我が麗しの貴婦人

 コラムです。

「マイフェアレディ」という言葉について調べていたんですけど。

 これはそんなに一般的な言い回しではなくて、言うなれば「君の名は。」みたいな感じで元ネタがあって有名な言葉みたいですね。

「マイフェアレディ」で検索すると大まかに引っかかるのは映画と歌。
 舞台原作のミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』と、イギリスの童謡『ロンドン橋落ちた』の歌詞です。
 どちらもとても有名ですね。

『ロンドン橋落ちた』は、詳しい歌詞はぜひ調べてみてほしいのですが、自分の知っている訳だと、〆の言葉が、

「さあどうしましょう」

 となっています。それが元々の言葉だと、

「マイフェアレディ」

 となっています。

 ちなみに「ロンドン橋落ちた……」の後は、

「木と泥で作れ→木と泥は流れる」
「石とモルタルで作れ→石とモルタルは崩れる」
「鉄と鋼で作れ→鉄と鋼は曲がる」
「銀と金で作れ→銀と金は盗まれる」
「寝ずの番を置こう」

 というふうになります(もっと長いバージョンもある)。

 この唐突に出てくる「マイフェアレディ」は何なのかというのは謎が多くいろいろな説があるそうです。
 元々の歌詞は「レディ・リー」で、後世に「マイフェアレディ」に変わったとされます。
「ロンドン橋落ちる、踊って越えよ、レディ・リー」という感じで。

 ではこのレディ・リーは誰なのか? 家を建て替えるときにあれこれ注文を付けたリー家の婦人だとか、橋の建設責任者の王妃だとか、橋の収益への責任を持っていたエリナー妃だとか、はたまたリー川という川そのもののことだとか。さまざまな説があるそうです。
 リー家の夫人は工事中に人を埋めたとか、王妃は橋にさらし首をしていたとか、それらを皮肉った歌だという黒い解釈がされています。

 私はこれが何かを暗喩しているとか、そんな深い意味はないんじゃないかなーと思います。
「踊って越えよ」って、ちゃかしていて楽しそうだし、単純に「さあさあ橋が落ちるから急いで渡っちゃってよお嬢さん♪」と囃し立てているだけなんじゃないかと。「リー」という名前も、この歌詞ができた当初に有名だったとか一般的だった婦人の名前だとか、そういう他愛のないものなんじゃないかと思います。

「マイフェアレディ」についても、橋を建てるときに人柱にされた女性を指している、ロンドン橋落ちたの遊びは人柱選びを示しているといった解釈があります。
 その解釈も面白いですが、私は別の方向で考えています。

 その話をする上で大切なのが映画『マイフェアレディ』です。
 この映画では下町の花売り娘が教授から教育を施されて上流階級顔負けのレディになっていく様子を描いています。
 タイトルの由来は「ロンドン橋落ちた」から来ているそうです。
 ロンドン橋が泥の橋から金の橋へと綺麗に変わっていく様にかけているのだとか。
 非常に素敵な発想だと思いました。

 私はこれを知って、「マイフェアレディって、実在の貴婦人の名前でも、川の名前でもなく、ロンドン橋そのもののことなんだ」と思いました。
 まさに映画通りの解釈で。ロンドン橋を試行錯誤してどんどん美しく立派に変えていって、しまいには誰かに盗られないように番までつけるようになるとね。
 そう思うと、なんとなく不気味さのあった歌がすごく洒落た素敵な歌だと感じます。
 まあ、毎回、落ちるのが縁起が悪くてやっぱり不気味ですが(笑)。

 ちなみに、ロンドン橋は何度も架け替えが行われています。最新の橋になる前の橋は、取り外されて今はアメリカにあるそうです。
 そこまで付け足された歌では、

 アメリカ人が持ってった~ さあどうしましょう(マイフェアレディ)♪

 となるようです(Oh……)。

 実際のところはどうなのかわかりませんが(単に歌いながら近くのお嬢さんに話しかけているようにも思いますし)、「マイフェアレディ=ロンドン橋」説を自分は推したいです。

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