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興味に導かれるままシンガポールの大学院短期プログラムに飛び込んでみた話

2023年6月25日の深夜0時50分、私は一人で初めてのシンガポール、チャンギ国際空港に降り立った。初めて行く国に深夜に到着するなんて、あまりしたくないところだが、土曜日午前に子供の授業参観があったのと、日曜日に現地の友人と会う約束があったので、この便に乗らざるを得なかった。

滞在期間は6月25日(日)~7月3日(月)の9日間。
家族を日本においてシンガポールに行った理由は、シンガポール国立大学リークアンユー公共政策大学院の日本人向け短期プログラム 「アジア地政学プログラム 第22期」に参加するため。

このプログラムは、地政学の観点からアジア各国の現状と過去を知り、今後の動向を理解しやすくする1週間(平日5日間)の集中講義だ。

このプログラムに参加したきっかけや、ここでの学び、同期メンバーとの出会い、そしてこれからについて、記憶が新鮮なうちにnote記事にしておく。


参加のきっかけ

このプログラムを知ったのは23年3月に前回開催である第21期に参加した前職友人のFacebook投稿がきっかけ。 

以前からこのプログラムの主催者 田村耕太郎さんのSNSでの発信を興味深くみていたこともあり、すぐに参加してみたい、と思い立った。

田村先生の専門領域は地政学。
21世紀はアジアの時代と言われている中、日本の少子高齢化の行く先や子供の教育への関心から、一度体系的に日本を取り巻くアジア各国について知っておきたかった。しかも、2022年2月に始まったウクライナとロシアの戦争終息が見えない中、今後どのようになっていくのか、を考える意味でも自分にとって旬な興味分野だった。

前回の記事「新しい学び方を始めたら、行動が変わって興味が広がり、新しい人たちとの出会いが増えた話」でも書いたが、コロナ禍で自分の考え方/行動が大きく変わったことから、いまこれに参加しなければ!という思いに素直に従うことにした。

1週間の有給取得ともろもろ費用の面でそれなりの葛藤はあったが、海外のプログラムなのに全講義同時通訳付きという英語が得意ではない自分には超有難いサポート付き。

他の参加者も同様のハードルを越えて参加しているわけで、今回を逃したら次のチャンスがない可能性もある、と思い切って締め切り最終日に申込ボタンを押した! どういった人たちがこのプログラムに参加しているのか、を知る意味でも行くしかない。

結果的には参加して本当によかった。
様々なバックグラウンドを持つ同期メンバーとの出会い、現地ならではの得難い学びと経験、また来ようと思った都市国家シンガポール。この辺りを紹介していきたい。

多彩な参加者と凄い講師陣

参加者も面白くて、IT業界に属する自分にとっては普段接することが無い方々ばかり。皆さん様々なバックグラウンドがあって参加していて、下は19歳から上は50代まで。現役の学生もいれば、専門職の人、企業の経営層の人、ご自身の事業を持つビジネスオーナー、農家の方も2名いて驚いた。本当に多彩なメンバーだった。

30人弱の参加者がどこから来たかで分けると、シンガポールや東南アジアのを拠点とする人が約1/3、日本から来た人が約2/3、1名は留学先の中東の国からの参加。また年代別では、20代、30代、40代以上がそれぞれ1/3といった感じ。 

別の観点では、企業からの派遣が1/2、自腹の人が1/4、奨学生が1/4。特に自腹組は何かを変えたい/得たい人が来ていて、当然ながらハングリーな方々ばかりだった。

これら同期メンバーと5日間のあいだ毎日の講義の休憩時間や昼食、人によっては夕食を共にして、お互いを知ることになる。特に東南アジアでビジネスをしている方も多く、コラボレーションの機会も生まれやすい。

講師陣については、開催地がシンガポール、かつ国家の元トップの名を冠したリークアンユー公共政策大学院のプログラムだけに、公的機関/企業の要職を務められた講師の方ばかり。シンガポール関連は少し多めのコマ数が割かれ、深堀りされていた。(実際どんな講師がいたか、はこちら

