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普通の人が発想法をマネできる、本当にすごい世界のアイデア 5選


職業柄、何を見ても「これにはこんなアイデアが入ってる」「このアイデアはすごいな」などと考える癖があります。

この記事では、おもちゃ開発者 兼 アイデアファシリテーターという立場の勝手な目線で、本気ですごいなと思っている世界のアイデアを紹介します。

ただし選ぶ対象として、天才とか大企業とか、スゴい人じゃないとマネできなさそうなものは対象外にして、普通の僕たちでも考え方をマネできると断言してよいアイデアに限ります。

例えば、一説では、この1000年の中での最大のアイデアは「ねじの発明」だと言われています。一見単純そうな部品であるねじがなければ、今この世にあるほとんどのものは作ることができないそうです。でも、ねじは精密な計算のもとに作られる「機構」であるため、到底僕らのような凡人には、万一アイデアを想像できても、実現の難易度は高いです。

また、何気なさそうな日用品でも、例えば僕が大好きな、消せる「フリクションボール」ペンも、開発に30年もかかったそうで、それも容易にマネできるレベルではありません。具現化したことが凄いわけで。

世界を変えたアイデア事例を挙げろと言われるといくらでも出てきますよね。飛行機、コンタクトレンズ、スマホ、Facebook…。マネできません。

作れるイメージがなければ、人間はそれを発想をするのが難しいのです。

そういう意味で、これから挙げていく5つの事例は、当然容易にマネできる単純なものではないにせよ、僕たちが今後自分のやりたい分野の中で発明をするときに少なからずヒントになる素晴らしいアイデアです。職業柄、すべてエンタメ業界の事例になってしまっていますが、本質は業界関係なく、一緒です。前置きが長くなりましたが、紹介していきます。


1.ドラえもん(作品)

「いや、いきなりとんでもないのを例に出してきたな」と思われるかもしれませんが、ドラえもんという作品は、アイデアという文脈を語るなら絶対に挙げておきたい代物です。

大好きなマンガ、アニメ、映画、小説などはたくさんありますが、ドラえもんが世界中で最強のアイデア作品です。

未来から、いろいろな欲求や悩みを解決する道具を持ってやってくる、というフォーマット。これで、道具とストーリーが無限に生まれます。未来と過去を行き来することで、パターンが万能となるわけです。子供向けの「ひみつ道具アイデアコンテスト」さえ開催でき、無数のアイデアが生まれます。

ひみつ道具を1つ挙げて、その機能について議論するだけでも、人それぞれ考えることは異なり、それは哲学的でさえあり、年齢が変わると考えも変わり、一生退屈しません。これも、ドラえもんが時間軸を非常に意識したストーリーだからです。子供から大人まで、時代を超えてものすごい人数に大きな価値を与えたアイデアです。

僕は、ドラえもんを、コピーしない範囲で少しずらすことで誰もがオリジナルのストーリー作品を作れると思っています。自分の体験や欲求、子供のころからの妄想など、人生に紐づいた自分だけのストーリーを。

いやいや、長期連載して、ここまで大きくした、藤子不二雄先生とたくさんの歴代の関係者のみんなの力だし、マネなんてできないだろ、と言われそうですが、その話は最後にまとめて書きます。まずここでは、普通の人が発想し、具現化への一歩目を踏み出せるすごいアイデアとして挙げさせていただきます。


2.ガシャポン(カプセル自販機)

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200円とか、300円とか(昔はもっと安かった)を入れてレバーを回すと、丸いカプセルが出てきて、何が当たるかな? とワクワクし、中身に一喜一憂する。誰もが一度は買ったことがあるでしょう。

ガシャポンはすごい発明です。まず、自販機の機構がめちゃくちゃアナログな点。例えば雑誌の付録でも紙製組み立て式のガチャガチャ自販機がついてきたりするくらい、意外とシンプルな構造なのです。僕もこの職業になって初めて自販機の中身を観察したときに、DIYで作れなくはないレベルなんだなと思いました。

どこがそんなにすごいのかと言うと、ガシャポンという商売(と言うかカルチャー)が誕生したことで、大勢の人間のアイデアが爆発したことです。要するに、ガシャポンで売るものの企画は、

・硬貨数枚、という価格で販売でき、
・カプセルに中に入れられるサイズのもので、
・何が当たるかな?というラインナップがあって何回もまわしたくなる


という丁度いい制約が明確にあり、いかに自販機を回して買いたくなるかを、世界の開発者たちが競い合う知恵比べが開始されたのです。それが何十年も続けられてきた歴史を作ったアイデアでした。

個人的にもこれまで、フィギュアだけでなく、例えば歌舞伎の演目をテーマにした柄のハンカチをカプセルに入れて売ったりしました。カプセルに入れば何でもいいわけです。

歴史を変えた有名な例で言うと、仮面ライダーオーズのベルトに差し込む「オーメダル」が、カプセルにぴったり入るサイズで作られ、メインアイテムである変身ベルト玩具が売れるとともに、ガシャポン自販機はどんどん回され、その年の年末には行列ができました。僕も甥っ子のために何度もループして並んだものです。

