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波動力学① 波とは何か


波とは何か

まず,”波動”について説明します。波動は,物体の運動が,周囲へと伝わっていくことによって生じる運動を指します。
この波動を観測したとき,それを””とよびます。

また,時間を固定したときの,位置に応じた波の様子を”波形”といいます。

多くの波動は,流体を媒質として伝わっていきます。流体は粘性や圧力をもっているため,Newton力学で扱った固体系の力学に,これらの影響を加える必要があります。

光は,電磁場を媒質として伝わる波[電磁波]の一種です。

………と言われても,電磁場が波を伝える(真空中にも電磁場は存在できるので,真空でも光が伝わる,ということになる)というのは,腑に落ちないと思います。

(納得できる人は,その理解の方が正しいので,以下の説明は読み飛ばしてください!)

光が電磁波の一種だと分かった(そして電磁波の媒質が電磁場であることが分かった)のは19世紀後半のことです。
それ以前には,光はエーテルとよばれる不思議な物質が伝えている,という考え方が物理学界を席巻していました。

”エーテル”という用語は,もともとAristotle (アリストテレス; BC384-BC322)が使いだしたものです。地上の運動は真下に落下,天球の運動は円運動と別々に考えられていたので,天球を構成する元素として”エーテル”という物質を考え,「エーテルの作用で天球は回っているのだ!」と主張しました。
(現在では否定されていますが。)

”エーテル”が宇宙に満ちているというアイデアは物理の世界に輸入され,光の媒質として採用されました。
(この点に,当時の神学教育が垣間見えます。実際,宇宙に満たされた物質が運動の原因と唱えたRené Descates (ルネ・デカルト; 1596-1650)はイエズス会学校の出身,エーテルの名づけ親・Robert Hooke (ロバート・フック; 1635-1703)は聖職者一家でした。)

光の研究はChristiaan Huygens (クリスティアーン・ホイヘンス; 1629-1695)の時代に深められましたが,この時代には,当然,「光はエーテルを媒質として伝わる波」という考えが一般的だったので,とりあえず電磁気学を学ぶまでは,エーテルを媒質とする波だと捉えておいてください。

読み飛ばした方戻ってきてください!

そんなわけで,前半部分では光に関する話が多めになるかもしれませんが,ご容赦ください。

より詳しく知りたい方へ
Isaac Newton (アイザック・ニュートン; 1643-1727)は光を粒子だと考えていました。光が粒子か波かという議論はこの時代から20世紀半ば頃まで何度か再燃し,量子力学の体系化をもって決着がつきました(結局どっちも正解………)。

波動力学のnoteでは光の波動性に焦点を当てています。光の粒子性に関しては,量子力学のnote(準備中……)をご覧ください。

それでは,奥深き波動の世界へ。

数学的な準備はコチラ↓↓↓(準備中)
・極限と微分,積分
・微分方程式
・ベクトル,行列とベクトル解析
・Fourier解析


波動力学編 目次
① 波とは何か ←今ココ!
② 波動方程式
③ 波の基本式
④ 波の反射・屈折
⑤ 波の干渉・回折
⑥ うなりとDoppler効果
⑦ 流体力学[1] 連続方程式
⑧ 流体力学[2] 運動量保存則
⑨ 流体力学[3] エネルギー保存則
⑩ 流体力学[4] 音波の例
■ 章末問題

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