このプログラムに参加して得た学び

この一週間で得られた学びを例によって3つにまとめると・・

  1. 日本は捨てたもんじゃない、課題は多いがチャンスもある

  2. アジア各国もそれぞれの歴史と特有の課題を抱えている

  3. これらを知って、どう活かすかは自分次第

日本はまだまだ捨てたもんじゃない、課題は多いがチャンスもある

日頃からよく聞く日本の少子高齢化、人口減少、といった課題。これは日本だけではなくアジア各国でも近い将来問題になりそうなことが人口動態のグラフを見ればよく分かる。 韓国、シンガポール、タイ、中国、もこの先20年程で急速に高齢化を迎えることになる。

いち早く高齢化社会の課題解決を行うことで、課題解決に役立つ製品サービスをアジア各国に提供する事ができるはず。

一人の講師が、日本人はアニメでロボットに慣れ親しんでいるところが強みだと言っていて、こんな点も違いになるのだ、と驚いたことが印象に残っている。

出典:令和4年版高齢社会白書


アジア各国もそれぞれの歴史と特有の課題を抱えている

東南アジアは人口が若くて元気、経済成長をしていて日本にどんどん追いついてくる、という話をよく見るが、これを一括りにせず各国それぞれにフォーカスして見ていくと、まったく異なる状況が見えてくる。

田村先生の地政学の考え方に沿って、それぞれの国の地理的特性、そこから派生する気候・周辺国・民族性・産業・歴史・統治体系を見ていくと、様々な状況の違いがあって面白い。

例えば、ここで学んだ「中所得国の罠」を知ると、これを脱した日本、シンガポール、台湾、韓国はレアなケースで、どの国でも高所得国になれるわけではないことが分かる。

一方で、ここ5年くらいで東南アジア各国の首都を旅行して歩いてみた際には、東京と大して変わらないくらい都市化が進んでいる印象だった。(深圳は東京よりも未来感あったし) 主要都市単位で見れば、都市化が急激に進んでいて、そこの住人は東京と変わらない生活をしている。

主要都市だけ進んでいる=国内格差が激しい、ということなので良いことばかりではないだろうが、

日本がモノづくりの国として製品を売っていくには、まずは都市部から、というのが素直。アジア各国の主要都市が成長していくのは日本にとっても歓迎すべきことだと思う。

【1人当たりGDPでみる国 vs 主要都市】
 タイ 7,200ドル → バンコク 18,800ドル (2020)
 マレーシア 11,500ドル → クアラルンプール 26,900ドル (2021)
 インドネシア 4,350ドル → ジャカルタ 19,200ドル (2021) 

出典:【アジアの風、日本のゆくえ】(第17回)勢い増す高額消費、想像以上に高い購買力


これらを知って、どう活かすかは自分次第

1週間 毎日9時から17時すぎまで大学の教室にこもって講義を受ける、なんて面白い経験だったし、視野の広がりと未来への視点を得る良いきっかけとなった。

今回、日常を離れて、というのが学びには効果的。しかも日本を離れてシンガポールで参加することで、余計なノイズが一切入ってこない集中できる環境、というのがとても良かった。

快く送り出してくれた家族に感謝。有給を取りやすい会社にも感謝、かつ繁忙期でないタイミングだったことがとてもラッキーだった。(次回は11月開催ということが判明し、この時期だと参加は難しかった)

帰国後、少しずつ復習というか、講義内容やノートを見直しているのだがこれもまた面白い。学生時代は勉強嫌いでぜんぜん学ばなかったが、今になって興味のまま学ぶ/調べて知っていく楽しさを感じている。

余談だが、帰りの飛行機で話題のインド映画「RRR」を見た。今回の授業の一つにインドを取り上げたものがあったからなのだが、歴史的な背景をざっくりでも知っていることで、面白さが倍増。3時間あっという間だった。 歴史、地政学、とも最近本当に興味深い。

おわりに

同期メンバーは早速各自のビジネスでのコラボを始めたり、農家の一人は生産している旬の桃を機内に持ち込んで、シンガポール在住のメンバーにふるまったり、と次のアクションを起こしている。自分もできることから少しずつ始めている。

今回のテーマは、定期的にアップデートしていきたい内容。2年後くらいにまた参加したい。そして、今回味をしめたので、これからも興味に導かれるまま何かしらのプログラムなりイベントなりに現地参加していきたい。

あと、次回は家族を連れてシンガポールに行こうと思う。

ご参考: 「アジア地政学プログラム」に興味がある方はこちら↓

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