「シン・ニホン」何一つ実践されることのない望みの羅列


本書をこれだけ多くの人が高評価しているにもかかわらず何も本書の内容が実践される方向に動いていかないのはなぜなのか?
それは本書の内容が
「温暖化対策」に似たような印象を感じるからだろう。
要は実際は誰も緊急性を感じていない問題を取り上げているのか、もしくは大して関心がないか、のどちらかだろう。
私は著者の「イシューからはじめよ」も読んでいたがその時と今回に共通して感じるのは
「データを使った机上の空論」という印象だ。
確かに本書の内容は素晴らしい。
でも全く実践されない、というのが私の素直な感想だ。


「女性を社会に解き放つ」という発想そのものがもう古い。
いつ女性が社会に出て働きたいと望んだんだろうか?私の周囲にいる30代以上の女性は「働かなくてもいいなら絶対に働きたくない」という人しか存在しない。
つまり、女性が社会に進出するのは経済的側面だけも観ればいいことかもしれないが決して誰も幸せになどなっていないということを著者はひょっとしたら知らないのではないだろうか?
家でゴロゴロしてゲームだけしたい、という女性がとてつもない数存在することを著者は考慮に入れずに海外との比較で男女均等をグラフでこれでもかと見せてくるが、かなり空虚な提案に感じる。

もちろん下記のような知っておくべき知識は十二分に与えてくれるので良書であることには間違いない。
「世界でこれほど妄想ドリブンな情操教育を行っている国は珍しい」
「20年毎に白木ですべてを作り直すという世界で類を見ない式年遷宮という風習は、きれいさっぱりやり直すという日本独特の風習だ」
「すべての教養の大前提は、記述、表現能力があることだ。サイエンスはモノを書くビジネスだ」
「知り過ぎは邪魔になる、まだ知り過ぎていない段階に素晴らしいひらめきがある。だから若者が重要なのだ」
「日本では空気を読んだり慮ったりする力ばかりが学校で鍛えられ、本質的に伝える能力を鍛える機会がない」
「どれだけ大きな存在に対して、どれだけ勢いよくどれだけ変化を与えられたか」
「米国の主要大学を支えているのは企業ではなく個人の寄付と運用だ」
「認知症高齢者の平均入院期間はアメリカ6日、デンマーク8日、スウェーデン13日、日本は300日前後。日本だけ認知症が治りづらいなんていうことがあるだろうか。明らかに人為的に発生していることだ」
「一人あたりの公費30万でまわる目黒区と数百万と投入されてやっとまわる地方自治体、当然この差は都市部から回ることになるので都市部が崩壊すればすべてが崩壊する状態になっている」

私が日々思っていることを端的に表している文章があったのでそれを下記に記すが、まさにこの状態であるからこそ、そしてその状態に気がついてもいないシニア層がいる限りこの国の未来はない。
「このままいけばこの国はシニア層と過去にお金を使い過ぎて衰退を止められなかった大国として歴史に名を刻む。日本の歴史上最も強欲で身勝手なシニア層がいた時代だったと後世に語り継がれる」


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