後悔しないために選んだ道。その先にあった心温まる世界。
「子どもがほしい。」
そう思ったことは一度もなかった。
大人になっても、結婚しても。
子どもがいる友人の口からは、
子育ての苦労話しかでてこないし、
スーパーでは子どもが理不尽にギャン泣きしているし。
教育費は1,000万円もかかるらしいし。
なにより“命”に責任をもてる気がしなかった。
親という“責任”が、怖かったんです。
だから、ずっと子どもを避けてきました。
でも、いま、私の腕の中には、
ふわふわの赤ちゃんが、
指しゃぶりをしながら眠っています。
今の時代、子どもがいなくても楽しく生きていける。
むしろ、子どもがいなければ、趣味も仕事も
住むところだって自由に選べる。
でも、私が子どものいる人生を選んだのは…
後悔したくなかったから。
「もし、明日死ぬとして、
あなたは何を後悔しますか?」
ある本でこのような一文がありました。
私は自分に問いました。
すると、ふと出てきた後悔は
「夫を父親にしてあげられなかったこと。」
でした。
夫は面倒見がよく、子どものいる家庭を望んでいましたが、
私の気持ちを配慮して、「子どもがほしい。」
とは言いませんでした。
そんな心優しい夫は、きっといい父親になるだろう。
私ひとりで育てるわけじゃない。
二人で一緒に子育てしながら、
三人で旅行や趣味も楽しめばいい。
子どもが見せてくれる新しい世界には、
きっとステキな出会いが待っている。
そう前向きに考えられるようになりました。
そして、今まで重くのしかかっていた不安は
シャボン玉のようにふわふわと飛んで消えていきました。
そして、決心したのです。
子どもがいる人生を。
ただ、子どもがほしいと思っても、
そう簡単にはいきませんでした。
婦人科の先生には、年齢的に考えると
不妊治療の段階を進めるよう言われましたが、
そこまで積極的になれず。
まずはタイミング療法を始めてみました。
検査もして、卵管を広げる治療をしました。
(これがもう、大暴れの末ギブアップするほど痛かった。)
たくさんの人で、何時間も待つ婦人科。
頻繁に通っているうちに、先の見えないこの道が
つらくなってきました。
(私なんて、まだ始めたばっかなのに。)
頑張らなきゃと思うほど、プレッシャーになり
病院へ行くのが嫌になって、夫に話をしました。
自然とあふれてくる涙を見た夫は、
「つらいなら、やめてもいいんだよ。」
と、優しく言ってくれました。
仕事が忙しかったこともあり、
少し病院をお休みすることにしました。
そんなある日。
小さな小さな命が宿ったのです。
それはまるで
「ちょっとお仕事休んで、
新しい世界を見てみない?」
と、産まれてくる子に言われたようでした。
妊娠が分かったとき、
夫は満面の笑みでよろこんでくれました。
それが素直にうれしかったのです。
妊娠中も、夫は過保護なまでに心配して
家事や仕事の送り迎えをしてくれて、
無事に十月十日が過ぎました。
そして、出産予定日の前日。
おなかの中で立派に育った赤ちゃんは、
大きな産声をあげて、元気いっぱいに産まれてきてくれました。
親としての責任を考えると、
今も不安や悩みは尽きないけど、
必死に生きようとする生命力に満ちた息子は、
ただただ、無条件にかわいくて、愛おしい。
今まで経験したことのない感情をくすぐられます。
私と夫だけでなく、
私の両親も、義母も、祖父母も、友人も、近所のおばあちゃんも…
たくさんの人が息子を見て
「かわいいねえ。」と笑顔になる。
その笑顔を見るたびに、
「子どものいる人生を選んでよかった。」と思うのです。
みんなを幸せな気持ちにしてくれて
ありがとう。
これからいろいろな壁にぶち当たると思いますが
子育てで生まれる出会いや経験を楽しんで、
息子とともに成長していきたいと思います。
大切な日々を、後悔のないように。