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2022年読んだ・観た作品ベスト5

 金イクラを乱獲していたら、あっという間に年末になってしまいました。恐るべしクマさん。来年もよろしくお願いします。
 今年は激動の年と呼ばれますが、私もぎっくり腰やったり、盲腸痛めたり、コロナになったり、本厄そのものでした。みなさんはどうでしたか? 特に社会人2年目の同志たち、社会人生活に少し慣れましたか(ラブレターみたいな尋ね方だな)。
 さて、今年も私が読んだ・観た作品ベスト5を発表します。ベスト5以外にもたくさん作品を紹介するつもりなので、しばしお付き合いを。これを読んでみて、「この作品気になったな……」と思ってくれれば幸いです。
 それではいきましょう!

第5位『なんかいつかの魔法』 宮崎夏次系

 決して不自由ではないけど、心のどこかに引っかかりがあって、後ろめたさがあって、やっぱり肩身が狭くて。でもずっと抱えていることができなくて……。十篇の様々な物語が、優しく見守る視点で紡がれていると感じた作品でした。私が好きだったのは、妻に大好きなものを捨てられてしまった夫の話。妻を許せないけど、でも妻が悪いのではなくて、自分に嘘をついているのがよくなくて……と悩めるおじさんに、差し伸ばされる手、胸が温かくなった。
 十通りの物語が読者を温かく包んでくれることでしょう。


第4位『神の棘』 須賀しのぶ

 舞台はナチス政権が誕生したドイツ。愛する人を守るためナチスに傾倒していくアルベルトと、弱き者を救い裏切った友を赦そうと奔走するマティアス。友人同士である二人がやがて戦争に巻き込まれていく歴史物語。
 交わらない正義、友を救いたいと願うマティアスの儚い思い、容赦なくユダヤ人を追い詰めていくアルベルト。アルベルトが猟奇的な行動を迷わず遂行していく姿を見て、読者さえも理解できず混乱させられてしまう。一方でマティアスは正義を貫くことで文字通り犠牲になっていく仲間を見て悩み苦しむ。
 読了後の虚しさを言葉にするのは難しい。どうしてこんなことになってしまったのか。歴史に巻き込まれ、歴史に真正面から向き合った二人の男の物語をとくとご覧あれ。須賀しのぶの取材力は半端ない。


第3位『ブルックリン』

 1950年代、はるか遠くアイルランドからアメリカへやってきた少女の物語。様々な人と出会い、仕事と勉強をして、恋をして婚約して、成長していくが、故郷で最愛の家族が亡くなり、アイルランドに戻らなければならなくなる。帰省すると、今度は故郷の人々は少女に、留まることを促していく。人生を切り開いていった新天地アメリカか、生まれ育った故郷のアイルランドか。少女は選択を迫られる。
 個人的に成長物語にはとんでもなく弱い。それも現実と直面しながらも、自分の足で切り開いていく姿を見ると、もうそれは引き込まれる。しかも新天地か故郷か、どっちを選ぶのか分からなくなり、ドキドキした。主人公を演じるシアーシャ・ローナンの演技が良き。
 新しいことを始めようとしている人、ターニングポイントに迫られている人、新天地で悩める人に、送りたい作品です。

 

第2位『夜をゆく飛行機』 角田光代

 平凡な家族、空想の弟に話しかける平凡な主人公、平凡な町が、ゆっくりと変わっていってしまう物語。別の言葉にするなら、「旅立ち」とか「成長」なのだけど、それぞれが自分の未来を選択するがゆえに、ゆっくりと崩れていく家族の姿に哀愁を感じる。大型ショッピングセンターが町に進出して、平凡な家族が営む小さな酒屋の経営も追い込まれていく。
 町も家族も、そして主人公自身も徐々に変わっていく現実に、誰もなかなか受け止められない。理想ではなく、子どもが旅立っていくリアルな家族の描き方がすごくいい。読了後、どうしようもなかったけど、これで良かったんだとも思った。
 じんわりとくる、いい小説だった。

第1位『Mondays/このタイムループ上司に気づかせないと終わらない』

鳩です……!

 笑撃の一作。これはやられた。ダントツの1位だ。
 ある広告会社の社員たちは、同じ一週間を繰り返すタイムループから抜け出せなくなってしまう。最初はそのことさえも気がつかないのだが(ブラック業界)、徐々に違和感を覚え始め……やがてその原因が上司にあることを突き止める。
 永遠に繰り返す同じ一週間。どうすれば他の社員にタイムループしていることを気がつかせるか、果たして上司に何をすれば、タイムループから抜け出せるのか!?? 「同じ一週間」という全く変わらない状況をうまーーーーく活用し、笑いが止まらない。かと思えばちょっとほっこりさせる展開も用意されており、抜け目がない。また一筋縄ではいかない話の流れにも、あっぱれです!!
 じわじわと口コミで広がり、今もどこかで上映されているとか。ミニシアターで納めるにはとってももったいない。騙されたと思って見てほしい!! これが面白い物語だぞ!!

