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今の私たちが最高

執筆者:みみ

「うちが一番居心地がいい」

ある夜、娘がリビングでぼんやりテレビを眺めながらこう言った。小学6年生の終わり頃から中学2年生まで家出を繰り返してきた娘。その娘が放った言葉である。

この言葉を聞いた瞬間私は、なんだか懐かしいような、ホッとしたような、私こそ居心地のいい久しぶりの安心感に出逢えた気がした。

「数年前までは毎日こんな気持ちで過ごしていたんだよなぁ、お互いに。」とも思った。

離婚して決意したこと

私がシングルマザーになったのは、娘が小学2年生の時。元パートナーと長い時間の話し合いを経て離婚に至った。私にとって離婚時の元パートナーの家族の言動がとてつもなくきつく、辛い終わり方だった。

幼い娘には何も伝えることができずにいたけれど、離婚して半年過ぎた頃、意を決して娘に報告をした。大粒の涙を流して泣きじゃくる娘に「本当にごめんね。なんて残酷なことをしたのだろう。もうこの子を悲しませてはならない。本当に笑顔で楽しく生きていこう。」と強く思った。

寂しさや大きな変化を感じさせないように、それまでと同じ小学校に通う等、環境を変えなかった。娘の成長に合わせ、その都度ワークライフバランスを見直した。2人の生活はとても楽しいものだった。娘の笑顔を見て幸せだと思った。

長いトンネル

小学校卒業の直前から、娘の言動に大きな変化が目立つようになった。私に対し嘘をつき、約束やルールを破る。習い事をさぼったり先生に反発したりして、その報告を受けることも増えた。そして、家出をするようにもなった。娘の家出先は、元パートナーの実家。つまり、娘の祖父母の家。離婚後の私が一切関わってこられなかった場所。

ある春先の週末また娘が姿を消した。

買い物中機嫌を損ね、そのまま祖父母の家に行ってしまった。私も元パートナーもその家族も全員で説得したが娘は小学生最後の日々、卒業式当日も、春休み中も家に帰ってこなかった。

悔しさも怒りも虚しさも、あらゆる感情が混在したまま私は仕事と中学校入学の準備をおこないながら日々をこなしたことを記憶している。

娘の最後のランドセル姿を見たのはいつだったのかも、思い出せない。

そんな現実が信じられなかった。

中学校にあがってからの娘は、不登校になり心身共にバランスを崩した。生活リズムが乱れ昼夜逆転、私には更に激しく反発するようになった。本人が一番辛いのだから、責めたり焦らせないよう見守らなくては、と自分に言い聞かせながらも実際ストレスフルな毎日で、娘と衝突することが増えていった。突発的な行動が頻発し、私が帰宅したら家から居なくなっていたりもした。

捜索願いを出したこともある。

家出先の祖父母から、苦情の連絡も増えた。預かったのだからと多額な生活費を請求されたり、元パートナーから養育費を減らされたりもした。

まさに負のスパイラルが加速した。

娘が突然飛び出しては数日後帰ってくる…を繰り返すうちに、私は娘に優しい気持ちで迎え入れたり接することができなくなっていた。事が起きる度に責められる私は、娘に対して負の感情が増幅していくばかり。

一体何が起きているの? 
色々ありすぎて訳がわからない。

学校も生活リズムも仕事も大切だけれど、もうひとりでは抜け出せない。
それまでは、必要でない限りシングルマザーであることを公表しない自分がいた。知っているのは親しい間柄の友人、仕事関係者、家族だけ。幼かった娘は他の家庭とは違うことを気にしていたし、公表してもしなくても変わらないことの方が多かったから。あとは、当時は無意識に隠したいと思っていたのかもしれない。

でも、もう家庭状況も私たちの日常もすべて変わってしまったのだ。

私も変わらなくては。

先の見えない長いトンネルにいながらも、先は全く見えなくても前に進まなくては、と思った。

やっと気付けた大切なこと

・人とつながること

まず、心配をかけたくないと思っていた遠方の両親に助けを求めた。何度も来てくれた。友人にも、それまで以上に辛い気持ちや悩みを打ち明けるようになった。前から気にかけていた娘の発達検査、相談や支援の行政サービスを利用し学校の先生方や医療関連との関わりを積極的に続けた。

自分から動き、助けを求めて人に話した分、たくさんの人々とつながり必ず私たちに必要なものが返ってきた。

温かくて頼もしい言葉やアドバイス、知らなかった情報や活動、社会のしくみ等を知りすべてが私たちの心と関係性を支えてくれるものだった。必要なサポートを利用しながら、時間もエネルギーも要したけれど娘は少しずつ朝起きられるようになり、少しずつ登校できるようにもなった。飛び出しや家出も次第になくなった。

・オンラインでも人とつながること

ある団体を通じて知った、シングルマザーのセルフケア講座に参加したことも、今の自分だからこそ魅かれるものがあり、みんなと繋がりたいと感じたからだった。年齢も背景も様々なシングルマザーたちがオンラインで、自身の体と心を労わり対話し自分のことを語る時空間。体だけではなく心も緩み全身にエネルギーが巡ってくる。

シングルマザーってパワフル、すべてがこれで良かったと実感する。そんな体験ができるかけがえのない素敵な講座は、シングルマザーの生きる原動力。

・シングルマザーである私に価値がある

もちろん、今もこれからもまだまだ不安定なこと、心折れそうなことが起こるかもしれない。でも、私たちの経験したことは宝物だと心から思っている。

娘との出来事から、シングルマザーとしての私が気付くべき大切なこと、ここは変わった方がいいよ、というメッセージをもらい学ぶことができた。

今の私は、シングルマザーだからこその自信と楽しさ、誇り、充足感に満ちあふれている気がする。7年目にして価値があるのだと思えるようになった。
シングルマザーである自分が大切だし、大好き。

大きな壁と苦悩に直面しもがきながら私に訴え続けた娘も、大好き。

今の私たちは、最高で最強である。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。このエッセイは、NPO法人シングルマザーズシスターフッドのMother's Dayキャンペーンのために、シングルマザーのみみさんが執筆しました。
このキャンペーンでは、ひとりとして同じ人はいない、個性あふれるシングルマザーたちのかけがえのない素顔を祝福し「自分を大切にすること」「セルフケアの大切さ」を呼びかけています。「こういう支援て大事よね」と応援してくださる方にはぜひ、ご寄付をお願いしております。ぜひ、Mother's Dayキャンペーン応援ページもご覧ください。

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