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『ひとり親けんこう白書』第2章コラム 心とからだのつながり〜トラウマとセルフケア〜

心とからだのつながり〜トラウマとセルフケア〜

心と体は密接に繋がっており、互いに影響を与え合っています。ひとり親になる過程で体験したことが、心身に大きなトラウマを残すこともあり、回復には心と体の両方のケアが必要です。時には専門家の力も借りながら、自分を取り戻していくにはどうすればいいでしょうか。

『ひとり親けんこう白書』p22

心身の不調の背景にあるもの

第1章ではシングルマザーの心身の不調が明らかになりました。背景にあるのは、子育てを一人で担う重責だけでなく、離別による自信喪失、DVの後遺症、元配偶者からの嫌がらせ、周囲からの差別・偏見といった出来事です。こうした経験はトラウマとして心と体に深く残ることがあります。

トラウマの影響

アメリカの精神科医ジュディス・ルイス・ハーマン氏は、このようなトラウマ経験を抱えた人の身体は落ち着きを失い、心地よい精神状態を保つことが難しくなることを指摘しています。

トラウマ体験は脳に影響を与え、様々な症状を引き起こします。フラッシュバックや悪夢といった症状、イライラや不眠、動悸、筋肉の震え、頭痛、腹痛、寒気、吐き気、痙攣、めまい、発汗、呼吸困難などのあらゆる症状が現れます。ほかにも、トラウマを受けた状況を過剰に避けたり、感情や表情が乏しくなるなどの麻痺症状、体験の記憶がなくなるというといったさまざまな症状が起きます。こうした症状は、トラウマ体験の直後に起きる場合もあれば、安全な場に身を置いてから症状が出る場合もあります。

心身両方からのケアの必要性

ハーマン氏は心身の回復のためには、自分の身体を、自分でコントロールできるという感覚を獲得することが必要だと述べています。さまざまな困難を抱えるシングルマザーこそ、体と心の両方から、適切なケアに取り組む必要があるということが示唆されています。

トラウマ治療

トラウマに関する治療は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を和らげるための対症療法と、PTSDそのものの治療に分けられます。例えば、不眠、悪夢、強い不安感、うつ状態などの症状の改善には、抗うつ薬や抗不安薬、 気分安定薬などが使われます。 PTSD そのものの治療としては、精神療法(心理療法)が一般的です。トラウマに焦点をあてた認知行動療法の中でも、持続エクスポージャー法(prolonged exposure:PE )は、 治療者のサポートのもと、トラウマとなった場面をあえてイメージしたり、避けていた記憶をわざと呼び起こしたりして恐怖を乗り越えるというものです。「思い出しても危険がない」「怖いことはない」と感じられるようになるための訓練を行うもので、PTSDそのもに対して効果があるとされています。

土台となるセルフケアの必要性

上記のような治療は短期間の通院で終わることはなく、年単位で定期的な通院が必要です。これらの困難を克服するために治療に臨む際には、仕事や子どものケアに関する調整と、つらかった過去と向き合う自分自身のセルフマネジメントが必要です。

あるシングルマザーはセルフケア講座に参加して2年後に、ようやくトラウマ治療を始めることができました。「トラウマ治療に踏み切れたのも、セルフケア講座で治療に立ち向かうための体力と仲間を得たからだと思います。それが整っていなければ、仕事をやりくりしながら定期的に通院したり、過去のことを思い出すのは大変なことでした」と述べています。

治療を始めて、それを継続するにあたっても、日常の中でセルフケアを実践して心身を整えるということは、それを支える土台となる大切な習慣であることがわかります。

以上「心とからだのつながり〜トラウマとセルフケア〜」をご紹介しました。次回は、シングルマザーがセルフケアをテーマに執筆したコラム「セルフケアとわたし」をご紹介します。

https://www.singlemomssisterhood.org/singlemoms-health
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2023年9月27日(水)12:00-13:00
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