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【詳細マニュアル】おもちゃ製品の企画開発のしかた


※株式会社ウサギ(代表:高橋晋平)は、おもちゃの企画・開発・試作・設計・デザイン・生産(量産)・PR・販売のすべてを支援サポートしています。

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ゲームクリエーターはたくさんいるし人気があるのに、おもちゃクリエーターは人気がない?

小学生~大学生の将来なりたい人気職業ランキングをみると、ゲームクリエーターという職業は人気が高いのに、おもちゃ開発者や、おもちゃクリエーターという仕事がランクインしているのを見たことがありません。Webで検索しても、おもちゃクリエーターという肩書きの人は僕自身しか発見することができず、少ない人種であることがわかります。世間的には、衰退産業ではないかと思われる節もあります(実は意外とそんなこともないんですが)。

便利が求められるIT時代に、手遊びする不必需品である「おもちゃ」。しかしながら、生まれた時から高齢になるまでの人生において時に重要な役割を果たす「おもちゃ」。このおもちゃ業界を活性化させ、持続させるために、若い世代でおもちゃクリエーターの人気が出て、おもちゃメーカーなどへの就職希望者が増えたらいいなーと思い、この記事を書きました。

ちなみにこの記事はとても長いですが、内容としてはめちゃくちゃ端折ってしまっています。現時点では特に「企画屋」として伝えたいポイントをメインに書いてみたので、遊びや面白いことを考えたい人の参考になれば嬉しいです。(随時内容をアップデートしていくつもりです。)

【この記事はこんな方におすすめです】
・玩具雑貨を作りたい人
・玩具/ゲーム/エンタメ業界も含めて就活中の大学生や、転職活動中の人
・人を楽しませる系の製品、サービスを企画開発したい人

【注意】
・この記事で書かれているのは、紙工作などの手作りおもちゃに関してではなく、広く市販される、いわゆる「量産品」に関してです。手作りおもちゃについて知りたい方は他の記事をお探しください。でも、手作りおもちゃ作りのヒントになるお話もあるかもしれません。
・開発手法の技術的な事に関しては書ききれておらず、主に、ものづくりの考え方と、重要な判断ポイントに関して述べています。技術のことが知りたい方は、他の記事を探してみてください。
・全体的に、個人の考え方によって構成された記事です。玩具開発者がすべてこの方法でおもちゃを作っているわけではありません。

おもちゃ製品を作る流れ

量産型のおもちゃ製品は、基本的に以下のような流れで作られます。

1.どんなおもちゃを作るか考える
2.原理試作と、デザインを作る
3.安全性を保って量産できるかを検討し、見積もりを取る
4.販売ルートに乗せ、お客さんに届ける

以下、順番に説明していきます。

1.どんなおもちゃを作るか考える

長い歴史の中には、実に様々なおもちゃがありますが、そもそもおもちゃのアイデアはどうやって考えるのでしょう。

まずその方法を一言で表現すると、以下のような言い方になると思っています。

自分が、その商品の購買ターゲット年齢の時に体験し、夢中を感じた行為や事象などを、「競争」「運」「模倣」「めまい」のいずれかの要素を盛り込んで代替表現する。

ちょっと難しいので、言い換えつつ順を追って説明していきます。

(1)まず誰をターゲットにした商品を作りたいか決める

僕の場合は、最初に年齢や性別など、どんな属性の人が遊ぶ商品を作りたいかを決めます。そして、自分がその年齢だった頃を思い出します。(性別が自分と違ったり、まだ達していない年齢の人をターゲットにしたりする場合は、その属性に当たる人と対話をする必要があります。)

(2)その年齢の時に体験し、夢中を感じた行為や事象を思い出して紙に書き連ねる

基本的に、自分が考えられるおもちゃ(面白い遊び)は、自分の実体験を元にしか作ることができません。ですので、例えば小学3年生をメインターゲットにするおもちゃを考える場合は、自分が小学3年生の時のことを一生懸命思い出すという作業が必要になります。例えば僕の場合、

・水戸黄門の印籠を手作りし、中にいろいろなものを入れていた。
・手ぬぐいの中にビー玉を仕込んで、いじめっ子に投げつける妄想をしていた。
・鬼が目隠しをして、狭い部屋の中でみんなを触ろうとする特殊な鬼ごっこを、いとこたちと延々やっていた。
・とてつもなく顕微鏡が欲しくて、キュリー夫人のように薬を発見したかった(薬発見してないと思うけど…)。
・テレビ番組の「ウルトラクイズ」に夢中になり、早押しボタンを押して難しい問題を素早く答えてみたかった。
・エジソンの伝記を読んで、モールス信号を打つくだりに以上に憧れて、やりたいと妄想していた。
・トランシーバーを木の穴に隠して、離れた所から、通りかかる人に話しかけて驚かせていた。

