乾いた音とクマの夢。
「何もかも手遅れだ」
そんな風に感じた。
ようやく駆けつけて、森に足を踏み入れた時、
辺りには凄まじいと言いたくなるほどの
濃厚なクマの気配が充満している。
しかしそこにクマの姿は既に全く無く、
その気配とは、夥しい数の痕跡から発せられるものだった。
痕跡とは、森の風景に組み込まれた、生命力の余韻である。
クマの膂力……。それが発する強烈な気配は、
クマとの出会いに間に合わず、落胆し、沈んでしまった僕の心を、
強烈に撃った。
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