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大事なものを大事にする #メタモルフォーゼの縁側

原作:鶴谷香央理
監督:狩山俊輔
脚本:岡本恵和

🎐ネタバレあり感想🎐

前置き

だいすきな友達が、とても良かったよ〜!!て
おすすめしてくれた作品

速攻で上映館調べたけど安定の田舎具合で、
県内で1つしかなかった高速に乗って行ってきた


素敵な映画を教えてくれてありがとう…!
改めて、この場で感謝の念を送ります…………🙏

日常の温度感、優しい世界

何よりも、何よりもすきだったのは、
この作品1本通して、 
誰ひとりとして"敵役"という存在が居なかったこと

イケメンな幼馴染が登場したときも、
クラスのカースト上位女子が登場したときも、
雪さんの娘さんが登場したときも、
誰かが!うららちゃんを傷つけるような言葉を
吐くんじゃないか!と新しい出会いの度に、心底
張り詰めて観てたけど、居なかった

この物語において常に主人公が向き合うのは"自分"
でずっとそれが一貫していたのが、すきだった

雨模様と人間模様

うららちゃんと雪さんが初めて喫茶店で
自己紹介するところで "晴れてる人と降ってる人 "
ていう表現がとても詩的で素敵だなと思った
後にある、うららさんも漫画描いてみたら?て
雪さんが言った後に帰宅するシーン雨が"降ってる"

雪さんがうららちゃんの後押ししてるみたいで
優しい表現だなあ…と勝手に解釈してにこにこした

この作品内で何度か雨のシーンがあるけど、
最初の方にこの"晴れてる人と降ってる人"のセリフが
入ってることで、登場人物の情景描写としての雨
とは別にこういう解釈も出来て、深みが増すなあ…と
雨の度にしみじみしていた

(情景描写は大好物なので超個人的にどんどん
咀嚼して1人で楽しくなるスタイル)

2人で一緒に植えたお花が、咲いてるのが
エンドロールの定点画角の下の方に入ってるのも
とても素敵だった


人間模様も素敵だった
だれも、他の人のことを否定したりしない

BLに初めて触れたであろう雪さんも娘の智子さんも
英莉ちゃんも、嫌悪感を示して否定したりしない

BL作品を読んでいることを
"隠していたい"と思ってるうららちゃんの所作に
ついても雪さんは言及しない
(喫茶店で店員さんが来た瞬間に漫画を隠すスピード
はあまりにプロのそれだった風より早かった、すき)

紡くんも、うららちゃんの読み物も描き物も、
それを隠していることも、
否定したりからかったりするどころか、会場に御本
買いにまで来てくれる (心の中で5億点満点あげた)

イベントに一緒に行こうと誘ったとき、
こんなおばあちゃんが行ってもいいの?と躊躇した
雪さんに対しても一緒に行こうって即答
雪さんの体調のことを考えてやっぱり厳しいなと
思ったときも自分の都合で、という言い方をする
サークル出品者になれば、
何時間も並ばずに入場できる&会場内で座れる
それならもう本を!描いてやると申し込み
コピー本にするつもりだったのに印刷屋さんに
話をつけて思ったよりことが大きくなっていた時も
「まーいいか☺️」で受け入れられる器
うららちゃんも自分以外のことを否定してない


この、優しい温度感の中で描かれる人間模様
自分のことを卑下したり、否定したりするのは
いつだって自分で、戦うべき相手は自分なんだな…と


どうやったって、学校という集団において、
暗黙の人間関係勢力図的空気がが存在して、
同じ発言をしてもその発信源が "誰なのか"によって
その発言の捉えられ方は変わってしまうという事実

「BLとか、留学とか、色々すごいね」
「───ずるい」
「大事なものを大事にできてすごいね」

この、たった3つのセリフで表現するセンス…!!
絶妙すぎるニュアンス最高で震えた、すごい…


漫画描いたらみせて、と背中を押してくれた紡くん
コミティアにきてくれたところ拍手喝采だった

シンクロ

寂寥、完徹とかのびのびした筆運びでしたためて
くれるまさきくん

『君のことだけ見ていたい』を読むときの
うららちゃんと雪さん

縁側で紙に透かして描いてるときのうららちゃんと
若き日の雪さん

漫画を描いているときのうららちゃんとコメダ先生

物語が進むにつれて現実と漫画のストーリーも
だんだん重なってきて繋がるラスト 

そしてなんといっても、『遠くからきた人』
一気に涙腺に来た
あれは本屋さん、喫茶店、の辺から、ああ…ともう
耐えられなくなってきたけど縁側で食べるカレーで
決壊してぼろぼろ泣いてしまった
優しくて楽しい日常がつまってるの、最高すぎる…

