詩:MISSING
746文字
5項
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1
夕日がしずんでゆく
喉元につっかえたことばや
秘匿したこころをつれて
今日も夕日は海のそこに
その姿を上手に隠す
なにもなかったかのように
視界をあいまいにぼやかして
水のように滲んで見えるのは
きっと涙のせいだけではない
2
いつもどおりの帰り道に
街の明かりはチカチカと灯る
次第に辺りは照らされはじめ
朝と夜の世界に変わりはなくなった
クッキリ照らされた私の足元から
色濃く伸びる憂鬱と孤独と寂しさを
誰かに見透かされてるような気がして
消えてしまいたい焦燥に駆られ
夜を急いで「わたし」を紛れさせた
3
午前零時の深い闇の中にぼくは
希死念慮の濁流に押し流されて
僕自身のことがわからなくなる
言葉の海に黒々と溺れ
流されたなにかしらをさがして
気づけば海のそこをさまよってる
消息を絶ちたくなる潮に逆らい
藻掻いて顔を海面に出して
飲み込んだ言葉を吐き綴る
そしてぽつりただ一言
「おやすみ」と誰にともなく眠りにつく
4
月は既にしずんだあとで
未だ濃く色を塗りつぶす街並みは
端から白なりはじめた空を
ほんのりと縁取る額のように見える
霧に包まれた世界には自分しかいなくて
淡々とその中を歩く自分は
失せ物があつまる場所に紛れ込んだ
その瞬間だけ自分はきっと
この世界から行方不明
5
今日も朝がきた
隠せない昨日を引き連れて
いつもどおりの白々しい顔をして
すべてを日の下にさらけだす
なにも変わらない朝がきた
宇宙の生誕から恒久的に続く
繰り返される一日に
明けない夜はないんだと
その安心感に安堵して
その無情さに絶望して
遥か東の空から太陽が放つ朝焼けが
ピンぼけな輪郭を際立たせた
今日も朝がきた
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