「ZERO TO ONE」争うな。際立たせろ。


冒頭1行目から深く考えさせられる。
「賛成する人がほとんどいない大切な真実はなんだろう?」
その答えの中に起業で成功する大切な種が詰まっている。

1990年代末のドットコムバブルの狂騒を揶揄しつつも多少はその狂気と尊大さが必要かもしれないと説き
「何よりの逆張りは大衆の反対を行うことではなく自分の頭で考えることだ」という真理を伝えてくれる。

そしてかの有名なティーリズムが続く。
「独占は全ての成功企業の条件だ」
「競争とはイデオロギーだ。なぜ人は競争を健全だと思いこんでいるのだろう」
「衝突が避けられなかったというのは後付けでしかない。避けられなかったわけがない」
「競争は存在しないチャンスがあるかのような妄想を抱かせる」
「偉大な起業かどうかは将来のキャッシュフローを創出する能力できまる」

スタートアップ企業を応援してエンジェル投資家の真似事をしたり自分自身でも小さな会社を毎年のように作っている私には金言でもあり耳の痛い話も多かったです。
「どんなスタートアップも非常に小さな市場から始めるべきだ」
「特定の市場で一番最後に大きく発展することが重要。勝ちたければ何よりも先に終盤を学べ」
「未来がどうなるか分からないという考え方が現在の社会を機能不全に陥らせている」
「政治家はいつでも世間の空気を読むようになっており10年後20年後より数週間後の未来ばかりに気を取られている」
「競争は資本主義の対極にある」
「先人の通った道は行き止まりかもしれぬ。隠れた道を行くべきだ」

特に次に並べた文章はスタートアップ投資とその後の顛末を占ううえでは最も重要な点なのでこれからスタートアップ投資や操業をしようとしている人は絶対に忘れてはならない言葉だと思います。
「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」
「創業者の一番最初の仕事は一番初めにやるべきことを正しく行うことだ」
「企業内の不一致は次の3つに分類すると分かりやすい。1所有=株主は誰か?2経営=実際に動かしているのは誰か?3統治=企業を正式に統治するのは誰か?」
「取締役は3人が理想的。逆に取締役会の監視から逃れたければ人数を増やせばいい」
「投資を求める起業家には自分に幾ら払うつもりかをきく。CEOの給与が少なければ少ないほどうまくいく」
「採用を絶対に外部に委託してはならない。20人目の社員が君の会社に入りたいと思う理由は何だろう?GoogleやAmazonで高い地位につける人が君の会社の20番目のエンジニアとして選ぶ理由はなんだろう?」
「役割をはっきりさせることで対立が減る。社内の競争をなくせば単なる仕事を超えた長期的な関係が築きやすくなる」
「人間は仕事を争い資源を争う。コンピュータはどちらも争わない」

なぜあれだけ将来が有望に見えた環境ビジネスが頓挫してしまったのかの示唆が面白い。
「偉大なテクノロジー企業は10倍以上他社との違いを見せるがクリーンエネルギー企業は2倍にも届かなかった」
「創業者がスーツで正装してくるような会社はパス」
「誰もが異論のない常識によって明るい未来はやってこない。偉大な会社は隠れた真実に気付いている。」

本書は日本において成功するための起業家もしくはスタートアップ投資家に向けた内容としてかなり話題になったようだ。

本書を読むにつけもちろんそれも頷ける内容だが、それ以上に「社会学」として捉えると物凄く面白いように思う。
スタートアップ投資や創業者になる予定が無いから本書に意味を感じない、という人はおそらく本書の内容を全く掴み切れてはいない。
むしろそんなスタートアップを経て大きな会社になったところで働いている人が感じざるを得ない違和感を本書は実践を経て研ぎ澄まされた鋭すぎるといってもいい程の視点で抉り出している。

その最たるものが「争うな。際立たせろ」ということに尽きるでしょう。
それはマーケット全体に対する自分の立ち位置に対しても、会社組織を運営するにあたっての社員同士のコミュニケーションの取り方についても同じだということが書かれている。
スタートアップに複数携わっているとうまくいくうまくいかないは、最初から分かるようになってくる。
一番の違いは上記してあるように「最初からごちゃついたところはあとから修正しようとしても絶対に直らない」ということ。
それをスムーズにスタートが切れる創業者というのはそれだけで価値がある。

既に顧客がいるのが分かっている小さなマーケットで独占を狙う。
これが出来るマーケットとプロダクトをこれからも探して動いていこうと決意を新たにした一冊です。

本書とともにピーターティールという人物像に迫ったその名の通り「ピーターティール」という本も併せて読むとかなり面白いと思います。


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