市場規模1兆円に急騰。ドローンビジネスを先取りするには

2028年にはドローン関連ビジネスの市場規模が9054億円に上ると推計されている。コミック市場が6937億円とされているからその規模の大きさが分かる。

ここでは初心者の方でも分かるような全体像を伝えながら、より実務につながるものやドローンの未来を探っていきたい。

ドローンを活用できる分野と内容

ドローンによって空中で知的・生産活動に活用できる新領域が現出したと言える。農薬散布や育成状況を画像解析できる「農業」。緊急で医薬品の配送したり道路の被害状況の確認をして支援ルート確保につなげる「災害」。風力・太陽光発電のインフラ、大規模工場・倉庫の定期「点検」。花火より安全・小規模で行えるドローンショーなどの「イベント・レジャー」。土木工事の空撮から立体画像に成形したり土運搬の進捗状況を解析して、計画・協議に役立てる「測量」。限界集落など難アクセス地域への「配送」。氷河の後退など気候変動研究、自然保護区への違法侵入者への警戒、海洋・河川の水質汚染チェック、イベントでの顔認証などを活用したテロ警戒、警察の定期巡回や早期の現場把握のためのドローン、田園に害獣を寄せ付けないための警笛警戒など「警備・監視」などが主な活用領域だ。

従来であれば地面に接している(=重力の作用を受けた)人の手や機械による作業が、浮遊するドローンに置き換わることで時間・コスト・人員の削減ができ、高所作業などの危険度も低くなる分野がでてきたのだ。またヘリの通常高度は6キロ、飛行機は10キロと言われているが、この手に届かない遥か「上空」ではなく、我々が身近に接する「空間」が知的・生産活動に活用できる近未来が現出したと言える。

ドローン飛行の規制、仕様や特徴を知ろう

これからドローンに携わろうとする人は、関連の規制仕様特長を押さえておくことが必要だ。まず規制について。カテゴリ分けとレベル分けを押さえておく必要がある。ドローンを飛行する際、規制に該当するのであれば、機体や所有者を申請する方法も押さえておく必要がある。おおまかに重量が100グラム以下の機体、もしくは目視範囲内で高度150m以下で人口密集地でない場合は申請不要で飛ばすことができるようだ。人口密集地か否かの地図もアプリで押さえておこう。

ドローンカテゴリ

続いて仕様について。機体料金は6万円から30万円ほど。これより安くなるとオモチャ仕様で機体が安定しない。無線にて操作する通信には、Bluetoothではなく2.4GHzや5.8GHz帯など周波数帯を使うのが一般的なようだ。最大伝送距離は10-15キロほどもある。より広域な活動を可能とするLTE(携帯電話の通信に使われる)ネットワークを利用できる特殊な用途のドローンもある。またLTEが使えない僻地や災害時ではあらかじめ設定されたルートをGPSに加えて衛星通信にて飛行するものもある。これによりGPSだけだと数mの誤差が生じるが、衛星通信を組み合わせることで数センチ単位まで制御可能になる。また落下・衝突防止のためドローンカメラにて高度調整や障害物回避システムも組み込まれたものもある。

従来のラジコンヘリと比べてなぜここまで注目されているのだろう。ラジコンヘリはほとん手動で操作していたのに対して、ドローンは難易度の高い離着陸を自動制御に任せられるなど素人にも手が届く容易性が特長だ。またヘリと比べて回転翼が多く4から8つの翼の回転数を変えることで、傾いたり旋回したり、ホバリング、急加速や停止まで微細で自在な運動が可能であることも特長だ。おそらくヘリより小型・軽量でも風圧などの気候に耐えられる制御システムも組み込まれている。

ドローンビジネスの着想アイデア

私個人が考える最大は特長は、情報技術との親和性が高く、昨今のIT化の時流に乗った機能・用途が数多く取り入れられていることだ。例えば飛行の安定性を図る機能、多数のドローン集合体・マスで統率された飛行を実現できる機能、多様な画像解析に用いられる特殊カメラ、風向や通信帯域や地上の人流や撮影・点検対象物の形状などを考慮して最適な飛行ルートを算出するシステム、微小空間をすり抜けるなど人による手動を超えた高度な飛行プログラムなどこれらすべてはソフトウエアの開発が担う分野が広がっている。