日頃からうららちゃんや雪さんと同じように、
推しを拝んでわーわーしている身としては、2人に
しぬほど共感する、そう!わかる!だよね!!!と
感情移入が尋常じゃない
コミティアに申し込みの入力画面のところとか、
原稿描いてるところとか自分がイベントでたときの
こともめちゃくちゃ思い出してうん、うん…!!と
それはもう深く頷きながら見守ってたね

お気に入り

雪さんが、最初は南瓜に包丁が通らなくって諦める
うららちゃんと知り合ってからはサクサク包丁が
進むのとてもすき、林檎をざくざく切るとこ良い

うららちゃんが、提出用のプリントに
お絵描きしちゃってて修正テープで消してるとこで
紡くんが来て、俺上手いよ〜!とやってくれようと
するとこ、わたしは 
"紡くんはうららちゃんが絵を描いてることを
知っているしうららちゃんも紡くんには隠してない"
という2人の関係性を表す描写かなと思ってたけど、
終わったあとに一緒に観た友達が、
"紡、英莉ちゃんに呼ばれて全然消さずに去る!"
て怒ってて、
友情と恋愛的なやつの捉え方もあるか!と
こういうのあるから感想話すの楽しいんだよね☺️

イベントにきてくれて、本を買ってくれた紡くんに
「ありがとうございました」と頭を下げるとこ
めちゃくちゃにぐっときた、涙腺やばかった
自分が創ったものにお金を出して頂くことの重さと
嬉しさは、ほんと、そうなんだよね………
一人ぼっちで初めてイベントに挑むうららちゃんが
「ビビった」
て吐露するところと、ラストの方で紡くんが
英莉ちゃんの留学への空港のお見送り行くかどうか
背中を押して欲しくて質問するところ
いいね、青春だね、眩しいね、かわいい美しい

イベント会場まで雪さんを連れてく沼田親子
まさきくんにずーっと「フォロー!フォロー!」て
言ってるお父さん、なかなかの難題でほんと笑った

初めて2人で縁側で並んで話してるところ
プロモーションとかにも使われてたと思うけど
あのカット、ほんっっ…とうに美しい

作中で『君のことだけ見ていたい』が流れるところ
セリフに声がついていないのがよかった
普段漫画読んでるときって自分の脳内でセリフ読む
から、漫画の画面だけ流れることによって一読者と
しての視点を自然に観客に与えたかったんだと思う
けど映画という媒体でアフレコしないという選択肢
を取った制作陣に拍手送りたい…
あれで、イケメンなボイスついてたら陳腐な感じに
なっちゃっただろうなって
うららちゃんの声でセリフがつくときだけ、観客は
一読者じゃなくてうららちゃんの視点に立ってる
素晴らしい…………

あと、漫画美しすぎて終わったあと速攻で
どなたが描いてるか検索した
じゃのめ様にも…………!圧倒的感謝

芦田愛菜ちゃんの演技が素晴らしかったと思う
教室に入るときの猫背の感じ、
本屋さんでバイトしてる時の絶妙なトーン、
すきなものの話題になった時の喋り方の変化と表情
何よりも "走り方" がほんとにすごいなと思った
なんて言えばいいかわからん、表現力…!と思った

2人で出かけて、土砂降りになって帰ってきて
暗い縁側でうららちゃんが、
「今日は、完璧な一日でした」て漫画のセリフ引用
するところ、雪さんは特に何も言わなかったから
彼女が気づいたかどうかはわからんけど、
日常の中で色んな作品のセリフを引用するやつ、
自分が息をするように常日頃やっちゃうやつだから
最高…最高……!となってた
相手が気づかなくてもいいんだよね、これは


個人的には音楽もめちゃくちゃ良かった
1作通して同じ曲が何度も使われてた印象
脳に刷り込み入るから、無条件でぶち上がる良い 
原稿作業してるときにジャカジャカ鳴ってるの
すき


おわり

これはもう、原作を読むしかなくなった
余裕ができたら読む………!!!!!!!!!!

素敵な作品を作ってくださった方々と先生に感謝

2022.07.08

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