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2023年11月12日 東京・両国国技館 DDT「Ultimate Party 2023」観戦メモなど(後編)
前編はこちら
夫の還暦祝いを兼ねて夫婦で観戦に出かけた両国国技館。
今回の大会はダブルメインイベントが組まれているが、正直、注目度でいったら第八試合以降は全部がメインだったと思う。
大会のパンフレットの拍子が赤井沙希選手で、裏表紙が(広告ではあったが)高橋ヒロム選手だったというのが、それを物語っていた気がする。
第八試合 30分一本勝負 グッドコムアセット presents 赤井沙希引退試合~強く、気高く、美しく~
丸藤正道、樋口和貞、〇山下実優(20分30秒 片エビ固め)●赤井沙希、坂口征夫、岡谷英樹
今回の大会のパンフレットに掲載されているアナウンサーの三田佐代子さんが赤井沙希選手に寄せた文章が、本当に素晴らしかった。
引用は控えるが、赤井選手のプロレスラーとしての魅力について書かれているのはもちろん、彼女の人としての在り方・生き方の凛とした姿勢についてもとても温かい言葉で丁寧に綴られていて、全ての女性に読んで欲しいと思うような文章だった。
試合前から泣けた。
試合については、6人ともリング上での戦いには遠慮のかけらも感じられなかったし、それこそが赤井選手が10年間闘い続けてきたリングなんだとも感じた。樋口、丸藤両選手のチョップの激しさもそうだし、赤井選手相手にこの技を出すのか、と思うようなえげつない技もあったが、そこまでの技を出させたのが赤井選手の凄さだったとも思う。もちろん、坂口選手と丸藤選手のからみとか岡谷選手と丸藤選手のからみとか、普段は見られないだけにテンションが上がってしまい、赤井選手の引退試合だということを忘れそうになってしまったところも個人的にはあった。
けれど。
終盤、リング上が赤井選手と山下実優選手の二人となった時、坂口選手と岡谷選手がアイコンタクトを取り、4人がリングを降りたところで、さすがに胸がいっぱいになった。
これは、いつもの試合じゃないんだ、と。
リングを見つめていた坂口選手、岡谷選手、樋口選手の表情と、敢えてリングに背を向け、空を見上げていた丸藤選手の表情が忘れられない。
特に、樋口選手の表情が強く印象に残っている。
対戦カードが決まった際の記者会見で、樋口選手は「介錯」という言葉を口にしていた。現代では介助することを介錯と表現する場面も多くなっているが、樋口選手が口にしたそれは、おそらく武士が切腹する際の本来の意味合いだったろうと思う。赤井選手への深い敬意と惜別の思いがあればこそ、介錯という重い言葉を用いたように感じた。そんな樋口選手が、リング上でのプロレスラー・赤井沙希の本当に最後の介錯を山下選手に託したのは、どんな思いだったのか。
振り返ってみると、この試合、赤井選手に華を持たせて引退させる結果にはならなかった。
それが、プロレスの厳しさであり、温かさだったんだと思う。
試合後のセレモニー、泣けた。
高木大社長の言葉が嬉しかった。
赤井選手が「家族」と出会えて、本当に良かった。
私もずっと家族でいよう。
プロレスラーでは無くなっても、これからも赤井さんを応援し続けよう。あらためて、そんなふうに思ったセレモニーだった。
※ 追記
大会翌日に、バトルニュースのこの記事を読んだ。
あの時の赤井選手の「家族」という言葉には、こんなにも深い思いが込められていたのかとあらためて思った。
プロレスラー引退という形で表舞台から去ることで、初めて血のつながった父との関係性の実情を明かすことが出来たのかもしれない。そう思うと、彼女が自由になれて、良かったと思う。引退は残念だし、悔しいけれど。
あらためて、これからも赤井沙希さんを応援したいと思う。
第九試合 無制限ラウンド ニベア クリームケア ボディウォッシュ W保水美肌 presents アイアンマンヘビーメタル級選手権試合~Dramatic Dream Round“楽しもうぜ!!”何が出るかな!?お楽しみデスマッチ
〇高橋ヒロム<王者>(第5ラウンド3分53秒、フィッシャーマンズ・スープレックス・ホールド)●平田一喜<挑戦者>
引退セレモニーで泣いた後にこの試合を持ってくるのがDDTの奥深さだよなぁと思う。
ラウンドごとに王者の高橋ヒロム選手がルーレットを回し、そこで表示されたルールで試合を行うという形式なのは大会前の動画配信で知らされていたが、ふたを開けてみればルーレットはビジョンでの表示。
