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#0 プリクラ

「ごめん、体調悪くて行けない」

言いたくない台詞を14歳から吐き続けてきた。
実家のソファー、発熱して熱い目と頭、足で揺らすレースのカーテン。
隙間から見える青空と、暑さでゆらぐ杉林を見ながら、もうこんな「青春」も何もできんなら、いなくなった方がましだと何度も何度も何度も思った10代。
死ぬ気はない。が、熱が出たままうなされて、蒸気だか空気だかになったほうが楽だと思っていた。
大体10代で“「青春」も何もできん”と思ってる時点でかわいらしい過去だと今は思えるけど、
当時の自分にとって、友人と同じエピソードを語れない、同じ夜を過ごせない、記憶の共有ができないことは本当に苦痛だった。

祭りの時期が来ると、いつも思い出す。
友人や好きな人といけなかった夏祭り。
学校で見る友人らが夏祭りで撮ったプリクラ。
無駄にもらったプリクラ。
それでも手帳に貼るプリクラ。
自分が写ることはなかったプリクラ。

2011年、家族性地中海熱と診断された14歳が、それから十数年過ぎた今、する予定のなかった結婚をして、産む予定ではなかった子どもまで出産し、さらに現在進行形で別の病気かもしれないと言われている、わたしのはなし。


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