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万葉の歌と勤労感謝の日

 にほどりの葛飾早稲を饗(にへ)すとも
 そのかなしきを外に立てめやも 
 (万葉集 巻14―3386)

勤労感謝の日は、古代から天皇が今年の収穫物を神々に供えて感謝する「新嘗祭」という祭事に由来するものであるらしい。この秋の収穫を祝い、氏神に捧げることは、何も天皇家だけの行事ではなく、古代から民衆が行ってきた。

神社への新米の奉納は、税金のはじまりで、稲穂料にその名残りがあると言われることがあるが、元々そこには民衆の被支配の感覚は感じられない。自分たちの神様にお供えするというごく自然な行為だった。そもそも氏神は、共同体の人々の共通の祖先神だったのだから、当然といえる。

この万葉集の東歌は、初秋の実りの歌である。葛飾地方で採れた早稲を神様にお供えする神聖な祭りの日だった。
「だからと言って、愛しい人を外に立たせて置くなんてできないわ」
その日は神聖な日で、男女の交わりはタブーとされていたのだろう。古代日本は、妻問い婚(招婿婚)の時代だったので、外に立つのは愛しい女性の所に通ってきた男性である。収穫の喜びも、男女の恋の歌に変えて楽しむのが万葉人だった。

 


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