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今さらにわかの映画レビュー「red(ワンピース)」(ネタバレあり)〜超前衛的尾田栄一郎

 ワンピース、3大脱落ポイントはデービーバックファイト、スリラーパーク、高二病だと思う。
自分はもちろん後者で、高2の冬くらいに発病した。
「ベルセルク」とか「寄生獣」とかを読んで、椎名林檎とかニルヴァーナを聞きながら嫌儲的青春時代を送っていたのだ。けれど社会人になって、いまだにワンピースを大好きな友達が、5回見に行ったと豪語してたので、冷やかし半分にアマゾンプライムで見ることにした。そして、いいじゃんと三回くらい言った。

1回目のいいじゃん!


 まず最初のいいところはなんといってもウタというキャラだ。最初のウタは一緒にずっとライブして楽しく過ごそうよ的なことを言う。あまりの馬鹿さに見ててるみんなは苦笑してしまうだろう。もしかしてこいつ、恐ろしく馬鹿じゃないか。
しかし、明かされる真の目的は仮想世界における肉体からの開放である。これはアニメ版「攻殻機動隊」のクゼの目的とほとんど同じである。硬派で哲学的と言われる攻殻機動隊のテーマと、今作のテーマは共通しているのである。さらに素晴らしいのは、この真の目的を知った観客達の反応である。並のエンタメ作品であったら基本的に観客の反応というのを単純化する。そうしたほうが話がわかりやすいからだ。
要するに現実クソ喰らえ派一辺倒にするか、現実に帰りたい組一辺倒にする。対してこの作品が出した答えは2つのグループの闘争である。これは、あまりにリアリティがあるし、攻殻機動隊のその先を描いてると言えるだろう。
さらに、いい点はルフィとの会話である。自分は全くワンピースを追っていなかったが、ルフィが海賊王になる理由が「新世界」を作ることだということが明かされる。社会派映画としても名高い「デスノート」の夜神月とルフィの目的はほぼ同じなのだ。
そして、ウタは最後に死ぬわけであるが、その後の「海賊王に俺はなる!」というセリフはとても重いものになっている。ウタの新世界を作りたかったという想いが熱く乗っかっているからだ。かなり激シブだ。いいじゃん!
 

2つ目のいいじゃん!


2つ目のいいじゃん!はアニメーション用に物語がチューンナップされてる点だ。ワンピース、ないしは基本的に漫画原作のアニメというのはギャグが寒い。
それは、「推しの子」レビューで書いたので、詳しく書くのは割愛するが、簡単に言うと漫画にありがちなギャグへのツッコミがアニメでやると寒さに変わる。漫画という文脈では機能するが、アニメにすると現実ではそんなツッコミはしないから不自然になるし、ギャグが滑った場合2回滑ることになるが、ウケたときツッコミでまたウケるということには基本ならないから意味がない。
今回ではボケに対するツッコミは殆どなかった。ワンピースの原作では基本的にツッコミが行われていたと思うのでこれは、わざと意識的にやってると思う。もう一つはミュージカルという作風を選んだことである。厳密にはUTAが歌うだけなのでミュージカルではないのかもしれないが、この作風は漫画ではできない味付けでありそんな責めたことは、尾田栄一郎に攻めの精神がないと出来ないだろう。人気があるのだから置いたような作品を作れば売れるのに、映像作品にしかできない表現で攻める精神性、いいじゃん!!

3つ目のいいじゃん!


エンディングに超人気キャラアイスバーグが出る。
いいじゃん!


☆3 原作読んでる人なら間違いなく楽しめる!


余談
レビューで自分だったらこう作る!みたいのは嫌いなのであくまで余談なのだが、シャンクスはウタに最後に一人にしたことを謝ってほしかった。
夕日の中で、二人でしんみり話して謝ったときにふと見ると死んでるみたいなの良くない?
 ルフィがシャンクスの立ち位置だったら絶対にウタを独りにしないだろうと思う。しかし、そう思わせることで逆説的にルフィの株が上がる物語の構成は素敵だと思った。

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