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⑥EPATH’s 2nd Summer School 合併症を減らすために、造腟術前に行う3つの対策とは?

EPATH’s 2nd Summer School
Surgical aspects in transgender health
形成外科医 Karel Claes 先生の授業

症例写真が多く、スライド撮影NGだったのでメモでシェアします。

造腟術後の合併症は70%とも言われており、合併症をできるだけ減らすために術前にできることをお話されていたので、共有したいと思います。

  1. 半年以上の禁煙 *電子タバコも含める

  2. BMIは18以上30未満 *やせすぎも、太りすぎもよくない、とのこと。

  3. VIO脱毛 *ただし、外陰部形成術のみであれば必要なし


1.禁煙について

手術前は1か月間、女性ホルモン(エストロゲン)療法を中止します。
エストロゲン療法は、血栓リスク(血栓症ができる度合い)を高めるため、血栓予防のために中止する必要があるのです。

さて、血栓症とは何でしょうか。
手術中・後に、長時間寝たままになった場合、足の血の流れが滞ります。
足の血流低下→足に血栓ができる→血栓が肺に飛ぶ→肺の血管が詰まる→呼吸ができなくなる→深刻な場合には、死に至ることもある。

エコノミークラス症候群も、同じ病態の結果起きる病気です。
以前記事を書いていましたので、参考にしてください。

【参考文献】

https://www.joa.or.jp/public/publication/pdf/joa_033.pdf

エストロゲンと同様に、
喫煙も血栓ができやすくなるため、手術前の禁煙は非常に重要なのです。

そして喫煙によって、傷の治りが遅くなったり、感染したり、
全身麻酔に伴う合併症リスクがあがります。

*造腟術後の傷の治りをよくするためにも、禁煙は必須になります。

【喫煙が全身麻酔リスクを上げる】

喫煙習慣のある患者さんでは、全身麻酔・手術にともなう合併症や死亡の危険性が高くなることが知られています。

たばこの煙に含まれるさまざまな成分が、気道(息の通り道)や肺の正常機能を弱めるため、全身麻酔に伴う合併症が増える可能性があります。
他にも手術後にキズが感染したり、治りが遅くなったり、心臓や血管の合併症がおきやすくなります。

日本麻酔科学会webサイト参照


2. BMIについて
*適正体重で、手術をうけることをおすすめします。やせすぎも、過体重もリスクになります。

【リスク】
・血栓症のリスクがあがる。
・気道確保が難しく、呼吸器関連の合併症がおきやすい
・褥瘡(床ずれ)が生じやすい。


3.VIO 脱毛について
造腟術前にVIO脱毛(外陰部)をすることをおすすめします。
造腟した腟の中に毛が生えた場合、手術後に腟内の脱毛はできません。

脱毛をせずに造腟術を行った方で、術後に腟内から毛が生えてきて
細菌性腟炎になったり、感染によっておりものの異常をきたすことがあります。
ただし、外陰部形成術のみ(造腟なし)の場合には、VIO脱毛は必須ではないと言われています。

※白毛がある場合は、ニードル脱毛をおすすめします。
LUNAクリニックにはニードル脱毛がないため、白毛の方は、他院をご紹介してちます。


最後に。
最近では、造腟術前からの骨盤底リハビリテーションが推奨されています。

骨盤底筋トレーニング専門の理学療法士さんとともに、手術前から骨盤底筋群を鍛えたり・ストレッチをする時間があると、なお良いかと思います。
検討してみてください。


【参考文献】
Karel Claes先生の論文
造腟術の原則と結果について


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