巨大な剣になる空気ビニールを丸めてカプセルに入れたり、細かいちりめんモンスターをカプセルにどっさり入れたり、最近ではダンゴムシの拡大スケールフィギュアを、カプセルなしで本体そのままパッキングして自販機から出てくるようにしたり…と、クリエーターたちのアイデアは尽きません。

細かく言うと、在庫が残らない(おもちゃ屋だと人気のない商品は残るけど、ガシャポンは当たり外れだから、在庫がまんべんなく消えていく)とか、自販機が置けないコンビニ店内などならダンボール自販機でJANコード付きのカプセルを売ってレジで会計できるとか、システムとしても年々アイデアが追加されています。

この、誰もがいろいろな形で乗っかれる発想フォーマットを作ったことこそが、すごいアイデアです。

3.マジック・ザ・ギャザリング


僕は、TCG(トレーディングカードゲーム)が大好きで、職業柄もあって長年研究してきました。入りは世界でもっとも有名なこのジャンルの先駆者、「マジック・ザ・ギャザリング」で、現存する中で最もよくできているなと思うのは「デュエル・マスターズ」です。

僕は、マジック・ザ・ギャザリングの開発秘話が大好きです。当初このゲームは、作者の方が長年温めていたアイデアで、面白さには絶対の自信があったのですが、考えていた商品の形態として、いわゆるトランプのようなオールインワンのパッケージ商品だったそうです。1セット買えば遊べる、ボードゲームのようなものですね。

それを玩具メーカーに持ち込んだところ一蹴され、それでもずっと考えていたら、ある日ふとした瞬間に、カードを何が当たるかわからないパックにして数枚ずつ売り、コレクションして自分のデッキを強くして闘い合うというゲーム形態(イコール販売形態)の着想が降ってきたとのこと。

それにより、おそらくパッケージ商品だと数万セットなどの販売だったかもしれないものが、異例の速さで1億枚売れ、その手法が現在に脈々と受け継がれ、「遊戯王」「ポケモンカードゲーム」などの名作が次々に誕生したのです。

僕が小学生の頃は、ビックリマンシールを夢中で集めていましたが、それでゲームはできませんでした。なぜ当時、誰もそんなことを思いつかなかったのかすら、今となっては不思議です。当時デュエマが存在していたら僕はどれだけ夢中になったか知れません。

遊び方を変えたら売り方も変わるかもしれない。売り方を変えてみたら遊び方も進化するかもしれない。僕はすべての仕事で常にその可能性を考える、大好きな事例です。


4.動くうさみみ帽子

この商品を、アイドルがかぶってSNSで宣伝していたのを見たとき、僕はあまりの嫉妬心に自宅でのた打ち回りました。

昔から、ポンプを握るとぴょこぴょこ跳ねるカエルのおもちゃがあります。それと同じ機構で、手部分を握ると耳が動く帽子。

ここまで単純で最強の商品があるだろうかと。

かわいい女子がやっても、おっさんがやっても、もちろん小さい子がやっても、おじいちゃんおばあちゃんがやっても、笑える。

この商品のすごいところはいくつもあるのですが、まず、どう考えても論理ではなく、直感の商品であることです。最初にどんな組織がどんな座組で開発したかの真相はわかりませんが、関係者一致で「カワイイ」となったから、実際に作ることに疑いがなかったのではないかと想像します。

これまで、そういう感じで投資をする量産商品化が決まった瞬間を何度か見たことがあります。マーケティング的にどうなるか、どうするか、その戦略がついてくる前に、「面白いじゃん」だけで、やらないという選択肢がなくなるのです。結果的にインフルエンサーの女の子たちも勝手についてきて、この帽子は大ヒットしました。

もう一つ、このアイデアのすごいところが、すぐ模倣できてしまうというところです。ちょっとこの点、語弊があると怖いので慎重に話しますが、当然模倣品というのはめちゃくちゃ酷い犯罪です。僕も模倣品を出された時、全部それに売り上げが吸い込まれて行って、模倣品とは人を殺す可能性すらあるものだということを、当事者になって初めて身をもって知りました。

だから、優れたアイデアというものは、マネできない、パクることができない防御が効いているものだという考え方もあります。でも僕は、パクられることで本物がむしろ伸びていくアイデアというものが、本当に最強なんだと考えているところが少しあります。

世の中のもののほとんどは、パクられるとダメージを受けます。しかしこのうさみみ帽子は、パクられればパクられるほど、本家の販売数も伸びていったのではないかと推測します。

数年前のハンドスピナーもそうでした。勢いがすごすぎるのです。仕入れて小売りへ流通させていく問屋さんは、売れば売るほど儲かっていました。世界のメーカーがやってもやっても、数が足りなかった。(最終的には余るんですが…)

