しま・しましま

しま・しましまという名前で短歌やってます。 未来短歌会 草影集にいます。 別の名前で俳…

しま・しましま

しま・しましまという名前で短歌やってます。 未来短歌会 草影集にいます。 別の名前で俳句やってます。 俳句結社出雲に所属してます。

最近の記事

大須賀乙字という俳人 12

12月号 寒雷忌  大正8年10月20日、戸隠山から帰った乙字は、風邪気味ですこし熱があった。その一週間後、大阪から春山武松が上京するというので、文人仲間らと歓迎会を行っている。この会に参加した文人仲間は、岩野泡鳴、織田一磨、室生犀星、岡本かの子など、当時岩野泡鳴が主宰していた十日会のメンバーが主だった。よほど楽しかったのだろう。その晩乙字は誰よりもはしゃいで、最後まで残っていたという。自宅に戻った時には深夜3時になっていた。改めて風邪を引きなおしたということだろう

    • 大須賀乙字という俳人 11

      11月号 火遊びの我れ一人ゐしは枯野かな 「乙字の乙は一であって孤立の気象がある」  大阪で初対面の人にこう言われて、大須賀乙字は 「何かしら骨身にこたへました」 と、大正六年の臼田亜浪への手紙に書いている。  実際、乙字は俳句の信念において、孤立の道を歩んだ人物である。   火遊びの我れ一人ゐしは枯野かな  乙字の俳句の中でも代表的なものの一つである。 「こういう叙景ではない抒情的の句は多く作るものではない」 といいつつ、乙字自身もこの句が気に入っていて、この句の染筆

      • 大須賀乙字という俳人 10

        10月号 妙高の雲動かねど秋の風  大須賀乙字の最後の俳論は「仰臥漫筆」という。これは旅行吟について書いたもので、旅行吟の特色は大観にあることを力説している。「その時その場に適切な感じ、感想で動かし難いという点がありたい」という。振り返って、乙字自身の句について見ても、旅吟に秀句が多いように思える。  大正8年2月、乙字は、門下の争いや愛児の死など、複合的な理由から臼田亜浪の「石楠」から身を引いた。それが関係あるのかどうかは不明だが、この年はいつになく旅行が多かった。

        • 大須賀乙字という俳人 9

          9月号 雁鳴いて大粒な雨落しけり   雁鳴いて大粒な雨落しけり 大須賀乙字  明治37年、乙字24歳の句である。晩秋北から渡ってきた雁の声を聞いて、思わず頭をあげると、一、二滴の雨が落ちたという景を詠んだもの。 「雁其物よりも雁来る頃の気象に包まれた気分を詠んだ」と乙字本人は言っているが、折から降り始めた雨の「大粒な」という把握に実景が浮かんで来る。   西ゆ北へ雲の長さや夕蜻蛉  大正4年の作。 「西ゆ北へ」の「ゆ」は「より」「から」という意味の古語である。つまり

        大須賀乙字という俳人 12

          大須賀乙字という俳人 8

          8月号 山雲を谷に呼ぶなり閑古鳥   雲樹寺の木々雫して砂涼し 大須賀乙字  大正6年7月28日、大須賀乙字は能義郡赤江村に広江八重桜を訪ねている。八重桜は、乙字よりも前から「日本俳句」に投句をしていた河東碧梧桐の弟子の一人である。師である碧梧桐と共に「層雲」「海紅」と移っていったが、この頃から八重桜はほとんど投句をしていない。乙字が会いに行った時も「方角がわからなくなりました」と言っている。明治の末に碧梧桐が出雲地方に訪れた後、この地方でもどっと増えた新傾向派だっ

          大須賀乙字という俳人 8

          大須賀乙字という俳人 7

          今回と、あらかじめ言っておきますが次の回は、大須賀乙字が出雲旅行をした際の話で、この連載が掲載された俳句誌「出雲」用という感じなので、もしかしたらあまり興味がないかも。 なのでちょっとおまけの乙字関連のエピソードをつけておきます。 乙字は俳壇の人だけではなく、文壇、歌壇の人とも親交がありました。例えば小説家の岩野泡鳴。泡鳴は当時十日会という集まりを主催していて、乙字もこの会のメンバーでした。芥川龍之介が歌人の秀しげ子と出会ったのもこの会だったとか。 そして、この会に関連する

          大須賀乙字という俳人 7

          大須賀乙字という俳人 6

          6月号 嵐気動く奥は蝉声晴れてあり   蛇逃げて我を見し眼の草に残る 高浜虚子  これは大正六年五月十三日、発行所例会にて出句された虚子の句である。後に句集「五百句」に収録され、その詞書に「十六日、坂本四方太、中川四明、日を同じうして逝く」とあると、稲畑汀子著「虚子百句」に書かれている。この虚子の句、実は乙字に関する面白いエピソードが残っている。それは翌月五日、ホトトギスで当時行われていた月並研究の会での事である。その日たまたま坂本四方太の遺族のことでホトトギス発行

          大須賀乙字という俳人 6

          大須賀乙字という俳人 5

          5月号 鬼栖めば花赤き島霞みけり 大須賀乙字   鬼栖めば花赤き島霞みけり  鬼が栖むという伝説のある島がある。何の花だろうか、一際明るく赤い花が咲いているのが、霞の中に浮かぶ島に見える。鬼が栖むから花が赤いのか、鬼が栖むから霞むのか。「霞みけり」にどことなく優しい叙情が感じられる。  乙字の句としては珍しい幻想的な物語性のある作品である。明治四十二年の龍眠会例会の折に「霞」の題で出した句だという。同時出句に 「砂金掘渡るとも聞く島霞む」 などがある。こちらも多分に

