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小説「架空の犬と嘘をつく猫」〜諦念

寺地はるな著

ブックオフで、
北澤平祐さんのカバー絵が可愛くて
ふと買ってみた小説です。

寺地はるなさんという
作家さんを知りませんでした。

裏表紙のあらすじを読むと
機能不全家族の重たい話かなと
思ったのですが

読み進めると
重たい家族の問題とは
裏腹に

なんというか 

明るい、とも違う
軽い、とも違う

乾いた空気


かな、、を感じました。

(物語の空気感を言葉にするって
難しいですね。)

主人公の男子は
幼い弟を不慮の事故で亡くし
母親は空想の世界に逃げる、
父親は愛人の元へ逃げる、
姉は家を出て音信不通、
祖父も祖母も、
バラバラな家族。


ここだけ読んだら
悲惨な物語
トラウマ物語かなと
思いますよね。

主人公は
たしかに寂しそうで
自分の気持ちをうまく
まっすぐに出せなくて

人生もなんとなくぼんやりしていて

出会う人たちもわけありで

それなのに
それなのに

読み進めるうちに

同情とか
かわいそうとか 

そんな感情じゃない

あーみんな寂しいよね

どんな家族に生まれても
普通の家族に生まれても

何かしらあるよね。

人ってみんなこんなんだよね

それでいいよね

っていう

人そのものを肯定するような

だからといって 

"あたたかい気持ちになります"
"癒されます"

とかそんな薄っぺらじゃない。


子どもハウスのスタッフの言葉が印象的です。

「ボランティアの人はよく来ますけどね。
子どもが大好きなので、と目をキラキラさせて言うよつな人はお断りしてます。」

「へんな理想を押し付ける人は困る」P146


こういう言葉に
この物語の根幹があるような気がします。

"こんな家族に生まれてかわいそう"

"大変ねえ" とか

そういう
一面的な価値観を押し付けない。

傲慢じゃない。

なーんかさ

結局みんな同じだよねーー

っていう

諦念。










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