そして、それが高じると、他社より良いものや、差別化したものを作ろうとして、しのぎの削り合いが始まる。

シンプルで優れたアイデアは、周りが勝手に広げて、進化させていくことで、相乗効果でそれ自体がどんどん成長していくのです。

※以上、そのように書きましたが、僕は模倣品や海賊版を非常に憎んでいます。凶悪犯罪です。それをやる者は処罰されて当然ですが、それさえ追い風になってしまうアイデアは凄まじい、という考えもあるということです。YouTubeのピコ太郎や恋ダンスをみんながマネして投稿して、その著作料が本家に入るというシステムも、凄い仕組み、すごいアイデアだなあと思います。

5.ピースボートのポスター

マーケティングのアイデアです。大人はだいたい一度は見たことがある、居酒屋のトイレに高確率で貼ってある、世界一周の船旅のポスター。めちゃくちゃすごいと思います。すぐ参考にできる売り方のアイデアの中で特に優れていると感じます。

居酒屋のトイレという空いている空間を狙って貼らせてもらう活動をしたことがまず、アイデアとして尊い。最初から確信があったかどうかは関係者に聞いてみたいですが、すくなくともある段階からは、日本中に広げるというミッションを実行に移したくなった楽しいアイデアになったことでしょう。普通に考えたら泥臭い仕事だったかもしれませんが、結果的に日本中の居酒屋は巻き込まれたし、そのことで世界は変わったのです。

そう感じたのは、僕が大変お世話になった恩師である大学時代の教授が、御年78歳でピースボートで世界一周をし、最高によかったと言っていたことでした。もともと本格的な旅行好きだった先生ですが、年齢もありハードな旅ができなくなった。お酒も好きだったので、おそらくピースボートを最初に目にしたのは、居酒屋だったのではないか? そう推測しています。

学生さんから教授まで、お酒を飲んで楽しい話をしていたり、あるいは悩んだりグチったりして、酔って勢いづいているときに、「世界一周に行こう」というメッセージを見る。それで、勢いで人生の1ページを決める。僕の前の会社の同期も、それで学生時代に行ったと話していました。知り合いだけで2人。どれだけの人がそういう流れでこの船に乗ったかわかりません。そして、大満足した。

この商品を欲しいと思わせる場所とシチュエーション、そして感情が発動する瞬間は、ここだ、というのをピンポイントで分かり、そしてその空間は、空いていた。たくさんの居酒屋を巻き込んだ。震えるほど熱いエピソードです。

まとめ:結局、すごいアイデアとは何なのか


5つの事例を紹介してきましたが、僕がここで定義するすごいアイデアとは、「小さく始められるけど、大勢の人が乗っかりたくなり、乗っかられることで本家本元がさらに成長・進化していくアイデア」です。

例えば、ドラえもんは、藤子不二夫先生がすごいわけですが、ここまでになったのは、歴代で関わって、ドラえもんを大きく育てて下さった多くの関係者の力です。その人たちを動かすパワーを持っていた1つの作品、アイデアだったのです。

今回挙げた5つの共通点はそこです。最初のアイデアがある程度のパワーを持っていても、発案者1人で世界を変えることはできません。周りのスタッフとユーザーが、乗っかって、勝手に盛り上げたくなるほど凄まじいパワーを持ったアイデアだったのです。

では、これらを参考に、僕たちはどうやって自分がやりたいアイデアを考えればいいのでしょう。

少なくとも一つ言えるのは、最も重要なのは「シンプルな自分の本心」です。人生体験からくる燃えるような個人的欲求です。会社のリソースやいろいろな方の支援を味方にするとしても、「私だから」できる、「私だから」やりたいアイデアを、人生をかけて見つけ、小さな一歩目を踏み出すことからしか始まりません。どれだけロジックを考えても、他の人は、1人の本音と本気の欲求にしか、ついて来ません。

やりたいことはそうそう簡単に見つかりません。今すぐにはっきりさせなくてもいい。一生に一つは、必ず見つかります。でも、それを見つけるためには決して、組織のミッションなどのために、個人的欲求を封印してはいけません。

「私は巻き込むのが苦手だから」というセリフはよく聞かれますが、自分のアイデアをやりたい、それは世界の誰かを幸せにする、と本心で思っていたら、気の強さ弱さなど関係なく、勝手に周りは巻き込まれてくるものです。逆に言うとそれがなかったら、プレゼンとかそういう話以前の問題です。

組織のミッションと個人的欲求は、重ね合わせるべきものです。業種によっては難しいこともあります。それでも、あくまでも、アイデアと自分を切り離してはいけません。

アイデアの語源はイデア、「観念」です。アイデアとは人生観です。ヒントを外に求めたとしても、最終的には自分の内なる欲求イコール、本物のアイデアです。

いろいろな発想メソッドを学ぶとか、情報を集めるとか、そういう方法は、アイデア自体を探す行為ではなく、自分自身の欲求を探す行為です。

世界のすごいアイデアは皆、「人間」に紐づき、明確な作者が分からなくても、作った人が作っているときにニヤニヤ笑っている姿が容易に想像できます。


アイデアは、人生を変える、素晴らしいものだ!


みんなで、今日から、楽しんで考えてみませんか?





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