そうだ、京都にいこう

日が暮れてから、こちらが気づかないうちに、父が家を出てしまった。自転車で探しに行き、見つけたものの、帰ろうよ、と言うと「僕は家に帰るから」と家とは違う方向へ行く。仕方ないので、回り道をし、ばったり会った風を装い、
「やあ、お父さんやん、今うち仕事帰りやねん、ただいま。迎えに来てくれたん?ありがとう。一緒に行こう。今日仕事でななんたらかんたら」
と父をこちらのペースに入れ、帰宅したら、母が父を探しにいきおらず、母のいないことを気づいた父は、
「おかあさん、探してくる」とまた家から出ようとするので、
「おとうさん、入れ歯洗うから取って」
と注意をそらし、そのまま歯磨きをさせ、寝巻きに着替えさせ、布団に寝かせたら、すぐ寝た。少しして母が帰宅した。
次の日、母が父に、「どこにいこうとしてたの?」
と聞くと、父は「京都」と答えた。
旅芸人のつもりだったのかもしれない。

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