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山に登らない人が増えている

 昨日、秘書担当役員と二人で話をする機会があり、その中で、社内で進められている、最近の働き方改革について話題が及びました。

 人手不足の中で、少しでも優秀な人材を確保するため、子育てや介護など、さまざまな事情に配慮して、休暇を取りやすくしたり、働き方を自分でコントロールできるような仕組みが、ここ数年、導入されています。

 一方で、こうした社内制度の充実は、使える人と使えない人の格差を拡大し、職場内での静かな不満を招き、使えない人のモチベーションを下げ、結果的に職場全体の生産性を低下させている面があります。

 テレワークなども、本来は通勤時間を減らし、生産性を高めるのが目的なはずですが、現実は、会社全体の仕事のやり方やテレワーク前提に変容しきっていないことに加え、
仕事の多くがエッセンシャルでテレワークにより職場から戦力が切り離される分、出勤しているメンバーに、突発的な雑務系の業務の負荷がかかっており、
さらには、テレワークの成果をアウトプットで評価しにくい業務が多いこともあり、一部の人がフル活用し、その分の穴が開いて塞がらないという状況です。

 もちろん、個々の職場の管理職は、フル活用を志向する人に対しては、生産性が確保される前提で、テレワーク勤務をマネジメントしているわけですが、管理職自体が多忙になっていることや、プライベートを持ち出されると、機微の地雷原を突破してまで、コントロールすることは、信頼関係が相当程度ないと、パワハラ認定されてしまうことから、空気を読まずに押し切られれば、認めざるを得ないようです。

 結局、運用面の課題を置き去りにして、理念を先行して導入したのは良いのですが、運用はいつまでも追いつかず、その間に組織の弱体化を招いている面があります。

 処遇で差をつけることが、職場内の静かな不安を緩和するには一番手っ取り早いのですが、それはそれで、制度利用を妨げているようにも捉えられますし、今はよほどの処遇の差がつかないと、職責が重くなる幹部への昇進を望まない人が増えており、今はかなりの面で、個人のモチベーションに期待せざるを得ない状況にあります。

 幹部になることで、見えない世界が見える、このことが、立場が上がることで得られる、貴重な人生経験だと思いますが、山を登るには、ある程度の年数、待たなければならないため、コスパが悪いと考える人も多くなっており、景色を見るだけであれば、今はお手軽に手に入れられるし、山に登る労力を別なことに振り向ければ、もっと違う生き方を経験できる時代になっています。

 過去からのしがらみを背負う、伝統的な企業にとっては、人材確保と同様、人材の活用や登用も、難しい時代だなと思いますね。
 

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