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【解説】ネビド/セルノスは半年に1回注射ではない。

今日、伝えたいことは
「長期作用型テストステロン注射(ネビド/セルノス/リアンドロン)の適正量を投与していますか?」という話です。
そして、
「ネビドは半年に1回の薬ではない!」ということです。


まずはじめに。
今までの振り返りの記事より。


◆長期作用型テストステロンについて
オーストラリアでは約7割以上が長期作用型テストステロン製剤(リアンドロン)を使用している
と報告されています。
副作用についても説明しました。


◆テストステロン製剤の種類と良い血中濃度について
テストステロン製剤は、定期的な血液検査を行い血中濃度をみながら投与量・間隔をきめていく必要があります。
※当院はテストステロン(男性ホルモン)の在庫不足はありません。



本題に入ります。
当院初診時、ホルモン療法投与前には必ず血液検査を行っています。


どんな薬も副作用があります。
安全に薬を使用するためにも、患者さんの健康状態を確認の上、薬を処方しています。


そこで驚いたことがあります。
すでのホルモン療法中のAFABトランスジェンダー(FTM/トランスジェンダー男性)のテストステロン値が低すぎる/高すぎる!!!!

いらすとやより抜粋

すでにホルモン療法中の方は、
初診時に、次回のホルモン注射の時期に合わせて受診されることが多いのですが、テストステロンを適正に投与中の患者さんは約2割だったのです。



【患者さんたちの声👇】

今までは、ネビドを半年に1回投与していました。

患者さんの声より

今まで短期型のエナルモンだったけど、在庫切れのようで。
新しく半年に1回の薬に変更希望のため受診しました。

患者さんの声より

日本人は体が小さいから、ネビドは半年に1回で良いと言われました。

患者さんの声より

今から留学するので、半年に1回打つ注射を希望しています。

患者さんの声より

血液検査はしたことがないです。

患者さんの声より



ネビドの製薬会社、バイエルの解説です。

https://library.bioscientifica.com/media/5zrkmy2e/pi-emd116-nebido-injection-guide-for-gp.pdf

添付文書 上記PDFから抜粋いたしました。

基本的には10-14週に1回投与。と記載があります。
*定期的にテストステロン値の血中濃度を測定しながら、投与間隔を決めること。

【ネビドの推奨投与スケジュール】

https://library.bioscientifica.com/media/5zrkmy2e/pi-emd116-nebido-injection-guide-for-gp.pdf

初回投与後、2回目は6週間後に投与になります。
基本的には12週に1回投与と書いてありますね。

*ネビド/セルノス/リアンドロンは、体内でのテストステロン濃度が安定するまでに時間がかかるため、2回目は早めに投与することが必要です。


長期作用型の注射であるネビド/セルノス/リアンドロンは、
短期作用型と比較して、テストステロン値の急上昇・急降下がないので
体内でホルモン値が安定するためよい薬ですが、安定するまでに時間がかかります。



今までエナルモン注射をしていたのですが、明日から海外行くので半年もつ注射(ネビド)を投与したいです。
ネビドは初めて使用します。

患者さんの声より

☝初回ネビド後、2回目の投与は6週間後がベストであることを説明しています。



メルボルン大学Ada Cheungj先生からいただいた資料です。
これはリアンドロン(オーストラリアでよく使用されているネビドと同じ成分の薬)の患者さんむけ資料です。

Ada先生より

投与間隔について
ネビドの薬品情報の書類を同じ内容の記載があります。


ネビド/セルノス/リアンドロンが半年に1回って、
どこからやってきたのか……?

いらすとやより抜粋


最後に。
先日のWPATHで、アジア圏(インド、フィリピン、タイ、台湾など)の内分泌学(ホルモン専門)の先生と話していたのですが。
日本の"半年に1回投与のネビド"について話をしていたときのこと。

なんで日本では、ネビドが半年に1回といわれているの?
日本人はテストステロンの代謝が遅いの?
日本人の定義はなに?
どういう人が半年に1回ネビド投与なの?

日本以外のアジア圏では、
他の国と同様に12週に1回ネビドを投与しているけれど、
日本人だけがネビド半年に1回でネビドOKだったら、世界的な発見だね!

☝と何名かから言われ、質問攻めにあうという。



テストステロン値の血中濃度をきちんと測定した結果
ネビドが半年に1回になった。であればよいと思っています。
しかしそれは全員には当てはまりません。


ひとりひとり、体内のホルモン動態は異なります。
安全に、適正・適用量のテストステロン製剤を使用することが重要です。

当院は、総テストステロン(遊離テストステロンではない)が4ng/mlを下回らないように、ネビド/セルノス/リアンドロンを調整しています。

※遊離テストステロン(フリーテストステロン)ではなく、
総テストステロンを測定してください。


ジェンダー外来では、
ひとりひとり診療時間を十分とってお話しています。
根本には、患者さんに健康でいてほしい、ひとりひとりを大切にしたいという想いがあります。


トランスジェンダー医療は、日々進化しています。
そのため日々、知識をブラッシュアップすべく論文で勉強はしていますが
日本で勉強できないことも多々あります。

日本で勉強できないことは、
世界中の先生方が色んなことを教えてくださいます。

WPATHで出会った、アジア圏の先生方。
プライマリ・ケアや内分泌学の先生とは、トランスジェンダーのホルモン療法(テストステロンやエストロゲン)の話で盛り上がりました。

WPATHにてアジア圏の先生方とディスカッション


ホルモン療法で困った時
いつも質問に答えてくださるオーストラリアのメルボルン大学 Ada先生

メルボルン大学准教授 Ada先生と

Ada先生のprofile☝


シス・トランス関係なく、
ホルモンが安定していることは大変重要です。

これからも皆さんがよりよく生活できるよう
情報発信を続けたいと思います。

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