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崎陽軒のシウマイの醤油差し

食べ物の思い出は、食べて美味しかった思い出と食べられなかった思い出がある。食べられなかった思い出のひとつが崎陽軒のシウマイである。

幼なじみの家で遊んでいると、お父さんが帰ってきて、特急こだまに乗って横浜まで行ってきたぞと、証拠の切符を見せていた。新幹線のこだまではなく、在来線の特急こだまだから、ずいぶんと昔の話である。お土産に崎陽軒のシウマイを買ってきたと言う。幼なじみは、箱を開けて一口サイズのシウマイを食べていた。醤油差しが陶器製のひょうたん型だった。幼なじみは、この醤油差しをいくつも持っていて、見せてくれた。余程、横浜に用事があって、その度に崎陽軒のシウマイを買ってきてくれたのだろう。ただし、それが私の口に入った記憶がない。この可愛らしい醤油差しが印象的だったし、うらやましくもあった。

先日、横浜の方に行く用事があったので、駅前の崎陽軒の店で、シウマイを買って帰った。開けてみると、昔と変わらずの小粒のシウマイが15個入っていて、隣に陶器製の醤油差しが入っているのに驚かされた。てっきりプラ製の容器に変わっていると思い込んでいたので、陶器の容器が維持されていたことに感銘を受けた。形が少し四角くなっている気はしたが、とにかく感動である。

ただし、グリーンピースが乗ったシウマイは、2個だった。崎陽軒のシウマイの特色は、ホタテの旨味とグリーンピースだと思っていたが、緑色は飾りのようなものなので、味には関係ない。物価高の折、致し方ないだろう。
と思っていると、一緒に食べた妻が、「グリーンピースは埋め込まれているのかな」と言った。そうなのかも知れない。だが、すでに食べてしまって確かめようがない。

崎陽軒のシウマイは、大人になり何度か食べているはずなのだが、陶器製醤油差しはなかった。子どもの頃に食べられなかった思い出が蘇ったのは、この醤油差しのために違いない。

陶器製の醤油差しを見たのは、子ども頃以来であった。横浜で売っているシウマイには陶器製容器が入っているのか、東京で売られている物にも入っているのか、買ってみれば分かることなのだが、中々そこまでして確かめる気にはなれないでいる。

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