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第四話 強い人弱い人 後編
※
床を染める黒い液体。それが血液だという事はすぐに気づきました。
少しの鉄の匂い。乾燥して高質化したその端々。それが床一面に広がっているという事だけが「これが血液であるはずがない。死んでしまう」と思わせるだけで、視覚と嗅覚は確実にそれが血液であると訴えかけるのです。
壁を覆いつくすような苔と同化する文様は、カビの匂いと肌に張り付くような湿気によって不気味に光り輝いています。
私は今、父の弟、
第三話 強い人弱い人 前編
水見市日野美町。
水見市唯一の駅があるこの小さな町は、近隣都市のベッドタウンとしての機能を果たしてきました。私の実家もここ日野美町にあります。
日野美町商店街に古くからあるお総菜屋さん。名物はひとつ80円のコロッケ。多い日には一日で500個のコロッケが飛ぶように売れます。
「ハイどうぞどうぞコロッケ今あがりましたよー。ハイハイ何個包みましょ?6個ね。奥さん6個買うなら10個買ったほうがお得やで?
第二話 許されざる者 後編
ミスカトリック大学病院は水見市の田園風景が一望できる山頂にあります。交通手段は大学側が用意したシャトルバスだけ。病院までの道のりは結構急で、それでいて車一台がようやく通れるほどの幅です。
登り口にはゴシック調の大きな門と警備棟があって、一般車両も人も動物も、目に見えるモノ全ての侵入を拒んでいるかのようです。
病院の入り口に向かう坂道に街灯はなくて、生い茂った木々が影となって昼間でも薄暗く、むしろ星
第一話 許されざる者 前編
※
「パンダはかつて未確認生物だったのよ」
大学受験を来春に控えた夏の日。
友人の千夏の家で山積みになった古文の過去問を前にして、頬杖をつきながら千夏はそう呟きました。
「何の話?ねえ千夏、真面目にやろう」
「いいのいいの。どうせD判定だから」
千夏のほうから勉強しようって誘ったのに。ものの30分で千夏のペンは止まりました。
「それよりさ、どう思う?パンダって宇宙人なのかな?」
千夏のその突拍