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年間500台のトラックを削減したウオロクの物流改善【ウェビナー】

9月7日(木)に開催された「リテールトレンドWEEK2023.vol 3」(一般社団法人全国スーパーマーケット協会、リテール総合研究所(株式会社ロコガイド内)主催)にて、当社の需要予測型自動発注サービス「sinops」を活用した株式会社ウオロクでの物流改善事例についてお話ししました。今回はそのウェビナーの内容をご紹介します。

登壇者

<食品スーパーマーケットを運営>
株式会社ウオロク

おいしく楽しい食卓と便利でより豊かな生活を提供する提案型低価格スーパーマーケット。新潟県新潟市に本社を構え、食品を中心として日用雑貨、衣料品、医薬品、酒類、住関連品を販売するスーパーマーケットを下越・新潟・中越地区を中心に43店運営している(2022年3月現在)。

<ウオロク新潟総合物流センターを運営>
株式会社ロジスティクス・ネットワーク
 
3PL・配送・保管・リテール事業を主力としたニチレイロジグループの物流会社。リテール部門では小売業の物流センター運営を担っている。ウオロクをはじめとした各社小売業の物流センターを全国32カ所で運営している。

<ウオロクに需要予測型自動発注サービス「sinops」を提供>
株式会社シノプス

「世界中の無駄を10%削減する」をビジョンに掲げ、需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」(シノプス クラウド)を開発・販売しているソフトウェアメーカー。日配食品や惣菜といった賞味期限が短く需要予測がむずかしいとされるカテゴリのシステム化に成功。食品小売企業をはじめとした108社に提供している。

需要予測技術を活用した物流改善、3つのターゲット

物流業界では、ドライバーや物流センター内の作業員不足、燃料価格の高騰などさまざまな問題を抱えています。そして、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する「2024年問題」も来年に迫っています。

八百板さん
「こうした問題の解決にはITを活用した生産性の向上・改善の取り組みが必須だと考えます。そこで、お客様へのサービスレベルを担保しながら、物流の改善に取り組めないか?と考えたのがsinopsを活用した物流改善です」

岡本
「ウオロクさんでは今回の事例以前より、一般的な自動発注だけでなく、さまざまな取り組みをさせていただいております。すべての取り組みのコンセプトは『店舗も、物流も両方よくなる。一方に負担をかけない』です」

物流センターへの発注を1日前倒しする「納品リードタイムの延長」

野口さん
「『ウオロク新潟総合物流センター』は、当社ロジスティクス・ネットワークが委託運営をしており、作業・配送のマネジメントを行っています。低温TC(※)、常温TC・DC(※)と複数の機能を担っており、複合型物流センターというのが最大の特徴です」

※TC:トランスファーセンター(通過型)
※DC:ディストリビューションセンター(在庫型)

幅広い商品を効率良く店舗に配送するため、温度帯別に1日4便という体制をとっています。早朝4:30~19:00まで、トラックを回転させて対応しています。このような運営を行っている中で、物流センターの運営コストにフォーカスをあてると、各便の物量のバランスやトラックドライバーの手待ち時間(※)なく、運行・回転させる物流センターの体制の構築が必要だと考えました。トラックやドライバーだけでなく、物流センター内の作業効率の向上も重要なポイントです。

※ 手待ち時間
待機時間。荷物の積み下ろしの際にドライバーが待機している時間のこと

野口さん
「しかし、今回の取り組み以前は、低温のリードタイムは1日ありましたが、4便の常温に関しては4~7時間と、リードタイムが非常に短く設定されていました。そのため配送回転の低下やピッキングなど、センター側の作業負荷が高い状況にありました。加えて、物量が少なく、トラックに余力を残したまま配送を行っていたため、2便3便は60~80%と、積載率が低いことも課題でした」

このように、各便によって効率にバラつきがあったため、店舗数が増えるごとに配送コストが上昇する傾向にあったといいます。

センター内の作業効率にも課題が

さらに、センター内での作業効率にも課題があったといいます。

野口さん
「常温DCに関しては、配送回転や店着時間を考慮して、2バッチ(※)制をとっていました。約半数にあたる20店舗分は3時間ほどでピッキング作業をしなければならないというタイトなスケジュールでした。さらに時間の制約がなければ1度で済むところ、2バッチ制を取っていたため、無駄の発生や大きな作業負荷が生じていました」

※バッチ
ひと束、一群、一団をといった意味の英単語が語源で、一括処理や自動処理のこと。物流においては、出荷作業情報などを一定時間の単位で区切り
、情報をまとめてから仕事を行うことを指す