 
 以上、みっちーが2022年読んだ・観た作品ベスト5でした。
 が、もちろん、ランキング外にしちゃったけど、オススメしたい作品はあるわけで……。


ベスト5に入れるか迷った
『風と共に去りぬ』(映画)&『WANDA/ワンダ』


 不朽のエンタメ名作と忘れられたミニシアター名作。
 『風と共に去りぬ』は原作を読んだことあるからざっと見ればいいだろうと思っていたのもつかの間、とんでもなく面白くて、あっという間に五時間ぶっ通しで見てしまった。これがハリウッド全盛期の力なのか。スカーレット・オハラ、レット・バトラーの駆け引きがここまで美しく熱く表現されているとは思わなかった。ちなみに個人的には原作のラストの方が好き。最後タラ農場見せるのはもったいないなーと思った。
 『WANDA/ワンダ』は雑誌を読んでいたときに見つけた作品。忘れられた名作が日本初上映ということなので観に行ったが、これもレベルの高い作品だ。ミニシアターとしての完成度、つまり主人公の抱える葛藤とどうしようもできなかった現実、生きづらさをよく描けている。だがフィルムが一部消失するほど忘れられた作品だとか……。やっぱりアメリカでは『風と共に去りぬ』じゃないとだめってことなのか……。


番外編
『白光』 朝井まかて&『天幕のジャードゥーガル』 トマトスープ


 ベスト5には入れなかったけど、オススメしたい作品。
 『白光』の舞台は明治から昭和。主人公の山下りんは、自分のやりたいことを模索していくうちにイコンと出会う。魅力に引き込まれた山下はイコンを学ぶために本場ロシアに向かうが……。そして帰国後の山下は、恩師と共に行動するが、やがて日露戦争が始まってしまう。しぶとく生き、未開の地も切り開いていった女性の生き様を垣間見ました。
 『天幕のジャードゥーガル』は13世紀の元で魔女と呼ばれたファーティマの物語。知恵をテーマに、残酷な世の中をどのように生きていったのか、少女の物語に目が離せない。連載は続いているが実在のモデルがいるので、くれぐれもネタバレ防止のためググらないように……。
 どっちも歴史スペクタクルかーーーい!! 私の好みが完全に反映されてしまっている……。


面白かった物語リスト

 その他、面白かった物語をリストにして紹介します。

【小説】
・『童の神』今村翔吾
・『自転車泥棒』呉明益
・『閉店時間』有吉佐和子
・『ストーンサークルの殺人』M・W・クレイヴン

【映画】
・『インセプション』
・『チア・アップ!』
・『スパイの妻』
・『シン・ウルトラマン』
・『シング・ストリート 未来へのうた』
・『ダヴィンチ・コード』
・『映画大好きポンポさん』
・『すずめの戸締り』
・『英国王のスピーチ』
・『かぐや様は告らせたい ファーストキッスは終わらない』

【漫画】
・『シュナの旅』宮崎駿
・『マイ・ブロークンマリコ』平庫ワカ
・『宝石の国』(12巻) 市川春子

【アニメ】
・『メイドインアビス 烈日の黄金郷』
・『チェンソーマン』

【ドラマ】
・『岸部露伴は動かない』

【新書】
・『殺人犯はそこにいる』清水潔
・『南北朝時代 五胡十六国時代から隋統一まで』会田大輔
・『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』小泉悠

『宝石の国』はみっちー的殿堂入り作品のひとつなのですが、最新巻がとにかくよかったのでリスト入りしました。
『殺人犯はそこにいる』はいまだに解決していない事件で、数多くのミステリー小説・ドラマ・映画のモデルにもなっています。メディア批判を越えてやりきれない悔しさを感じるノンフィクション作品です。ミステリーは本格派ばかりですが、私は社会派の方が好きです(だから『ストーンサークルの殺人』を選ぶわけですが……)。

最後に

 長々と書いてきましたが、これにて2022年ベスト作品の紹介は以上です。今年は社会でも、プライベートでも大きな変化があった方が多かったのではないでしょうか。どんなに忙しくても、物語は人生の道しるべとなってくれます。最後に私が心に残った一言を紹介します。


『映画大好きポンポさん』より

 『生きることは選択の連続だ。ひとつを選択したら、それ以外を切らなければならない。(中略)
 ただ一つ、残ったものを手放さないために。諦めないために。切れ』

 (『映画大好きポンポさん』より)


 それではみなさん、よいお年を。
 来年も良い作品に出会えますように。

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