事業継承の課題について調べてみた! 小規模事業と中小企業で後継者に求めることって結構違う。
エスイノベーション株式会社でインターンをさせていただいている早稲田大学の植田優輝です。エスイノベーションでは事業承継をサポートする事業を行っているということで、事業承継における課題を調べてみました。2012年に中小企業庁が公表している中小企業白書に、事業者さんが後継者に求めているスキルや素質なども書かれていたので、小規模事業者さんと中規模事業者さん(中小企業)の違いを踏まえて紹介していきたいと思います。
①後継者を決定する際に重視すること
小規模事業者 (n = 1242)
1位:親族であること(57.3%)
2位:自社の業界に精通していること(48.0%)
3位:経営に対する意欲が高いこと(38.6%)
中規模事業者 (n = 2256)
1位:リーダーシップが優れていること(57.2%)
2位:経営に対する意欲が高いこと(54.3%)
3位:自社の業界に精通していること(50.9%)
小規模事業者さんの場合、アンケートに答えた半数以上の方が後継者選びに「親族であること」を重視していました。それに対して、中規模企業の場合は「リーダーシップが優れていること」に重点をおいており、事業継続への価値観がそれぞれ小・中規模で異なるようです。小規模事業者さんは親族に事業を承継するケースが多いそうですが、理由としては、子供に自社の株を相続したいという考えや、外部に後継者を探す難しさ、会社への思い入れがあると考えられます。中規模事業者さんはリーダーシップや経営に関する意欲に重点をおいており、社員・従業員の多さから会社を引っ張っていけるような素質を後継者に求めていることが分かります。従業員数という観点からこのデータを見てみると、小規模事業は社長個人の裁量が多く融通が効きやすく、中規模事業よりもリーダーシップは重要ではないのかもしれませんね。
後継者を決定する際に重視すること(グラフ)
②後継者に不足している能力
小規模事業者 (n = 903)
1位:財務・会計の知識(39.8%)
2位:自社の事業・業界への精通(31.3%)
3位:営業力(30.2%)
中規模事業者 (n = 1624)
1位:財務・会計の知識(43.0%)
2位:リーダーシップ(30.2%)
3位:自社の事業・業界への精通(28.9%)
後継者に不足している能力において、「財務・会計の知識」と「自社の事業・業界への精通」が小・中規模事業者さん両方に高い事がわかります。どの事業者さんにとっても、財務・会計の知識は経営をしていく上で最も重要な能力と考えられており、業界への知識よりも重要視されているのですね。ただ、小・中規模事業者さんでの大きな違いは、リーダーシップと営業力となっています。小規模事業者では経営者自身の実務能力が高いことが求められ、中規模事業者では従業員の経営を方向づける素質がより重視されてることが分かります。
後継者に不足している能力(グラフ)
③小規模事業者の廃業理由
経営者引退後の事業継続について、「事業をやめたい」と回答した小規模事業者さんの理由を見てみると、後継者難に関連した項目が、半分以上を占めていることが分かります。後継者難の内訳を見ると、「息子・娘に継ぐ意思がない」ことや「息子・娘がいない」といった子どもへの事業承継が難しいことが約6割を占めていることから、親族以外も視野に入れて、後継者の確保に取り組む必要があると考えられます。ただ、事業に将来性がないと考えて廃業を選択する事業者さんも多いので、事業継続にはビジネス方針の転換なども必要かもしれません。
④親族に事業を引き継ぐ際の問題点
小規模事業者 (n = 561)
1位:経営者としての資質・能力の不足(58.5%)
2位:相続税・贈与税の負担(29.8%)
3位:経営における公私混同(25.5%)
中規模事業者 (n = 1010)
1位:経営者としての資質・能力の不足(60.7%)
2位:相続税・贈与税の負担(41.2%)
3位:経営における公私混同(23.7%)
親族に事業を引き継ぐ際の問題点としては、借入金 の個人保証や資産・負債の引継ぎに関することを挙げる企業が多いです。特に、中規模企業においては、借入金の個人保証の引継ぎと後継者による自社株式の買取りが大きな問題になり得ると考えられています。
親族に事業を引き継ぐ際の問題点(グラフ)
⑤親族以外に事業を引き継ぐ際の問題点
小規模事業者 (n = 122)
1位:借入金の個人保証の引継ぎが困難(30.3%)
2位:後継者による自社株式の買取が困難(30.3%)
3位:後継者による事業用資金の買取が困難(30.3%)
中規模事業者 (n = 375)
1位:借入金の個人保証の引継ぎが困難(40.5%)
2位:後継者による自社株式の買取が困難(40.0%)
3位:後継者による事業用資金の買取が困難(26.4%)
親族以外に事業 を引き継ぐ際に何らかの問題が起こり得ると回答する企業のうち、債務超過の企業の約6割は、個人保証 を引き継ぐことが困難であると考えています。しかし、それ以外の企業でも3割以上が純資産規模の大きさにかかわらず、個人保証の引継ぎが困難であると考えています。個人保証の引継ぎは、親族以外への事業承継 における課題として留意する必要があると思われます。
親族以外に事業を引き継ぐ際の問題点(グラフ)
最後に、地方事業者さんの課題では現在の事業自体が黒字なのにも関わらず、その企業の社長さんがご高齢であったり、後継者の不在によって廃業せざるを得ないケースが多々あるそうです。息子や娘さんなどの親族に事業を継がせたいと考えている事業者は多いそうですが、実際にはお子さんに事業継続の意思がなかったり、そもそも子供がいないことが廃業理由となっているそうです。これからは、大企業のM&Aや事業継承に限らず、個人経営の小規模事業から中規模事業で親族以外の後継候補を見つけられるかどうかが重要になってくるかもしれません。
引用元サイト:中小企業庁・中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H25/PDF/0DHakusyo_part2_chap1_web.pdf
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