などなど…様々な季節や場所、風景を切り口に思い出していくと、いくらでも出てきます。思い出せない人は、写真を見返してみたり、当時の同級生や、同い年の友人と話してみたりすると、記憶が蘇ってくるかもしれません。

その体験の中で、なぜ、どこが一番夢中になる要因だったのかを言語化します。

(3)夢中になった感情を転用して、「競争」「運」「模倣」「めまい」のいずれかとして設計し、新しい遊びの形態を考える。

「競争」「運」「模倣」「めまい」は、カイヨワの『遊びと人間』でまとめられている遊びの4要素です。「めまい」とは、「わあっとなる、心が動く驚きや興奮、感動」と捉えていただけたら良いでしょう。この4要素を、複数組み合わせた体験設計が必要です。競争だけでも、運だけでも、遊びってつまらなくなりがちですよね。

例えば、上で箇条書きした自分の体験の中から「トランシーバーで木をしゃべらせること」に興奮した感情を材料として、遠隔でしゃべらせたり動かしたりして相手を驚かす「肝試しホビー」を作れるかもしれない、と想像します。この場合は、「めまい」の遊びとして設計を試みます。肝試しをやるという意味では「模倣」の要素もあるでしょう。

このようなアイデアは、様々な物事との組み合わせから生まれます。遠隔でしゃべって驚かせる(面白がらせる)×様々な物事、で、できるだけたくさんのアイデアを考えます。アイデアは質より量です。100案出して、そのうち1番良いと直感するアイデアを選び出せれば、1/100のアイデアを確実に手に入れられます。100個中1位のアイデアは、それだけでかなり良いアイデアです。量は確実に質につながります。

夢中という言葉の中には、「個人的欲求」も含まれます。その年齢の頃、「好きな異性に告白したかったなー」という記憶があるなら、心労なく告白できるおもちゃ、なども考えられるでしょう。もしかしたら、ライバルとの「競争」や、「運」の要素を入れれば、さらに面白いおもちゃとして成立させられるかもしれません。
ちなみに僕はずっと、「運動が得意になりたいなー、筋肉がついたらいいなー」と思って小学校時代を過ごしてきました。ですので、小学生向けの筋トレ遊びは今後作る予定です。これは僕にしか作れない、まさに「個人的欲求」を源泉にする商品です。

自身の夢中体験や個人的欲求を元に遊びを設計する理由は、リアルだからです。今の子供がターゲットなら、今の子供のカルチャーを調べた方が良いんじゃない? という疑問が聞こえてきそうですが、自分が夢中になったという事実がある体験を、その当人が作る方が、ハズレなく、人を楽しませる遊びを設計することができます。おそらくこれにはいろいろな方法がありますが、ここではすべての人が、自分だから作れるおもちゃを開発するための方法論としてこれをお薦めしておきます。

以上のようにして、企画のアイデアを考えます。

2.原理試作と、デザインを作る

こんなおもちゃが作りたいな、というアイデアが出たら、(会社の場合、決裁者の承認が必要だったりしますが、)試作屋さんとデザイナーさんにそれぞれ相談をします。遊びが面白いかを検証するための見た目や動作をイメージできる試作と、理想のデザインを検討するためのイラストを同時並行に用意することで、量産品のリアルな姿を創造していきます。

この作業は、正直、「試作屋さんとデザイナーさんをWebなどで探して、相談する」という説明になるのですが、この時の注意点を以下に挙げておきます。

・ものづくりが全く分からないデザイナー/イラストレーターの方は向いていません。出てきた絵が、作れるはずもない形状になったり、作ったらものすごく高額になりそうなものになったりして、結局すり合わせることができなくなります。
・工場での量産のことをイメージできない試作屋さんは向いていません。安全性や強度、コスト、材料などを無視しすぎると、面白くても「作れない」となり、徒労に終わることになるので、ある程度の現実性は必要です。まあ、最初から現実的に考えすぎても、面白くなくなるのですが…。

おもちゃ(プロダクト)のデザインや試作が得意な方はたくさんいます。そういう人とやれたら一番スムーズです。このフェーズでチームに入って調整をするのが僕(ウサギ)の仕事でもあります。

3.安全性を保って量産できるかを検討し、見積もりを取る

イラストと原理試作ができたら、量産メーカーさんに相談に行き、現実的に量産プロダクトにできるか、そして、作ったらいくらになるのか、を見積もりしてもらいます。
ここは、理想としては、先ほど「2.」で説明した、原理試作やイメージイラストと、並行して進められるのが良いです。折角試作やきれいなイラストまで用意したのに、「いやこれ作れないよ」ってなったら切なすぎるので。最近は、量産メーカーさんの中に、デザイナーさんも試作機能もあるところが増えてきたので、一社にお願いしてしまうという手もあります。※勿論、僕(ウサギ)にまとめさせるという手も。