完全に挑戦者側有利な展開である。ズルい。
もちろん、この場合のズルいは褒め言葉である。
第1ラウンド=ミュージカルシチュエーションデスマッチ 2分
時間切れ
流れる音楽に合わせて闘うというルール。
ヒロム選手の適応力の速さが凄い。
ってか、選曲が酷い。もちろんこの酷いも褒め言葉である。
第2ラウンド=ハンディキャップマッチ 2分 平田一喜・ヨシヒコ
時間切れ
ヨシヒコ再登場に爆笑。
全くハンディキャップになってない気が。
ってか、ヨシヒコにカウント2で返されるIWGPジュニアヘビー級王座って。
なんか、もう、ヒロム選手の適応力が凄すぎる。
第3ラウンド=目隠し乳隠しデスマッチ 2分
時間切れ
「これはっ!伝説のルールですよっ!あのっ!アントンの名勝負のっ!!」
ルーレットで表示された瞬間、うちの夫が喜び過ぎて何を言ってるか分からない状態に陥ったのがこのルール。
DDT観戦歴の浅い私は今回初めて見たのだが、なるほどこれは伝説になるわと納得。
めちゃくちゃ笑った。
爆笑しつつも、黒い乳隠しはセクシーだとそっと再認識。
第4ラウンド=ダンシングデスマッチ 2分
時間切れ
だよねー、な展開。個人的にはこのあたりでちょっと平田選手のダンスごり推しの展開に飽き始めてきたのだが(あくまで個人の感想です。会場は盛り上がってました)、そんなこちらの気持ちを察したかのように、次は
第5ラウンド=ダンシングデスマッチ 55分
〇高橋ヒロム(3分53秒 フィッシャーマンズ・スープレックス・ホールド)●平田一喜
キレッキレの高橋ヒロム選手のダンスにめちゃくちゃ笑った。そしてプロレスの上手さと強さ、カッコよさ。
今回は平田選手がベルト奪取だろうと思っていたけれど、高橋ヒロム選手が第1589代王者として防衛に成功。
ヒロム選手、これからも追い掛け回されるんだなぁ。でもいっぱい動画見られて嬉しいかも、と思った。
しかし。
リングに大の字になっているヒロム選手が、IWGPジュニアヘビーのベルトを手に取り胸に抱いた。
それを見ていたレフェリーが、ふと、何かに気付いたかのように3カウント。
鳴り響くゴング。
アイアンマンヘビーメタル級選手権試合
●高橋ヒロム(17時36分 体固め)〇IWGPジュニアヘビー級のベルトさん
「勝者 IWGPジュニアヘビー級のベルト」
当たり前のように自然なトーンのリングアナの声に大笑い。
高橋ヒロム選手が防衛に失敗。第1590代王者は、まさかのIWGPジュニアヘビー級のベルトさん。
場内大爆笑と拍手喝采。いや無機物でも獲るのがこのベルトの凄さだけれど、ベルトがベルト奪取って。
場内の爆笑が収まらぬうちに、平田選手がIWGPジュニアのベルトに飛びかかり体固めの姿勢。
スリーカウント。
アイアンマンヘビーメタル級選手権試合
●IWGPジュニアヘビー級のベルトさん(17時37分 体固め)〇平田一喜
IWGPジュニアヘビー級のベルトさんが初防衛に失敗し、平田選手が第1591代王者に。
平田選手がアイアンマンのベルトを奪取した、ということ自体は、ある意味、予想通りの展開なのだけれど、そこに至るまでの試合展開が予想の斜め上すぎて、全体を通してめちゃくちゃ笑った試合だった。
それにしても、個人的に今年のベストバウトになっている2023.10.15岩手・矢巾大会のフジタ“Jr”ハヤト戦といい、この試合といい、高橋ヒロム選手のプロレスラーとしての強さだけではない懐の深さというか柔軟性の凄さをあらためて実感した。プロレス、というものの魅力を全部持ち合わせている選手だと思う。
でも試合後に男色ディーノ選手にリップロックをかまされることまで想定していたのかどうかは分からない。めちゃくちゃ笑った。
第十試合 60分一本勝負 DDT UNIVERSAL選手権試合~ノーDQマッチ
〇MAO<挑戦者>(16分50秒 片エビ固め)●マット・カルドナwithステフ・デ・ランダー<王者>
MAOがユニバーサルのベルトを獲った。
嬉しい。
この試合は、もうこれに尽きる。
この試合は対戦相手が分かりやすいくらい反則まみれのヒール然としたヒールだったので(そもそも実質的に2人対1人のハンディキャップマッチ状態だし)、存分にMAO選手だけを応援しやすかったのも嬉しかった。
それにしても、試合内容は壮絶だった。見ていて怪我が心配になるくらい。プラケースをデスマッチの凶器に使うのは大日本プロレスで良く見ていたけれど、ここで出てくるとは思わなかった。音からして痛いし飛び散ったプラスチックのかけらもずっと痛い。見ていても痛い。
