詩『神代の言い伝え』
題名
『神代の言い伝え』
(隠しテーマ・流れ星に願いを)
遥かな大昔、古代の若き島々の国を治めた予言者がいた。
偉大なる予言者はこう言った。
桜と名付けられた花がぜんぶ散った最初の新月の南の空に、いつか赤く輝く大きな光の流れ星が現れる。その夜の明ける頃に首の後ろに赤黒いまるで星のようなアザを刻印されて、その娘はこの世界に生まれて来るだろう。
その者は戦争や醜い争いで明け暮れる人類を救い、世界を平和へと導くでしょう。
私の村に伝わる神代の時代からの言い伝え。
あまりに古すぎて、実はだれも信じていなかった言い伝え。
「じいちゃん、それでなんなの?」
孫はその予言通りに生まれた。
首に星の赤黒いアザもある。
だから村では大騒ぎになった。
お告げが本当になったと言ってな。
しかし、産まれた直後の大騒ぎは、へその緒を切る時に静まりかえった。人々の肩が大きくガクンと落ち込んでしまった。落胆のため息を漏らした。
そうだ、孫の股間には不要な物があったのだ。
男の子だったのである。
村人は戸惑っていた。
村人の中には、不要な物は切ればいいとまで言い出す始末。
結局、期待されなかった、ガッカリとされた赤ちゃんの孫は、お陰ですくすくと気楽に暮らしてきたようじゃ。かなり気楽過ぎて、わがままでお転婆になってしまったがな。
「で、じいちゃん、成人のお祝いって私はまだ12だよ」
古代は干支がひとまわりしたら成人と言われていたらしい。
そして、言い伝えには、続きがあったんじゃ。秘密にされていた極僅かしか知らない真実の言い伝えじゃ。
人類の救世主の赤ちゃんは、その絶大な能力のせいで命を狙われるだろう。だから神はあえて男の子の姿で産ますだろう。
しかし、心は女だから、そばにいる者はすぐに気づくだろう。
必ず秘密にして守ってあげなさい。
そう伝えられていたんじゃ。
「えっ? たしかに私は心は女だけど。えーっ? だったら私は人類の救世主なわけ?」
「やめてくれー」
「私は体が男で心は女で、他人とは違うと悩んだ昔もあったけど、悩みの方向が迷子になるじゃんかよぉー」
「とりあえず…、あっ、流れ星!」
「普通の女の子にしてください」
孫は、流れ星に願いを。
そうじゃな、願いを必死に祈っておったな。
「じいちゃん、私は流れ星に願いを言うことくらいしか出来ないんだよ、本当に馬鹿でのろまで何にも出来ないんだよ、知ってるでしょ?」
わかっとるわい。
「私の今までの記憶を忘れちゃって、これから凄い成長を見せるとか、期待してない?」
そんなことはないが、期待はしているが、不安の方が大きいのは本当ではあるな。
孫よ、ごめんな。
「えー、あやまるって、やっぱり不安になってきてるの?」
うなづく。
「期待をもう、やめたんかーい!」
「この正直者のじいさんよーい!」
孫に優しく頭を叩かれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
話の続きは私が引き受けましょう。
私は百年後の未来から来た彼女の後継者です。
すべてを見届けた者です。
たしかにこの少女?は、95才になった頃に、世界を本当に平和へと導くのです。
ずっと愚か?で惨め?な人生でしたが、彼女は「言葉」だけで人類の歴史を変えるのです。
すべての宗教も導くのは神ではなく「言葉」なのです。
83年後が楽しみかもしれませんが、ほとんどの人が死んでいることでしょう。
ん?
私の背中に隠れてカップラーメンを食べないで下さい。
我が救世主さま。
きぃ~って睨まない。
救世主さま。
おじいさんも、私も、本当に苦労しました。破天荒なので。
あっ、
逃げなーーーい!!!
止まりなさーーーい!!!
やれやれ、救世主さま。
本当に大変でした。笑
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