当事者意識

 一緒に仕事をしていても、当事者意識を持って仕事をしている人と、そうでない人の、仕事の習熟スピードは全然違います。当事者意識を持つには、自分が営業で新商品のプレゼンをして、意思決定権者からの質疑に答える立場になったり、利害関係のある相手にとって都合の悪いことを伝えに行く役回りをしたりと、言ってみれば自分の後ろには壁しかない状況で、生殺与奪の権限を持つ相手からの問いかけに対して自在に応答したり、テンプレで説明するだけでは許されない相手の理解を得る、そういう場数を踏むことが不可欠です。カイシャから3人とか4人で出張して、自分たちの営業成績に重要な影響を与える商談に出席しても、最上位の人間以外は当事者意識は低く、どこか他人事になっていることが多いと思います。
 例えばプレゼン資料づくりを任せても、説明する人の立場に立っていない独りよがりのつくりになっていたり、特定の分野についての担当者であっても、あまり問題意識なく仕事しているので、商談相手からの「素朴な疑問」には答えられないことが多く、最上位の人間があらゆる角度から検証し、資料に死角はないか、冗長になり過ぎていないか、相手からはどんなことを問われるだろうかと真剣に考え、作業を任せる部下に的確に指示しないと、本番で総崩れになります。時間がなければ自分で調べて補うこともあるでしょう。
 もちろん、こうした準備の多くは本番では使わないのですが、そうやって当事者意識を持って対策を立てることで、周辺知識を幅広く習得し、自分の中により多くの抽斗を持つことになり、即応が求められる局面での対応スキルが上がっていきます。そう考えると、当事者意識なく1つ1つのイベントを乗り切るということは、RPGゲームで強敵モンスターに出会いながら馬車の中にいるようなもので、ゲームであれば経験値もたまるでしょうが、実社会では経験値を得ることができません。様々な場面で、それこそ転戦を重ねながら、その場その場で責任者として、当事者意識を持って対応しなければならないことは、しんどいことではありますが、キャリアに応じた職責を担うには、必要なことだと肝に銘じ、健やかな心身を保ちつつ、責任を果たしていきたいと思います。

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