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K-POPのデザイン13: 概論B

前回の概論で収まらなかった雑記などをまとめて放出する。全て断言できるような考察ではないので、よもやま話としてどうぞ。

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オランダ起源

大学でデザインを教えている知り合いと、これまで書いたnoteの内容について話したところ、以下のような見解を得た。

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韓国を代表するデザイナー ナ・キム はオランダのデザイン学校Werkplaats Typografieで カレル・マルテンス に師事していたはず。彼女がADをしていた「GRAPHIC magazine」は日本でもよく見かけました。彼女を筆頭に韓国のデザインはかなりオランダに傾倒してると聞きます。たぶん文字としてのハングルが西欧の文化と結びつきやすかったからでしょう。

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K-POPに関しては、色彩の傾向含めオランダに影響を受けた韓国デザインが、米国志向のエンタメ業界にじわじわ浸透していく過程で、それでもなお東洋的なエキゾチズムが残ってる感じがします。未だにプロダクトのもりもりの感じもやはりアジア的としか言いようがないですよね。

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ハングル文字

前述の通りハングル文字もデザインの自由度に貢献している。韓国語自体は文法など言語的には日本語に近い言語であるが、ハングル文字をグラフィック要素として評価した場合、それぞれがジオメトリックな形状の組み合わせである点に加え、文字ごとの濃度が均等なため、アルファベットに似た感覚で文字を扱うことができるし、大味なレイアウトにも無理がない。

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これが日本語の場合だと、仮名の形状が豊富でコントロールが難しい上に、仮名と漢字との濃度が大きく異なる。そのためグリッドシステムに則ったり箱組みとして定着させざるを得ない場合は多い。そしてアルファベットで成立しているレイアウトを日本語にすると、途端にダサくなるという現状にも関係している(もちろん我々が日本語を意味を持って理解してしまうからという要因も否めないわけだが)

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相場と慣習

韓国は印刷費用の相場が日本とかなり違うのであれだけ分厚くてリッチなパッケージも現地価格2000円程度に抑えられているのだという。年末の大規模な歌謡祭の会場設営費についても同じことが言えるため、あの豪華なステージがいくつも開催できるわけだ。それ故にステージの設営の甘さや昨年末のWendyのような壇上アクシデントで今でも改善されない部分がある。

ティーザービジュアルや動画について、日本アイドルのデザインを担当する知人によると、日本では事務所とレーベルの事前の確認事項がMV以上に増えるという空気が慣習化してしまって、費用対効果を考慮しても海外思考なアーティストでない限り未だに力を入れているところはほぼ無いらしい。

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日本のアイドルデザイン

規模感や知名度など含めその中でも最大だったのは、未だに20年前の佐藤可士和氏によるSMAP10周年のキャンペーン展開なのかもしれない。

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マス広告がまだ元気だった当時の日本で、インターネットの力に依存せずこの功績をアイドル業界に残したは大きい。一方でYoutubeやSNSの台頭などに上手く乗り切れず、アイドル業界全体としてこの前例を次の20年に繋げられなかったことは対照的にも思える。さらに佐藤氏はあくまで外部としてのアートディレクターであり、K-POPのようにレーベル・芸能事務所の中からクリエイティブを変える存在というのは未だにいない気がする。

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こう書くと、読んだ人の中には日本にも秀逸な事例がたくさんあると指摘したい人もいるだろうし、私も日本のアイドルデザインについて語れるほど見てきてない。しかし、優れたデザイン以上のひとつの「優れた様式(ジャンルとも言える)」にまでなったものはやはり少ないのではないか。

あるとしたら、乃木坂のステージ衣装、欅坂のタイトルカリグラフィー、アニメーターすしお氏のアイドルイラストレーション、あたりはアイドルデザインにおいてジャンルをちゃんと生んだのだと思う。さらに欅坂のタイトルにおいて言えば制作者の来休東京氏は当時ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(SMC)所属だったので、坂道グループと版元であるソニー・ミュージック傘下という関係性によって、現状日本国内でいちばん成功例が多いのは理解できる。

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多様性と成熟

では「日本の音楽業界も韓国のように世界を狙える可能性はあるか」その問いについて、2018年に放送されたNHKクローズアップ現代のK-POP特集で韓国大衆文化ジャーナリスト古家正亨氏は、韓国国内の音楽分野の多様性について指摘しながら以下のように述べた。

韓国のアーティストや関係者に日本の音楽業界の話をすると、口をそろえて「日本の音楽市場の多様性は本当羨ましい」って言うんですね。ロック、ジャズ、ダンス、クラシック、アニメ、サントラ、そしてアイドルとそれぞれの市場がしっかり確立されていて、そして聴く人もリスナーも多いと。
韓国の音楽界っていうのは実はアイドル市場がいま大多数を占めてしまっていて、ちょっと偏り過ぎてしまっています。そこは日本から学ぶべきところが非常に多いし、日本ももしかすると、そういった日本の音楽市場の良さを生かして世界へとアプローチする、いくらでもそういった世界への可能性っていうのはあると思うんですよね。

こうなるとアイドルのクリエイティブにおいても、結局ジャパニーズ・ホラー映画などと同じように、ある特定の枝の文化で熱狂的な人気と評価を得るという感じなのなと思ってしまう。その点だけでいえばニッチで凝った事に挑戦できる光脈のように感じる。

しかし、前述のティーザーの箇所で慣習化と書いたように、K-POPよりも長い歴史ゆえに成熟ではなく単にアップデートされない部分が混在している面がもあるだろう。古家氏の指摘は、日本の音楽シーンが内需だけで成立してしまう人口と市場を過去に持っていたことによる、恩恵と弊害の両面を表しているように思えた。

3社のクリエイティブへの姿勢を紹介してきた後でこの議題に向き合うと、いまBigHitとBTSがK-POPを世界におけるネクストレベルまで押し上げているなかで、その昔イスマン氏が日本のアイドル文化を見て韓国に持ち帰りSMを設立したようなパラダイムシフトが必要で、それをNiziUを通してJYPとパクジニョン氏がもたらそうとしているのかもしれない。そして、それをアイドル業界に限らず日本の音楽シーンが吸収することが出来るのか。

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次回

K-POPファンダムとBlack Lives Matter


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