勝てて本当に良かった。
ダブルメインイベントⅠ 60分一本勝負 ドラマティック・ドリームマッチ
〇クリス・ジェリコ(23分35秒 ウォールズ・オブ・ジェリコ)●KONOSUKE TAKESHITA
なんか、試合前からもう、クリス・ジェリコ選手がDDT所属の選手で竹下選手(この日はKONOSUKE TAKESHITAとして出場)がゲスト参戦のヒール選手なんじゃ、って思うくらいにジェリココールが凄かった。もちろん自分もクリス・ジェリコ見たかったけど、それにしてもこれはちょっと、とたじろぐほどの大歓声と大合唱にビックリ。TAKESHITA!って何度叫んでも声がかき消されてしまうくらい、声援に差があった。
そんな空気を察してか、リング上でのTAKESHITA選手のたたずまいからはフラストレーションが感じられて、それがヒリヒリとした空気を生み出していた気がする。けれど、観客に敢えてそんな空気を感じさせようとしていたのはむしろTAKESHITA選手本人だったのでは、とも思う。
試合自体は、これはTAKESHITAがジェリコに勝つんじゃないかと思った場面が何度もあった。正直、試合結果は最後の最後まで分からなかったと思う。
ちなみにこの試合後のTAKESHITA選手のマイクについては感じたことはいろいろあったけれど、大会終了後に大型ビジョンに映し出されたバックステージでの抱擁で全部忘れた。
あれは泣いた。
隣の席のお客さん達も泣いていた。
ダブルメインイベントⅡ 60分一本勝負 KO-D無差別級選手権試合
〇上野勇希 <挑戦者>(29分39秒 体固め)●クリス・ブルックス<王者>
前の試合の空気が凄すぎて、試合開始直後はどこか無理に空気を殺伐とさせているようなぎこちなさを感じてしまった。バルコニー(と言ってよいのかは分からないが)からの上野選手のダイブにも、気持ち的には盛り上がるよりも怪我で試合が終わってしまうのではという心配のほうが上回ってしまったのが正直なところだった。
けれど、試合が進むにつれて前の試合を忘れるくらい、目の前の闘いに引き込まれた。
正直、両選手とも勝って欲しいと思ってしまうような試合だったけれど、結果的に上野選手が第82代王者に。
試合後、上野選手からベルトを奪い取ったクリスが後ろに回って上野選手の腰にベルトを巻いた場面はちょっと泣けた。
さらに試合後の上野選手のマイクでまたちょっと泣けた。
さらにさらに、大会終了後のバックステージの様子が大型ビジョンに映し出された最後、竹下選手が上野選手を抱擁した場面でめっちゃ泣いたのは先に書いた通り。
大会を振り返って
「良い大会だったね」
「行って良かったね」
帰宅後も、DDTの両国武道館大会について書かれた記事や各選手のSNSでのコメント等を読んでは、夫と毎日そう言っている。
大袈裟でなく、本当に毎日。
両国国技館大会は、そのくらい楽しくて見応えのある試合ばかりの大会だった。
けれど、DDTは両国国技館大会の翌日にはもう試合を行っていた。
しかも会場は隅田川の屋形船。先日の新幹線プロレスに続き、屋形船でのプロレス開催も史上初だったという。
一般マスコミにも大きく取り上げられた新幹線プロレスも、日本中のプロレスファンの注目を集めた両国国技館も、DDTにとっては、あくまで通過点。
毎日のように新しい話題を提供し、会場に足を運んだ人たちを楽しませ続ける。それが今のDDTなのだと思う。
実際、プロレスファンではあったものの、ここしばらくプロレス会場からは足が遠のいていた私や夫が、こうして足を運び、そして次はいつ行こうかと話すようになったきっかけをくれたのは、DDTだった。
今回の両国国技館大会については、DDTの男色ディーノ選手もnoteに書かれている。
この記事を読んで、私はこれからのDDTが一層楽しみになった。
ディーノ選手が書かれている無料記事での全試合振り返りとあわせて、多くの方々に是非お読みいただきたいと思う。
プロレスファンはもちろん、プロレスに興味の無い方にも、是非。
いやむしろ興味の無い方々にこそ読んでいただけたらと思う。
もしかしたら、プロレスやプロレスラーに対するイメージが変わるかもしれない。
私はこれからも、大好きなプロレスを応援し続けたいと思う。
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