詩『死刑囚』

題名
『死刑囚』
(隠しテーマ・生きる意味)


刑務所で
私は名前を呼ばれない
称呼番号だけだ
まぁ、名前を言わされる場合もある
ほかの囚人は
称呼番号と名前をさん付けで呼ばれ
あるいは名前だけも多い

ただ、死刑囚にだけは
絶対に名前を呼んだりしない

通常は一桁から四桁までの番号
594(獄死)は使わない

私は殺人の死刑囚だ
死刑執行は当日の朝に告げられる
だから昼がとても愛しくなった

前日だと昔は深夜に自殺したらしい
どうせ死ぬのに急ぐらしい
殺されるのは怖いらしい

死刑囚にも逃げ道はある
再審請求をすることだ
それからこれは秘策なのだが
記憶喪失になれば執行はできない

死だけを待つ日々
生きる意味も感じない

弁護士さんは笑って
被害者に謝り反省をしなさいと言った
しないことを知ってるくせに

時間だけはたっぷりあるので
読書が趣味になった
壁に囲まれた世界では
空想だけが生きてる実感の翼になる

そして運動時間もあり
貧相な食事もあり痩せて健康にはなった

「1414番、早く牢から出ろ!」

今日は朝から珍しい呼び出しがあった
読みかけの小説が気になる

「1414番、今日、刑を執行する!」

今からショックのあまり
記憶喪失になってやろうか?

あまりに冷静な自分に驚く
おまえの身代わりに死ねるなんて
最高の幸せだ

私は死ぬことで
おまえの中で生き続けるだろう
それが私の生きる意味
体を失くしても願う意味

幸せになってくれ
妹よ

血の繋がっていない
妹よ





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