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離婚も案外悪くない

執筆者:かむな

2016年2月、夫は突然、単身赴任中の不倫をわたしに告白しました。

全く予想していなかった話の展開。私たち夫婦の話なんですよね…整理できない感情を後回しにして、わたしの頭はめまぐるしく回転しました。

まさかわたしが離婚?慰謝料っていくら?経済的にやっていける?子どもたちはどうなる?

父親の不貞を子どもたちに知られてはいけないと、最初は何もなかったように装っていましたが、1か月もたつと頭の中はフリーズ。胸に石が乗ったように重く、押しつぶされ起き上がれなくなりました。

もう限界。3月のある夜、20歳の長男に声を震わせ泣きながら伝えました。長男は動揺もせず冷静にわたしの話を聞き、これから何をしないといけないか淡々と話し始めました。

「もっと早く言って欲しかった。これは僕の問題でもあるから。」

すべてを話せたら涙が止まらなくなりました。夜は怖さと不安に包まれ、一人で寝られなくなりました。

長男は寝ているわたしの手をぎゅっと握ってくれました。

自分の価値観で生きる

この離婚劇のさらに5年前、当時長男は中学3年生で不登校でした。

朝、登校を嫌がっている長男の布団をめくり、ヒステリックな声で「学校に行きなさい!」とたたき起こし、玄関で立ちすくむ姿にため息を浴びせ、むりやり追い出したりもしました。日に日に顔面蒼白、食事もとれない、死んだように眠っている長男を見て、もう生きているだけでいい、健康になってくれればそれでいいと思えるようになりました。

長男は、普通の生活が一番で平凡が大好きなわたしの前に現れた理解不能生物でした。
「どうして学校に行かないといけないの?」
「中学を卒業し高校に行くのはあたりまえでしょ」
「あたりまえってなに?」
「・・・」
長男とは高校の進路が決まるまでの8か月間、幾日も幾晩も、泣いて怒って話をしました。ドロップアウトした自分は一生ニートでいい!と、しょんぼりした顔で言ってみたり、こんな自分が将来ちゃんと働いていけるのかと布団にくるまり泣いたり、8歳下の小学生の弟にうるさい!とプラモデル用のナイフを見せつけたこともありました。

わたしは長男の思いを聴き、背中をさすることしかできませんでした。

中学はスクールカーストがあって気の休まらない場所であること、だから行きたくないということ。将来はweb系の仕事をやって稼ぎたいこと。

そして、ママが大事に思っている「普通のレールに乗ること」と、僕が大事にしていることは違うということ…

もがき苦しむ長男が身をもって教えてくれたことがありました。

親子であっても個々の人間。それぞれの価値観をそれぞれが大事にすればいい。

普通なんて形のないもの。
自分はどうしたい?それは本当に楽しい?

離婚を決心できたのは長男の一言のおかげ

話は戻り、2016年2月。

次男のことを考えると、小学生でパパがいなくなるということが一生の傷になるのではと不安で、離婚を決心できずにいました。わたしが我慢して仮面夫婦をやればいいのか、近くで別居すれば子どもたちも寂しくないかなど、できる限り今の生活を崩さない方法を考えていました。

本音では、4人家族という普通の家族の形を壊すのが怖かったし、これから自分がシングルマザーというマイノリティになるのかという思いもありました。

迷っている日が続きましたが、長男の一言が離婚を決心させてくれました。

「ママが毎日笑って暮らせていることが、子どもにとっては一番うれしいから」

あれから5年経った今、普通であることやマジョリティであり続けることにはこだわりなく、「わたしが楽しいと思える今を過ごせばいい、今のわたしを受け入れてくれる人に囲まれて暮らしたい」と思って過ごしています。

案外悪くない。むしろ気に入っている。

一緒に乗り越えてくれた子どもたち、いろいろ教えてくれて、守ってくれてありがとう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。このエッセイは、NPO法人シングルマザーズシスターフッドのMother's Dayキャンペーンのために、シングルマザーのかむなさんが執筆しました。
このキャンペーンでは、ひとりとして同じ人はいない、個性あふれるシングルマザーたちのかけがえのない素顔を祝福し「自分を大切にすること」「セルフケアの大切さ」を呼びかけています。「こういう支援て大事よね」と応援してくださる方にはぜひ、ご寄付をお願いしております。ぜひ、Mother's Dayキャンペーン応援ページもご覧ください。

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