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母の短歌 戦時食のイメージ湧きしさつまいも

 戦時食のイメージ湧きしさつまいも
 老いの昼餉に快く食む

これまでにさつまいも程に実力とイメージに差があり、軽視されてきた食べ物はないだろう。高温でも乾燥地でも育ち、青木昆陽の時代から飢饉のときの非常食と考えられ、日本人の生命を救ってきた。デンプンやビタミンが豊富で栄養化の高い食べ物である。そういう役割からか、さつまいもにはマイナスのイメージがついてまわり、母の世代では、戦時食とされ、沖縄に出征した伯父からの昭和19年の便りでは、「自分は今毎日ゝいもを食べない日はありません」と書いてあった。母も終戦直後に兄嫁と共に木更津まで、リュックサックを背負い、さつまいもの買い出しに行ったそうで、さつまいもは、当時の日本人にとっては戦時食そのものだった。

母は、そのようなさつまいもを昼餉に食べながら、「戦時食のイメージ湧きし」と往時のことに思いを馳せた。そして、下の句の「快く食む」という表現に、今を安寧に暮らしている母の気持ちが感じられてホッとする。

今では、さつまいもは、和洋菓子に使われてすっかり戦時食・非常食のイメージを払しょくしたようで、むしろ高価な野菜と化しているのも、時代の変遷ということなのだろう。

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