ダメだと頼った先が鶴見中尉なわけだけど、鶴見中尉でもダメだったわけで…鶴見中尉に処遇を任せるしかなくなった鯉登父の悲しさよ…

ダメな子ほど可愛いとは言うけれども、限界があるわけで、せっかく築いたお家の名誉汚されるのは、どの親も勘弁だろうにスギモトも谷垣も。

有古はアシリパさん見て、アイヌのためになにか残そうと思ったわけだけだけど、見事に手のひら返すアシリパさん本人。

それを言うなら、オラマタギ嫌だで逃げ出した谷垣も伝統継承を途絶えさせた張本人。こうやって世継ぎいなくなって途絶えたんだなと。

いや、マタギ復帰したのかもだけど。

にしても、インカラマッは谷垣に「行ってはダメ」と言わないで笑顔で送り出した時点で「コイツに期待しても無駄だ」と谷垣のこと見限ったとばかり思ったんだけど、のこのこ帰ってきた谷垣に愛想つかすこともなく…よくやるなと。
間違いなく良妻。マタギも農業も軍人もイヤで逃げ出した谷垣が、どうやって食い扶持稼いだのかは知らないけど。

スギモトも谷垣もヒモ…
オマケに谷垣は穀潰し……
 
まぁ…そこはアシリパさんもだけど「道理があれば…地獄に墜ちる覚悟だ」と言って惚れた優先して文化や伝統の継承を諦めたわけだし。

アシリパさんが、スギモトの何に『道理』を見出したのか説明してくれる人いるかな…頭の良い人ならわかるはず。

巻き込んだ責任感で…とか以外で。

結婚も恋愛も諦めたわけだからまぁ…現代が掲げる自由恋愛と言えば、それまでで「新しい女」っていう公約通りといえば公約通りだし。惚れてはいるから一方通行とはいえ恋愛なのかもだけど。見返りは一切無いけども。

父は文化伝統意思継承してくれる人と幸せになって欲しかった…なのに、伝統狩猟文化継承の最後のひとりになって、父は草葉の陰で泣きながら「そんな子に育てた覚えはない」って思ってるだろうなと。

地獄行きの通り、アシリパさんにとってのハッピーエンドじゃなく地獄エンドなのだけど。
子孫と血を残す。アイデンティティを伝承するという最もシンプルなところから遠い所へ飛躍。

まぁ…尾形の父は跡継いで欲しくなかったのかもしれないから、そこは…だけど、立派にそっくりどころか自分よりしっかりした性格に成長しちゃったわけだし、真面目すぎるがゆえに理解されないジレンマで…だけど。

鶴見中尉の言った通り、ウィルク・アシリパと二代に渡って自分の子を殺された鶴見中尉もとい長谷川さん。

いや、正確にはオリガを殺したのはキロランケでウィルクがキロランケにソフィアをどうするのか決めて欲しくて、キロランケとソフィアに復讐するかもしれない長谷川さんを止めた。っていう長谷川さん側からの回想を、まるっと忘れてる鶴見中尉だけど。殺そうと思えばいつでも殺せたのだから、わざわざ待つ理由がなかったなと。

そんなウィルクの意志を引き継いだのが尾形なわけで、樺太編ソフィア救出、キロちゃん最期、音之進誘拐の話以外は、ほぼまるっと話無駄だったなと長谷川さん話も無視されるし、いや、キロちゃん最期も無視されてるといえば無視されてるけども。

北海道、五稜郭にソフィアたちを呼び込んだのは、紛れもなくキロちゃん殺した音之進だけど。

だからといって別に否定してるわけじゃなく、話の主題と関わりのないスギモトが主人公で生き残るなら、尾形とは同時に存在できないから、まぁ、そらそうなるわ。ってだけの話で第七師団と新撰組な必要あったのだろうかと。

一応、主人公なのだからスギモトも報われなければならないし、スギモトに関してはそれがベストなエンディングってだけで。

鯉登少尉もまぁ…史実に即すなら…だし。
実在の人物関係団体とは関係ないフィクションなわけだけども。

一応ね。これが第七師団本部に置かれるのか…と思うとアレだなと。

二階堂兄弟も宇佐美も尾形も無駄死だったからさ…

どうなのだろう…スギモトに関してはアシリパさんと干し柿食べに行く。
梅ちゃん再婚は最初から既定路線なわけで、特に何があるわけでもなく。

加筆、スギモトと尾形のバトル、本誌はアシリパさんの選択の所までアシリパさんが尾形かスギモトのどっち選ぶか分からない。ちょい尾形優勢でアオリ文は尾形路線として描かれていたから、アシリパさんの手の平返しにオギャーってなったけど、本誌読んだ人のために分岐前から尾形と良い勝負するスギモトの話として書かれているのは、なんか安心した。

アオリ文には一応乗っかるタイプだもんで、これはスギモトの話であって尾形の話ではないって分かって読めるというところで。

ただ、加筆の相棒関係のところは、もの凄〜く気持ち悪かったけど(褒め言葉)

二次創作でも見かけない気持ち悪さは、流石原作。

まぁ…それにしたって世知辛いなとは思う。
鶴見中尉や尾形のような武士道で真っ当な正義感の人間が表舞台で生き残ってしまったら、歴史に名が残って歴史が変わっていたかも知れないし、今でも武士道残ってるかもってことなのだろうし。

アシリパさんもまぁ…スギモトじゃなく尾形選んでたら歴史変わっただろうかもだし。

どうなのだろう、尾形お上には表面上逆らわない。自分と周囲の人たちだけが幸せなら、それでいい。目に見える範囲の人は守りたいっていう性格として描かれていたとは思うから、歴史に影響はなかったかもなとも思うところ。

尾形もアシリパさんも子孫残してないから歴史途絶えて、伝言ゲームで新しいアイヌ文化っていうのはまぁ…強烈な左カウンターだなと。

何だかんだで、アシリパさん亡くなったら伝える人いなくなって空白部分になったわけだし、託す。って言ったって生まれも育ちも違う所詮他人だし、血が残るわけでもないし。

家族血族伝統主義自体は、これっぽっちも右だと思わないから、余計に左カウンターキツイ。

上川地方住みだもんでアイヌの木彫り、儀式関係受け継いでる人に関しては普通に小学生の頃に習った世代だし、90年代の法改正後辺りに上川で小学生だった人は交流会と金の雫、銀の雫をアイヌ語で朗読的な授業はあったかと。

なにせ知里幸恵の過ごした地だし。

文化自体は血族家族間には、個人単位で受け継がれていたりするわけなのだけど。

本誌『未来はアシリパさんの選択次第』ってアオリ文だったけど、30巻読んだら尾形のほうからアシリパさん奪いに行くだろうし、鶴見中尉も月島何が何でも手放さないなと思うところだし、月島は鯉登少尉粛清する気満々だったから、スギモトエンドってだけだなと思うところ。

ちゃんと完結してからの、鶴見中尉の追加エピソードは、エピローグとも取れるし、プロローグとも取れる、ラスト4ページの胸アツ展開。

話いったん〆たんだし、次作は一部読者にだけ忖度することもなく好きに描いてください。とは思うところ。

たとえそれが、初っ端から阿鼻叫喚の地獄絵図な話だったとしても。

北海道展が地元に来るならば、献花じゃなく凱旋で盛り上がりたいな〜


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