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写真旅のルート策定その1「天候」

写真旅をする場合、現地においては基本的に自由に行動しますが、出発前にはそれなりにルート策定となる準備を行います。
全く準備なしで行動するには、自由な時間を無駄にする覚悟が必要ですし、前知識は安全に行程を進めるための大切な要素でもあります。

まず必要なのは天候情報です。
現地における予想通過時刻の天候情報を掴みます。
特に重要なポイントがいくつかあります。

ひとつは雨天やゲリラ豪雨の可能性を予測すること。
私が使用しているオリンパスのカメラは、もう一つの双璧を成すペンタックスのカメラと同等に、全カメラでも最強レベルの防塵防滴性能を備えているため、カメラに関しては何の心配もありません。土砂降りの中でカメラを一切ガードすることもなく雨ざらしで一日中振り回すこともありますが、これまで一度たりとも問題は起きていません。
オリンパスを使用している大きな理由のひとつが、この圧倒的に信頼できる防塵防滴性能です。全天候性能の能力で、オリンパスとペンタックスに匹敵するメーカーは存在しないと認識しています。
他のメーカーは防塵防滴を謳っていても、コストダウンを優先させていることが多いように見受けられ、少なくとも私は信用していません。

では何故雨天やゲリラ豪雨に神経を使うのかというと、山間部を通過したり、林道を走ったり山へ入ったりすることが多いからです。
人里離れた山間部では、雨天ともなれば河川の水位が劇的に上昇したり、土砂崩れが頻繁に起こります。川の無いところに川ができたり、ルートそのものが水没する可能性もあります。直径1mくらいの岩が落ちてきたこともあります。
従って、はっきりと雨が予想される場合は、雨天当日と翌日くらいまで、こういったリスクの高いルートや行動を除外します。

いつも述べているように、現地での大気汚染、すなわちPM2.5の汚染状況は極めて重要です。
撮影に適しているのは汚染値が10μg/㎥以下です。5μg/㎥以下であれば、ぞっとするほど美しい風景を撮影することができます。どんな安っぽいレンズを使っても、十分に満足できる作品級の写真に仕上がることでしょう。
PM2.5の値が15μg/㎥を超えてくると、はっきりと影響が出始めます。遠景がもやもやしたり、晴れているはずなのに空が白っぽかったり、上層と下層に空が分かれて濁りが見えるようになります。
20μg/㎥を超え始めると、もはやどうにもこうにもならなくなってきます。わずか10m程度先の風景ですら、コントラストが低下してきます。
PM2.5は大気中に浮遊して光を拡散させます。
大気汚染のない曇り空の場合は、遥か上空の雲によって光が拡散された後、その後はレンズまでストレートに光が届くため、とても美しい曇りの風景を撮影できます。
しかし大気汚染がある場合は、レンズの直前まで汚染粒子が浮遊し、大気中を汚染粒子が満たすことによって際限なく光は拡散され、どんな高性能レンズを使って撮影しても「素晴らしい大気汚染の写真」しか撮れません。
風景写真で最も神経を使うのは、構図やカメラ設定や機材の性能や、そして風景そのものではなく、大気汚染です。ただそれだけです。

しかしこれほど重要な要素であるにも関わらず、プロ写真家が大気汚染について本気で語っているのを見たことがありません。
カメラ業界の謎のひとつです。
大気汚染が無い場合、どこへ向けてシャッターを切っても絵になります。
中国と韓国から越境してくる大気汚染の量が、風景写真において最も重要な要素となるため、事前に汚染予想を掴んでおく必要があります。

気温も調べておく必要があります。
一か所で決まりきった観光スポットの写真を撮るだけなら、それほど気にする必要はありませんが、移動しながら撮影を繰り返す撮影旅において、気温は重要です。
通過時刻の気温を把握することで、適した服装を選ぶことが可能になります。これは登山と同じです。
間違った服装を選んでしまうと、疲労に繋がることで道中の危険性が高まり、また撮影に対するモチベーションも低下します。
零度付近になれば道路は凍結するし、そこまで低下していなくても前日の雪が残っていたりするかも知れません。気温が低い場合は特に慎重にルートを選択します。
河川の周辺で夜間に冷え込んだ場合、翌朝は濃霧の危険性もあります。
濃霧が予想されるエリアでは、霧を避け少し高度を上げて移動するという選択肢も出てきます。
ただし移動高度の上昇は気温の低下を示します。
100m上昇すると0.6℃下がります。1000mでは6℃下がることになるので、そのあたりもルート策定時に考慮するポイントになります。

私たちの身の回りの世界には、晴れだけではなく、曇りや雨の世界もあります。風景写真と言えば雲一つないような晴ればかりを想定しがちですが、せっかく自然の神様が多種多様な風景を用意してくれているのですから、いろいろな写真を撮ってみましょう。
ただし、全てにおいて安全第一なので、ルート策定時には天候情報を把握することがとても大切です。

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