「2024年問題に向けた」物流センター運営の課題

  • 店舗拡大に伴い、「早朝」「夕方」 それぞれの物量ピークが大きくなる

  • 2・3便の配送効率の低下

  • 常温DC作業の作業負荷増大

  • 車両・人不足によるサービスレベル低下リスク

物流センターの運営を維持するためには、以下のようなさまざまな課題があります。2024年問題もあり、このままでは店舗も物流センターも立ち行かなくなるという状況も想定されます。

常温品の納品LTを延長で解決できる可能性が

そこで、検討に上がったのは「2・3便の積載余力の活用」です。2・3便の配送車の隙間を埋めて、積載効率を向上させます。4便の常温商品をこの2、3便の隙間に混載することで、4便の物量の軽減、配送台数の削減ができるのではと考えました。しかし、4便の発注確定は3便の出荷後であったため、隙間の活用が難しい現状がありました。

野口さん
「そこで当社、ロジスティクス・ネットワークからウオロクさんへ、4便の発注締め時間の前倒しを提案しました。具体的には4便の常温DC商品の発注確定時間を24時間前倒しします。これにより、物流センターの作業時間を確保でき、2・3便の隙間に4便の商品を積載することが可能になり、配送車両の削減にもつながると考えました」

店舗では「欠品率の上昇」を避けたい

八百板さん
「この提案を受け、もちろん物流センターや配送効率の向上はウオロクとしても解決していきたいと考えている一方、店舗オペレーションや売場管理といったさまざまな側面から『影響がないか』を慎重に検討する必要がありました」

中でも、店舗として1番避けたいのは「欠品率の上昇」です。売り場の充実度が下がってしまっては、お客様の満足度にも影響します。そのため、まずはsinopsを活用し、LTを延長した場合の欠品率のシミュレーションを行いました。すると、欠品率はほぼ変わらないという結果になり、LTを延ばしても売り場に影響がないことを確認。LT延長の取り組みを実施することになりました。

「物流コスト削減」というゴールを明確にし、3社で共有

まず目指すべきゴールは「3便配送コストの低減」であると明確にし、3社でしっかりと共有することで、取り組みの軸がぶれないように心がけたと言います。

八百板さん
「3社でしっかりと合意形成をする。これがなにより大事なことだと思います」

このゴールの実現に向け、物流センターと店舗での運営方法の検討をおこな
いました。物流センター側では配送方法とピッキング作業の2つの運用方法を検討しました。

野口さん
「配送に関しては、日によって4便の物量波動が大きいことと、繁忙曜日にトラック台数が多く必要であることに着目しました。物量波動を2・3便の隙間で吸収することで、車両台数を平準化し、台数を削減できると考えました。さらに、作業については、現状の2バッチ制から1回で済むような仕組みへの変更を検討しました」

この取り組みを行ううえで、配送効果を算出するために削減できそうなトラックを選定しました。削減ターゲットは4便の配送車両です。曜日によって配送車両の台数にバラつきがあることがわかったため、台数が多い日は従来4便で配送していた商品を、2・3便の隙間に積載することで、台数が削減できると考えました。「まずは週8台の車両削減を目指した」と言います。

「配送の効率化」「全体最適」をキーワードにオペレーションを構築

今回の取り組みは、物流センターはもちろん、店舗オペレーションへの影響も大きいものがあります。しかしゴールは「配送の効率化」ですので、物流センターの希望を最優先に取り組んでいきました。

野口さん
「従来4便で配送していた商品を2・3便に混載するにあたり、商品の選定が必要になりました。その際も物量波動の大きい飲料、細かいピッキング作業が必要になるオリコン(※)商品という物流センター側の希望を優先していただきました」

※オリコン
物流センターでメーカーから届けられたケース(箱)を開けてバラピッキング(ピースピッキング)という方式で商品を仕分けし、店舗に届ける際に使う通い箱「折りたたみコンテナ」のことを略してオリコンと呼ぶ

八百板さん
「当然、店舗からすると『この商品を先に届けてほしい』といった声はありました。しかし、野口さんからもお話があったように『この取り組みのゴールは何なのか』『全体最適を目指す』ということを念頭に、進めていきました」

配送便の店着時間が早まったため、店舗オペレーションの調整も必要になりました。配送乗務員は拘束時間の短縮など、大きなメリットが想定される一方、店舗ではオペレーションの再構築や、バックヤードのスペース確保など、さまざまな検討が必要となりました。この辺りについても、ゴールである「配送の効率化」「全体最適」を第一優先に見直しを図ったと言います。

トラック年間500台削減を実現

これらの取り組みにより、年間500台のトラックの削減を実現しました。トラックの積載率は2・3便で15~25%改善と大幅に改善。さらに4便(常温品)を2・3便に前倒して混載する取り組みも、想定よりも前出し可能な商品が多かったことで、ターゲットとしていた車両の削減につながりましたが、積載率は5%低下となりました。