で、もし、おもちゃクリエーターになりたいと思う方がいらっしゃるなら、最も難易度が高いのが、このフェーズです。

ここでお見積もりを頂いて、決めなければならない事。

・何個作るのか → たくさん作ると単価が安いけど在庫が重くなる。少なく作ると、単価が高くなる。
・どのくらい理想に近い仕様にまとめられるか → 往々にして、望み通りの仕様にすると仕入れ価格は高くなり、結果として高すぎる小売価格になるか、利益が全然取れなくなるか、ということになります。ただ、仕様を妥協して値段を下げることで、下手をすると商品の命を完全に奪ってしまうことになります。

この落としどころを決めることが、おもちゃクリエーターの最重要な仕事と言っても過言ではないでしょう。

いくら面白い企画を考えたところで、完成品が誰も求めていないと意味がありません。かといって、メーカーさんにわがままを言って、「仕様は叶えろ、そして安くしろ」と言ったらそんな奴はアウトです。ここで、どんな方法を使ったら、お客さんが喜んで買い、満足する仕様と価格にまとめられるかの知恵を、メーカーさんと一緒に出し合って、作り上げる人こそがクリエーターです。

特に重要なことを2つだけ書いていきます。

・パッケージを安易に妥協してはいけません。値段を下げたいときに、真っ先に選択肢として思い浮かべやすいのが、箱などのパッケージを安い素材にすることです。しかし、おもちゃは、買った時や開ける時が、実はワクワクの7割方を占めています。どこが商品の命なのかを見極めて、重要度が比較的低いところを捨てるしかありません。本当に難しいです。僕は今でも、ここが死ぬほど悩むところで、まだ上手くできているとは言えない部分です。
・メーカーさんがお見積もりをしてくれるその作業を無料で当たり前と思ってはいけません。本当に労力をかけて、工場とコミュニケーションをとりながら値段を検討してくださいます。適当に何回も見積もりをお願いしないで、敬意と感謝を決して忘れず、まずは、やるならこれで行こう、という意思を固めるための対話をして、見積もっていただきましょう。僕は見積もり作業も有料でやるくらいの方が、仕様・価格ともにいいものにまとまると思っています。

4.販売ルートに乗せ、お客さんに届ける

(一気に端折る感じになってしまいますが、)
そうして量産品が完成したら、どんな流通で売るか、どうやってPRするかを作戦立てて、あとはその商品を買ったら幸せになるお客さんに届けるという責任を果たすことです。

先ほどの「2.」「3.」に関わる話ですが、パッケージデザインは重要です。商品の顔ですから、商品名、キャッチコピー、質感、たたずまいなど、「買いたい」と思わせるパッケージデザインをして、素材を決めましょう。ここも難しいのですが、大事なポイントを2つ上げるとしたら、

(1)人に見せたりあげたりしたときに、すべらない(安いとか、ダサイとか思われない)ものにする
(2)オーラを出す ※曖昧な表現ですが、いろいろな売り場に行って、オーラがあって目に留まってしまうパッケージの要素を自分なりに言語化してみてください。素材、言葉、写真、イラスト、配色、ツヤ感… 何がオーラになっているでしょう。
※オーラが出ていても、すべるパッケージは、あります。

そして、その商品を、どんな店舗なら売れるかの親和性を「ターゲット年齢の時の自分なら(あるいは買ってあげる立場なら)、ここで買う」という視点で考え、商談をします。選択肢によってはネット販売のみ、とか、手売りのみ、とか、いろいろあります。どうやったらその商品はお客さんが買いやすいでしょう。商品の性質によってこれは千差万別です。

そしてPR。その商品には新規性があるか、社会的意義があるか、などを元に一番伝えたい見出しを考え、様々なマスメディアの記者さんや編集者の方に、新しくて面白い情報として提供しに行きましょう。(PRに関してはすごく詳しい本や記事があるので割愛しますが、すごく面白い活動ですので勉強してみてください。)
ただし、PRの事ばかり考えて、マスメディアウケはするけれど、誰も買わなくていい商品を生み出してはいけません。これも僕は過去に散々失敗したことです。


以上です。

どうでしょう。

長い文章でよくわからなかったかもしれません。この記事は少しずつ、より分かりやすいものにアップデートしていきたいと思います。

最後にメッセージです。玩具業界、人生一度は来てみてください。一緒に面白い商品を考えましょう。

おもちゃは人間にとって、なくてはならないものだから。

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