          大須賀乙字という俳人 5

          大須賀乙字という俳人 4

          4月号 野遊や肱つく草の日の匂ひ 大須賀乙字   野遊や肱つく草の日の匂ひ  明治四十年の作。乙字は二十五歳で、東京帝国大学に在学中だった。大学進学の為に東京へ出て来てすぐに河東碧梧桐に師事し、小澤碧堂、喜谷六花と共に碧門の三羽烏と呼ばれる程に碧梧桐に陶酔していた頃の句である。掲句の情景も、碧門の仲間と出かけた野遊びだろうか。草の上に寝そべって、ついた肱の辺りの草に日の匂いがしたという。衒いの無い若々しさが眩しい程である。   杏咲く里々や鳥雲に入る  この句は、そ

          大須賀乙字という俳人 4

          大須賀乙字という俳人 3

          3月号 比良一帯の大雪となり春の雷 乙字   比良一帯の大雪となり春の雷  大正八年の作、大須賀乙字の晩年にあたる頃の句である。比良一帯とは、近江の比良山の一帯のこと。比良山は「比良八荒」といって、三月中旬に寒の戻りがあるのだという。それが、思いもよらぬ程の大雪となってしまったのかも知れない。そこに時折雷鳴がとどろく。「比良一帯の大雪となり」と一気に詠んで、景の大きさと、自然の力の激しさを鮮明に表している。   風ゆれの樹の音もいとゞ冴え返る  これも同じく大正八年

          大須賀乙字という俳人 3

          大須賀乙字という俳人 2

          2月号 大欠伸する魚飼うて冬ごもり 乙字   大欠伸する魚飼うて冬ごもり  大正七年正月に酒の席で臼田亜浪の義弟に短冊を頼まれて書いた、即興の句ということである。この「大欠伸する魚」というのが、先月書いた出雲から届いた山椒魚のこと。現在天然記念物に指定されているオオサンショウウオである。  「冬ごもり座敷に鯢魚飼ひにけり」「冬眠の鯢魚息吐く夜は長し」などという句も残っている。「鯢魚」は山椒魚のことで、「ゲイギョ」とも「はんざき」とも読む。  この山椒魚が夜中になると、

          大須賀乙字という俳人 2

          大須賀乙字という俳人 1

          この記事は、ずいぶん前にわたしの所属する俳句結社で1年間連載していたものに、ほんの少しだけ手を入れたものです。  記事で取り上げている大須賀乙字(おおすがおつじ)は、明治後期から大正にかけて活躍した俳人。  東京帝国大学時代に河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)に師事し、のちに碧梧桐が新傾向俳句の道に進むきっかけを作った人物。でもあるんですが、乙字自身はその新傾向俳句にはずっと異議を唱えていました。  碧梧桐と袂を分かったあと、臼田亜浪(うすだあろう)と共に「石楠」を創刊します

          大須賀乙字という俳人 1

          眺めてすごす

          眺めてすごす      しま・しましま わたしでなければいけない訳ではないだろうが求められればうれしい 差し出す 受け取ってしまったレシートで爪をみがく見えるきれいは大切だから いますぐにつよくなりたいカフェオレ味のビスコやわらかくやさしいあまさ そうか君はそういうやつだったんだなと言えばくすぐったそうに君はわらった 先に泣いた方が勝ちだよ天才子役の演技バトルのような愛だよ 冬の日はすぐにかたむき荒涼とベッドの上の影を濃くした 鏡の気持ちはわからないけど鏡を見れ

          眺めてすごす

          はまぐりのひらくまで

          春の俳句を五十句つくったので、その半分の二十五句を自選してみました。 だいたいいつも同じ季語しか使わないので、そのあたりなんとかしたいなと思いつつ、結局使い慣れない言葉を一句の中で浮かないように使うのは難しくて。 はまぐりのひらくまで              しま みづうみに影をぽつりと雛飾る ひる過ぎのあくびはふたつさくら貝 蛤のひらくまで夢を同期せよ 湯に塩をうちてふつふつ猫の恋 いぬふぐりかはりに泣いてくれないか 歌舞伎揚ざくざく噛んであたたかし 末黒野にまくらを

          はまぐりのひらくまで

          句会のやり方(ウチはこんな感じ)4

          選句、披講が終わったら、次は感想戦。 参加者全員が、順番に自分の選んだ俳句ひとつひとつについて感想を発表します。 ここがよかった、 こういう感じかなと思った とか、なんでもいい。ひとことずつでも、あつく語ってもいい。ただし、自分が選んだ俳句についてのみ。 時間がない場合は選んだ全部ではなくて、特選に選んだ俳句についてのみ、ということもあります。 誰にも選ばれなかった句は、誰にも何も言われない訳なんですが、 「この句についてなんですけど……」 って句会後に個人的に聞いてみたり

          句会のやり方(ウチはこんな感じ)4

          句会のやり方(ウチはこんな感じ)3

          清記用紙に並んだ俳句から、自分がいいと思った句(自作以外)を選句用紙などに書き抜いておきます。一句まるまる、略さずに、あとで人が読むのでそれを念頭に置いて。 一枚分が終わったら、今度は反時計回りに清記用紙を回していきます。 (ここで持参したノートなどに、全部の俳句を書き写す人がたまーにいるんですが、清記用紙が回るのが遅くなるのでオススメしません) 自分の振った番号から始まって、番号順に選句していって自分が清書した用紙が戻ってきたら終わり。 ざっと選んだ俳句から、規定の数に厳選

          句会のやり方(ウチはこんな感じ)3