ここからはより実務の具体例を見ながらドローンビジネスのあり方を見ていきたい。例えば外壁の点検にドローンを活用する例だ。老朽化により外壁の一部が剥がれ落ちて通行人に当たる危険を予防するため数年に一度は法定点検が定められている。行政が関わってくる分、マーケットニーズは底堅い。マンションの大規模修繕に外壁補修をするかの判断として採用されるケースもある。通常はゴンドラで吊り下げたり高所作業車に乗って、作業員が壁面を軽く叩き、その音色から内部の空洞や剥離などを評価する打診検査があるが、ドローンによる外壁検査は赤外線画像分析によって異常検知するというものだ。ドローン検査に置き換わると工期の短縮、少人数化、高所作業車リースなどコストカット、人が上に登ることによる危険性の回避、許認可を省けるなどさまざまなメリットがある。屋根や外壁の建設事業の関連ビジネスとして採用を検討できると考えられる。

個人で始められるものでもう一つは空撮もニーズが高いと思われる。各観光地のアピール動画として空撮を依頼されるというものだ。ヘリコプターだと許認可がおりない、コストも高い、高度が高すぎて観光地をクローズアップできないなどのデメリットがあった。また従来の人による撮影に比べると、静止画ではなく浮遊感のある流れるような動画、現地の人でも歩いていては見えない角度や人が立ち入らない空間の撮影などこれまでになかった映像が魅力的だ。狭い建物の間を縫うように飛行したり、外から家屋内に入る突入感などドローンならではの撮影術などを突き詰めていくと今の世の中にはない個性あふれる撮影ができる。これはすなわち撮影者としての経済的価値も高くなるということだ。

先の2024年元旦に起きた能登地震にもドローンが活用されたようだ。その用途は多種にわたる。道路がどこで寸断されているかを空撮して、自衛隊派遣の効率的な派遣ルートを設計したり人員配備に利用する。ダムや貯水池の決壊が起きないか車の代わりにドローンによって定期点検にいく。寸断された集落へ医薬品の配送に使用。小さなドローンで家屋内の破損状況を把握する。保険金支払いの前提となる罹災証明書のための調査などにも活用された。ただ、ドローンの有益性が一般に知られていないため要請の声が集まらなかったり、撮影した情報を一元管理して、救助各方面の方々に利用いただくといった統合面には課題があるようだ。

とりたててドローンビジネスに取り組むにあたって、撮影・映像の高知能化は押さえておくべきポイントだ。被写体を立体化できたり、さまざまな波長の光を照射することで被写体の状態を調べることができる。農業における発育状態や虫食いなど被害状況、構造物の錆や破断なども検知できる。

ドローンが飛行する近未来ビジネスとは

最後に私が考える未来志向のドローンビジネスを考えてみた。例えばFPVというドローン機能がある。これは専用ゴーグルを装着してまるで自分が飛んでいるかのような感覚で飛行映像を見ながら操作できるというものだ。例えば世界僻地の秘境ドローンツアーを自宅にいながら操作・体験できるレジャーもでてくるかもしれない。

現在はグーグル社が360度カメラを搭載した車で地球上の道路を撮影して、このストリートビューに関わるサービスを提供している。この撮影範囲がアマゾンのジャングルなどの森林や河川や孤島や火山などに広がるかもしれない。ジャングルを3D映像化してリアルなゲームの場面設定に役立てられるかもしれない。

障害物回避システムや風圧や衝突などに耐えられる機能が強化され、ドローン群というマスのよる飛行制御などができると、海や森や山での遭難者をヘリで上空からではなく、数十機のドローンにてより接近した所から(例えば森林の内側から)捜索することも可能となるだろう。生体反応を検知したり、すでに捜査済み地点をマッピングして未捜査地点の割り出すなどドローンの優れた映像解析や飛行システムを活用できると考えられる。また浮き輪をドローンに装着していち早く海難救助者へ投下するいう取り組みもあるらしい。また毎年雪かきで屋根からの転落者が相次ぐ雪国に、融雪剤をドローンにて散布するという取り組みも一部ある。

配送という分野では飛行エリアが人口密集エリアだと日本では規制が厳しく実現に至らない状況のようだ。ただ河川や港湾の上空、海上などは活用できないだろうか。また個人スマホの電波検知エリアのビッグデータや人流検知カメラを活用すれば、地上で人流がない時間帯と飛行ルートを自動算出できるかもしれない。このルートをBtoBなど重要な物流と軽量物に限定して許可発行するなども実現に向けて検討する余地がある。他にも個人携帯電話の電波検知エリアや日本郵便・ヤマト・佐川の共通管理システムを構築すれば、限界集落などにて配送員が欠員・高齢化・非効率であるエリアを割り出してドローン配送へ置き換えて行くことも、業界横断的に取り組んでいく必要がある。

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