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嗅覚に救われる

私は、香りのある空間が好きだ。
幼い頃から嗅覚に敏感だった私は、雨上がりがこんなにいい香りだということを、いつも知りながら下校していたし、菜の花はちょっぴり臭かった。

4年前、私は大学生になり一人暮らしをするようになってから、それはそれはリラックスする時間が少なくなってしまった。

特に、大学一年生は必修科目(※勉強しなければいけない必須の授業)が多く、朝の早い時間から人口密度がこれでもかというほど高い大部屋に鮨詰めになる。場合によっては空いた席の確保さえも難しく、前後左右知らない人に取り囲まれての授業だった。
机のスペースは狭く、前に座っている人の髪の毛が私の机に乗ることもしばしばあった。空きコマ(※時間割に授業を入れていない、90分の空いた時間)も少なく、科目によっては小テストや論文も出された。

更に、大学デビューに憧れた私は、木・金曜日に部活に入った…と言っても週二日というのは建前で、実際は土日どちらかが潰れることも多く、夜には先輩方に誘われるがまま打ち上げをした。
その全てを終えて帰宅をしたとしても、私は一人暮らしをしているので家事は全て私が担当。体力もどんどん削ぎ落とされていった。

あっという間に限界に達した私は、
授業を聞いても右から左へ話が抜けていき、
友人との会話も集中できずボーッとしてしまい、
部活がある日を忘れて帰宅したこともあった。
そんな私が精神疾患と診断され、病院に通うことになったのは、2016年の秋のことであった。

ただ、機械的にスーパーで自分の食料だけを買って帰る日々…そんな私が、ふと通販サイトで気になったものを見つけた。

アロマだ。

幼い頃から嗅覚に敏感だった私は、このいい香りが漂う世界で少しでも憂鬱な波から自分が剥がれ落ち、癒されることを願った。
アロマは、多少値段は高かったが、余分なものを買わずに食べるものだけを購入していた私には余裕があった。
私は、通販サイトでアロマを買った。

アロマにはいろんな香りがあり、毎日私を癒してくれた。
朝早くにゴミ出しをしなければいけない時、
学校に行くためだけにお化粧をするのが重苦しい時…アロマはいい香りを噴出しながら私を支えてくれた。
頭の中での自己嫌悪で眠れない夜中の3時、
アロマは優しい光を放って睡眠を促してくれた。

疾患の治療を始めて4年が経った今でも、私のデスクの上には暖色をふんわり放ちながら蒸気を出す、アロマがある。
今日のアロマの香りはレモン。幸せの香りが部屋を漂う。

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