「コインロッカーベイビーズ」ドロドロの疾走感


概要

1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。毒薬のようで清々(すがすが)しい衝撃の現代文学の傑作

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異様なまでの力強さとスピード感。
わき目もふらず駆け抜ける文字が一つ一つ重い。
なのに速い。
黄土色の濁った大河が荒れ狂って流れているようなそんな物語。

生後直ぐにコインロッカーに押し込められコインロッカーで必死に泣き叫んだ二人。
コインロッカーは彼らにとって2つ目のお腹の中であり産道だった。
強烈な文章の連続とそこで紡がれる異常な出来事を当たり前に受け入れながら育つ彼ら各々の中で育まれていく得体のしれない何か。
その何かはきっと私たちの中にもそれぞれあるものだろう。
私たちにとって何がコインロッカーで私たちの何がダチュラなのか、それを理性で追いながら読もうとしてもその理性が置いてけぼりを食らっていく。

頭をハイジャックされるような世界観。
完全に別の世界の話という感覚ではなく、なぜかこの異常な世界がしっかり私の住んでいる世界の地続きにあるという感覚を抱かせる。
だからこそ凄まじい不快感をリアルに感じるのだろう。
その不快感を自分の中に取り込んでしまうと新しい世界が広がっていく。


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