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僕と車(トラック)と膝枕 Ⅱ

チャっチャチャチャラン~♪

《前回のあらすじ》
調子よく、お金の力で自分の理想の愛の巣(トラック)を手に入れた僕は、
試運転の為に浦安方面に、膝枕ちゃんと愛の逃避行を図った。
そんなおり、浦安のコンビニで胸の大きな女「ヒサコ」に、ヒッチハイクを頼まれ、下心丸出しで後先考えず、了承をしてしまったのであった。


「あの、どうしても今日中に所沢に行きたいのです。」
彼女の言葉に安易に同意してしまった僕は、彼女を同乗させることにした。

彼女を助手席に乗せる、大型トラックをベースに作られた相棒は、車高も高く、女性が乗り込むには一苦労である。
僕は、後ろから体を支え乗り込ませた、ヒサコの体は柔らかくも張りのある体をしていた。
さわり心地が、覚えのある感触をしていたがすぐには思い出せなかった。

僕は手の感触を噛みしめながらも、運転席に戻った。
ドアを開け、ボディーに手をかけ慣れた動作で運転席に乗り込む、その時、大切なことを思い出し我に返った。
僕の車内には、膝枕ちゃんが待っていてくれいる事を・・・

僕は慌てて、言い訳を考える、この状況をどう説明すればよいのか?
もう遅い。すでに見られてしまった、きっと変な奴だと思われてしまった。
安易に承諾しなければよかった、普段のスケベ心が・・・
社会的に終わった、通報されると。
「あの~、ヒサコさんこれはですね・・・。そのー、何んと言いますか・・・。誤解しないでくださいね。」

僕は言い訳にならない、言い訳をまくしたてながら、ヒサコを見た。
「誤解を・・・しないで・・・下さい・・・。」
そんな、僕の目に飛び込んだのは、車内の状況を見ても何も気にしていない様子のヒサコの姿だった、それどこか僕の膝枕ちゃんと会話をしていた。
「どうされました?」冷静な彼女から逆に質問をされてしまった。
「いえ、別に・・・大きいわりに狭い車内ですが、ゆっくりしてください。」
その場を取り繕うような、何でもない会話しか出てこない。
「はい、ありがとうございます」

ヒサ子は礼を言いつつも、目は膝枕ちゃんを見つめていた。
「へー、そうなの。素敵な彼氏なのね・・・」
膝枕ちゃんも震える。会話が成立しているように見える。
「えーっ、そうなの?半年近く一緒にいるのにまだ名前を付けてもらってないの?」
「・・・」
「それはひどいよね、ピ○チュウだからピ○チュウって呼ぶみたいなものね、ポ○モンじゃないぞって言ってやんな。フフフ」
ヒサ子は膝枕と会話をしている?僕は動くことも忘れその状況にくぎ付けになった。

「あの~何か?気になることでも?」
「いや、ヒサコさん、今、膝枕ちゃんと会話を・・・」
しばしの沈黙・・・。
「はい、えっ?会話しますよね?貴方が良く話しかけてくれるんだって彼女も言ってますし。」
「あは・・・そうですよね、普通ですよね。アハハ!」
膝枕ちゃんの言葉が彼女には聞こえて、自分に聞こえないこの状況が悔しくって、僕はつい会話が通じるふりをしてしまった。

日もすっかり暮れ、少しづつ星が見えてきた。きれいに並んだ街灯の中を、僕たちは所沢に向けてゆっくりと走り出した。車内では、長い沈黙が続いた。時々膝枕ちゃんが震えて、ヒサ子が笑いかける。

オフィスビルの窓の明かりを縫うようにして、首都高速道路を一路埼玉へ向かう。東京ドームの横を通過して、飯田橋の手前で渋滞につかまり、ゆっくりとした流れになる。首都高速の光の帯を見ながら、
ヒサ子は、ぽつぽつと自分の事を話し始めた。とある事情で育ての親の元を離れた、幼い頃の記憶は無くて、知人のいない土地当て所なくさまよっていると、膝枕ちゃんに呼ばれた気がして僕に声を掛けたとのこと。

財布もなく、携帯電話も持たず。
今のご時世とんでもない話である、ただ名前をヒサコと呼ばれていた記憶しかないとの事。日常会話はTVを見て覚えたとのことだった。

「実は、行先は所沢でなくっても何処でもよかったんです。このままじゃ駄目なんだって、あの人の所に居ては・・・。」
再び、長い沈黙が訪れる。板橋ジャンクションを通過するころには、渋滞も解消して速度も乗ってきた。
高いビルも見えなくなり、低い住宅の明かりがちりばめられていた。

僕は意を決して、ヒサ子に伝える。
「あのさ、良かったら、もしよかったらだよ。行くところなかったら、うちに来ない?
膝枕ちゃんもさ、せっかく知り合えて、わかれるの寂しいって言ってるし。」
「・・・。」
「僕さ、実は膝枕ちゃんの言葉が聞こえないんだよね。良ければさ、膝枕ちゃんと話すコツ?そうそう、膝枕ちゃんと会話する方法を教えてもらいたいんだよね。」
「いいんですか?」
「僕さ、青森から出てきて、古いけど一軒家借りてて部屋余ってるしさ、遠慮することないよ、縁は異なもの味なものって言うじゃない。ハハハ」
ヒサ子は少しためらいつつも返事を返した。
「よろしくお願いします。」

所沢に戻り、駐車場に新しい相棒を駐車すると、もう通勤用の愛車となっている、アルファードに乗り換えると自宅に帰った。

その日から、3人での暮らしが始まった。
最初は遠慮がちだったヒサ子も、この頃は膝枕ちゃんと姉妹の様に明るくなって、笑顔を見せてくれるようになった。しっかりした外見に見合わず、意外と社会的常識に疎いところが多い。

彼女は、僕の専門学校時代の先輩の紹介で、短時間のアルバイトから始めることにした。
「ムリに働く事は無い」
と言ったが、どうしてもと言うので好きにさせた。

僕はと言うと、いまだに膝枕ちゃんの言葉は聞こえず、でも毎日一緒に通勤をして、一緒にトラックに乗って、色んな街や村々を回っている。

いまだに、膝枕ちゃんの名前は決まっていない。

この続きは、また別の話で。


あれ?エンディングが違うぞ・・・
結末を焦っているようにしか、見えない。
何かあるでしょう?ボキャブラリーがないのは仕方がないけど、
これで、めでたしめでたしでは出来の悪い昔話だよね。
読者は、こんなの期待してないよね?
ヒサ子正体は実は、とか。ヒサコの元カレが出てきたりとか?

あと一つくらい何かないと、みんな納得しないって・・・
やめちゃうの?

残念だよ。


このお話は、脚本家 今井雅子氏の「膝枕」と言うお話を、オマージュさせて頂いております。
プロ・アマ問わずみんなで読みつないでいこうぜと言う企画から始まりました。clubhouseと言うSNSで色んな人が色んな形で毎日、何らかの形で読んでおります。

かく言う私も、120とも130とも言われる外伝に加担させていただいております。現在では外伝が外伝を呼び、収集付かない形になってきておりまして、
毎日、飽きずに読むことができるようになっております。

読まれた方の中には、何んとなく気づかれた方もいるのでは無いかななんて、気づいて欲しいななんて思いつつも。

役者でもナレーターでもある、河崎 卓也氏の「膝枕」外伝「僕のヒサコ」の外伝となっておりまして、外伝の外伝なんてね、ややこしい状態になっておりますが、こちらも併せてお読みいただくと、皆さんのすごさが判るのではないかと思われます。

稚拙な文章で申し訳ありません、最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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