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長い夜

昨晩私は夜行バスに乗っていた。

夜行バスにはこれまでも
何度か乗ったことがある。
約10年ほど前の私は、
いや
最近まで私は特技を聞かれるとこう答えていた。

「いつでもどこでも寝れることです」

こう答えていたはずだ。
なのに何故…

とても長い夜だった。

PM21:15
東京からバスに乗り込みその日楽しく疲れていた私はすぐ眠りについた。

22:59
ふと目が覚めて、未読になっていたLINEを返す。
再度目を閉じ眠る。


そうなるはずの夜だった。

 ね、寝れない…
 て、ゆーかせまくない?
 ゆったり4列シートって書いてたけど
 うん、たしかにいつもよりゆったりな気した
 乗った時。

 でも、え?なんか最近の夜行バスって上から
 カバー掛けれるのあるんだね
 ベビーカーみたいな
 はじめで乗ったー寝顔隠れるしいーやーんって     
 思ったけど

 く、苦しい…
 あれ?あたし閉所恐怖症やっけ?
 息出来なくなりそー

降ろしていたカバーを上に上げる私。

はい、深呼吸。

すってーーーはいてーーー


 って、やっぱ苦しい
 てか暑い
 なんであたしタートルネック着てるの?
 その上からふわモテ白カーディガン❤️

 じゃ、ないんだよ!暑い!

狭い車内で体が攣りそーになりながら
モテを意識したカーディガンを脱ぐ私。

ふとスマホの時計をみると

23:10

 え?まだこんな時間?
 到着時刻は…

 7:10…
 しちじじゅっぷん!?
 あと8時間!?
 …よし、心を落ち着けよう

Bluetoothのイヤホンをつけ、YouTubeで動画を探す私。

 3分で寝落ち
 よし、これだ

11:15
スマホ画面を見る私。

 嘘つき!!3分で寝れるっていったじゃん!!
 嘘つき!!!

もう少しでYouTubeに報告しそうになる私。

 落ち着け、この動画が合わなかっただけよね
 寝ながら瞑想
 そう、大切なのは自分で心を整えることよね

瞑想を行ってくれる方の声に耳を傾け、精神統一を測ろうとする私。

「可能ならば寝る前に軽くストレッチをして始めてください」

その指示に従えないと考えた私は即座に別の動画を探す。

瞑想を探して迷走する私。
韻を踏む私。

その時。

バスは停車した。

0:05

 休憩だ!!!

窓際に座っていた私は隣の女性に声をかける。

「すいません。出ていいですか?」

熟睡していた女性は半分寝ぼけたような様子で
席を立つ。
ゆっくりおやすみのところ申し訳ないが、私も窒息しそうな状態なのでどーしても外に出たい。

外に出るやいなや、乗務員さんに質問を投げかける。

「あの、何分まで休憩ですか?次の休憩はいつですか?」

もう次の休憩の質問かとお思いかもしれないが、この苦しさの理由の一つに

見通しがたたないという要因が大きく絡んでいることに、私の本能が気付いていた。

この文章を書こうと思った理由だ。

私は今、子どもたちの苦しさを体験している!!
終わりがわからないことってこんなにしんどいんだ。

その為にこの夜があったのではないかというほどだ。これは仕事に活かすべきだ。

乗務員さんは、丁寧に教えてくれた。
約2時間半おきに20分の休憩があること。

見通しはだいたいたった。
次のスケジュールがわかれば
少し心の余裕が出来る。

サービスエリアで
元々飲みかけの水を持っているのに
もう一本水を買い、また申し訳なく思いながら、
寝ている隣の人を起こし窓際の席に戻る。

 てかほんとなんでタートルネック?
 これも苦しさの原因?

苦しすぎてタートルネックを折り込んで
中に入れるという奇行に走る私。

私はほぼ無意識で水を買っていたのだが、
次の行動をした後に自覚した。

頭よりも体が先に動いていた。
私の本能が知っていた。
体を冷やしたがっていることを。

冷たいペットボトルを顔や首に当てて少し落ち着いている自分に気付く。

心が乱れた時に落ち着ける行動や、アイテムを知っておくコーピングの方法を子どもたちと相談することがある。

それは感覚にうったえるものが多い。

そうか!それを体験する為にこの夜があるのか!

