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日米で経験した炎上プロジェクトの違い

 私はアメリカでクラウドの中の人をやっている開発者だ。最近アメリカの方でも当初の予定がとても延びたプロジェクトを経験した。このような時に、日本では多分ものすごい炎上プロジェクトになると思うのだが、アメリカで体験したそれは全然違う感じだった。
    これは一言でいうと「納期感の違い」がもたらしている感覚だった。

炎上感のなさ

 私が感じた「予定がとても延びた」プロジェクトの場合、日本にいたときのプロジェクトでは、受託開発、内製双方ともに物凄く「大問題」になっていた。上位のマネジメントも連日のように進捗の会議を行い、人が追加投入され、エンジニアは時には泊りで一日も早く後れを取り戻すために皆遅くまで、そして土日も働き、お客様はもう怒り心頭… だったと思うのだが、こちらで体験したプロジェクトは拍子抜けするぐらい炎上感が無かった。
 当初予定していた日程が一か月以上伸びても、みんな慌てる様子もなく、私はわからないが、そんなに上からのプレッシャーもない様子だった。先にETA(Estimate Time of Arrival) つまり、多分これぐらいでリリースできるんじゃね的な納期っぽいものを上に水増しして報告している様子もなかった。
 プロジェクトを統括している人にいつもこんな感じなの?と聞いたら。「うん。大体こんな感じだね。特に誰もやってない新しいことをやっている時は」そして、彼自身もまったく焦っている雰囲気はない。人が追加で投入されることもない。ただマネージャがやってるメンバーがこのプロジェクトに集中できるような環境を整えてくれた。土日頑張ろうというムードが無いのはもちろん、そもそも、早くリリースできるように頑張ろうという急かすムードすらまるでなかったのは驚きだった。多分急いでも瞬間風速的にはOKでも、持続的ではないからかもしれない。

日本のプロジェクトと違っていたもの

 こちらでのプロジェクトでは、「納期」はいじり易いパラメータのようだ。もちろんこのプロジェクトはオリンピックのアプリとかではないので、本来納期はそんな重要じゃないだろう。でも日本だったらきっと違う場面だと思う。じゃあ何が重視されていたかというと「品質」だった。

品質が見合ったものではないと絶対に出さない

 こちらのプロジェクトだと、納期だからだそうとかそんな雰囲気ではなく、予定された「品質」でないと納期はどこまでも伸ばす雰囲気だった。問題をP0 - P2 で分類して、P0はこれをつぶさないと絶対リリースしないというバグである。この品質のゴールは、Private Preview (少数のお客様だけに公開するリリース), Public Preview (一般的なプレビュー), そして GA (本番で使用可能のレベルのリリース) で当然違うが、当初のあんまりみんな品質を期待していない Private Preview のレベルでもそうであるというのは驚きだった。

品質を確保する方法 - Bug Bash

 こちらも、かなり日本とイメージが違っている。普段の開発時点から高度なCI/CDやテストコードそして、Pull Request のコードレビュー、実環境でのテストでプロテクトしているのは予想通りだと思うが、大きなリリースの前に実際にE2Eでバグをとるのは「Bug bash」プロジェクトにかかわるいろいろなロールの人が実際に試して、それぞれの人なりのやり方でバグを見つけて報告する。テスト仕様もない探索的テストてきな感じでいいのかな?とおもっていたけど、今回調べるとちゃんとしたソフトウェアテストの方法らしく、様々な役割の人がテストすることによって短期間でバグを見つける優れた方法のようだ(Bug bash 参照) 

 そういった Bug Bash で問題が見つかったら、Bugを分析して、Fix して、Private Preview の時だったら P0 がなくなるまでやる。といった具合だ。

だから、P0が見つかる限りそれはリリースされない。いくら伸びても。だからリリースされたときの喜びはひとしおだった。

なぜ「品質」だったんだろう?

 これは私が作っているプロダクトの性質もあると思う。クラウドサービスなので、新しいサービスを触ってみてダメダメだったら二度と使わないと思うだろう。受託とかの都合もあると思うが、そう考えると、純粋にソフトウェアと作って使ってもらうという観点で考えると「納期」って本来そこまで重要だろうか?例えば、クラウドサービスがリリースされるのは伸びてもだれもわからない。ある日できてからアナウンスされるだけだろう。
 数少ない、プロジェクトは納期は重要かもしれないが、大抵のものは納期よりも「使ってもらえるサービス」になってるほうが本来ずっと重要じゃないだろうか?



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