野口さん
「一部の小型店では4便の配送物量が大幅に低下しており、こういったことが大きな要因になっていると分析しています。このあたりは今後も調整が必要だと思っています。物流センターから遠方にある店舗の4便の廃止を検討するなど、ウオロクさんと協議しているところです」

トラックの削減、配送の効率化が達成できただけでは「全体最適」とはなりません。店舗では問題なかったのでしょうか。

八百板さん
「店舗・本部は『売場の見た目には大きな影響はない』という評価です。突発的に発生した欠品のリカバリーは遅れてしまうが、欠品の増加という意味では最小限に抑えられています」

岡本
「sinopsのシミュレーション結果はありましたが、こればっかりは実際にやってみるまではわからない部分もあるため、当社としても本当にほっとしました」

車両台数の削減だけでなく、「乗務員の手待ち時間削減」も実現

今回は「配送車両の削減」と「物流センター内作業の効率化」をターゲットとしていましたが、その他にトラック乗務員の手待ち時間の削減といった効果も得られたと言います。

野口さん
「今回LTを延長したことで、荷積み作業が前倒しできました。これまで荷積み作業が完了するまで、トラックは待機していたのですが、その待機(手待ち)時間が削減でき、効率的な配車が可能となりました。この配車スケジュールの組み立て改善は2024年問題に向けたドライバーの拘束時間管理にも大きく寄与すると考えています」

さらに、従来は約3時間程度で行っていたピッキング作業ですが、LT延長により物流センター内での作業時間をしっかりと確保できるようになったため、作業の安定化が実現し、作業トラブルの低減につながったと言います。

店舗での副次的な効果も

「配送の効率化」を目的とした取り組みでしたが、店舗オペレーションにも副次的な効果があったと言います。

八百板さん
「店着時間が早まったことで納品待ちの時間がなくなり、日中の作業人員を有効活用できるようになりました。すぐに品出しができるようになったですとか、欠品している商品の早期穴埋めなどメリットが色々とあったと、店舗からの反響がありました」

一方、店着が早まったことで「バックヤード在庫のスペースの課題」「搬入口の圧迫」など、今後の課題の声もあります。店舗の特性によるところもあるので、今後、オペレーション等の見直しを検討し、全体最適を図っていきます。

特売品のリードタイム延長

定番品のLT延長により、さまざまな効果を得られました。そこで現在、特売品に関してLTを延長することを検討しており、実証実験を行っています。

一般的に特売品は特売開始日の大体6日前に店舗から卸売業へ発注されるというオペレーションが取られています。これでは祝日等があった場合、在庫確保が間に合わないため、卸売業では受注前に見込み数で製造業へ発注を行っていると言います。

岡本
「これらが要因で物流センターの安全在庫が増加し、キャパシティー圧迫につながったり、在庫が足りない場合には臨時トラックを手配する必要があったりと、物流の非効率につながっています」

そこで、sinopsで特売品の需要予測を14日先まで行い、従来は数日前に確定していた卸売業への特売品の発注を、14日前に確定します。納品LTを長期化することで、卸売業の特売期間中の追加発注の対応に向けた需要予測や在庫調整業務の負荷軽減や、物流センターの過剰在庫や欠品リスクの抑制が期待できます。

岡本
「14日延長することでゴールデンウイークやシルバーウィークのような大型連休でも無理なく対応が可能になると考えています。sinopsによる確度の高い発注を行うことで、追加発注の抑制にもつながることが期待できます」

特売品の事前発注分に関しては、店舗納品日の数日前には物流センターに届きます。これらは基本的には物流センターに格納せずにそのまま店舗に納品されることが多いです。

野口さん
「そのため、事前発注である程度確度の高い発注が行える場合、物流センターに格納する手間が減るというメリットが考えられます」

特売品の追加発注数が読めず、欠品を起こさないように、物流センターには多くの安全在庫が納品されるのが現状ですが、今回の取り組みにより、これらの在庫を減らせることが期待できます。

八百板さん
「特に繁忙期は物流センターのキャパシティがひっ迫すると影響が大きいです。当社の物流センターでも在庫圧縮は課題の一つでもあるため、今回の取り組みにより解決できればと考えています」

今回は株式会社ウオロク、株式会社ロジスティクス・ネットワークとの物流改善に関する取り組みをご紹介しました。シノプスでは、需要予測データを活用し、物流改善、サプライチェーンの最適化の取り組みを推進しています。ご相談、お問い合わせは以下、「sinops-CLOUD」製品サイトよりお願いいします。