そう、耳からも落ち着ける感覚を取り入れよう。

でも私は元々知っている。言葉が伴う音楽は私を興奮させてしまうことを。

 そうか、瞑想は言葉が入ってくるから
 今はダメなんだ。
 多分今は感覚が敏感になっちゃってるから
 いつもなら寝れるアファメーションとかも
 だめ。

 インストとか自然の音系だな!

私の読みは当たった。皮膚に感じる冷たい感触と、インストと水の音
これは落ち着く…


さて時間をみると

01:20

え?まだそんな時間??


 無理しぬ

 ねぇ何で死ぬのが1番いや?
 焼死?溺死?
 あたし閉じ込められて死ぬのが1番嫌かもーー

 海の中で最期を迎えることを選んだ男の
 ある映画を思いだしながら

 あー私もいっそ海の中に投げて
 なんて危ない思想を描く始末。

多分そうなったら溺死が1番嫌と言うだろう私。

気持ちを持ち直しても、また忘れていた苦しみを意識してしまうと思考がネガティブに引きづられていく。

あの子もそうなのかな?
あの子はこうかな?
なんて、
今関わっている子どもとかのこと考えた。

 苦しい。
 この苦しみはいつ終わるの?

 楽しい時間はあっとゆうまで、苦しい時間は
 長く感じるなんて誰もが言うけど、苦しさの
 度合いはどうやって測れるの?


 同じ状況でも隣の人は爆睡しているのに。
(彼女一回も降りなかった。すごい)
 どうして人によって感じ方が違うの?
 感覚が違うの?
 時間は平等なのにどうして長く感じたり
 短く感じたりするの?

瞑想より迷走の私。

このまま3:00を迎える。

2回目の休憩。
また隣の人を起こすと、
「またいでもらっていいですか?」

ど、どうやって?
前のシートも深く倒れていて跨げる空間がない。
仕方なく立ってくれた彼女にこう提案する私。

「よかったら席をかえませんか?」

「そうですよね」

眠いだろうに怒ることもなく了承してくれる
彼女。1番申し訳なく思う。

降りるやいなやまた乗務員さんに声をかける私。

「あの、しんどすぎて…」

いい大人が第一声に言う言葉ではない。
私の脈略のない質問に丁寧に答えてくれる乗務員さん。

「ここはどこですか?」

「浜松です」

「浜松かぁ…あの、1番先の降車場はどこですか?」

「新大阪やね。新大阪で降りる?」

なんだったら浜松に友達がいるのでここで降りたいくらいの私だったが、

「それより前の停車はないんですか?」

次の休憩が滋賀以外の関西圏ならどーにかして
自力で帰ろうかと思うくらいだった。
本来大阪で降りるはずの私。

「新大阪が始めの降車場で、この後5:30くらいにもう一回休憩があるけど、草津やから」

草津だった。
草津…からは自信がない。

「新大阪でおりていーよ。吐きそう?
ビニールもっとく?」

今回3人の乗務員さんがいたが、私に対応してくれた1番ベテランの風格の方は、安心する接客をしてくれる方だった。

こちらから聞く前に時間と場所を提示し
見通しをたてて話してくださること

きちんとヒアリングして
現実的な策を提案してくださること

彼があとこれだけだから辛抱してください
というと、

何故か辛抱という言葉なのに思いやりを感じ、
終わりはくるんだという安心感があった。

2回目の休憩場でメントールinのアイマスクを買い、席を変わってくれた彼女の横の通路側に座った。

弱音を吐けたこと
終わりが近づいたこと
席を変わってもらったこと

メントールinのアイマスクで、目に爽快感のある感覚に意識が集中することで余計な思考が止まり

爽快感が少しずつ薄れてくる頃には自然と眠る事が出来た。

今回は何も聴かなかった。

学びの夜になった。
体感型研修だ。

今なら子どもの気持ちに本当に
共感してあげられる。

本気でコーピングアイテムを探してあげたい。

苦しさを吐き出すことがどれだけ楽になるか
私は元々しっているけど、教えてあげたい。

心の中だけで闘うと心が破裂しちゃうんだよ
助けてって言っていいんだよ

長い夜は終わった。

またこんな夜はどこかでくるかもしれないけど、
それでも何度も朝はくる。

終わらない夜はない。
おつかれさま昨日の私。

よくがんばったね。

いつでもどこでも寝れなくなったので
新たな特技を考えようと思います。

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