#5. マネージャー手前での転職はもったいないのか?-私個人の転職活動振り返り-
しばらく更新が滞っていました。転職すると環境適応が大変ですね。同じツール(例えばMicrosoft TeamsやOutlook)でも、会社毎に運用方法が違っていたりと、まだ低いレベルのところで慣れていない感じがしています。
最初にお断りしておくと、私は事業会社に転職した訳ではありません。新興国支援やSDGs/ESG関連のアドバイザリーを主な生業とする職場に移りました。そのため、仮説を立て、検証し、示唆を出すという基本的な頭の使い方は変わっておらず、前職のコンサルティングファームで培ったことがある程度は使い回せています。
今回はタイトルの通りで、転職するのはマネージャーに上がってからにすべきか否か、ということを書きたいと思います。同テーマを扱った記事は、例えば転職サポートをしている下記リンクの会社がコラムを出しています。
ですので、内容自体に目新しさはないかもしれません。しかし、私が3~4か月ほど転職活動をしていく中で経験したことを共有することで、何か読者の方々のお役に立てる部分があるのではないかと思っています。
振り返ると、シニアコンサルタントに昇格して、マネージャーの準備期間に入った辺りから、自分の中でも転職の機運が高まったように思います。
今回の記事では、①シニアコンサルタント相当になった後の主なキャリアの選択肢にはどのようなものがあるか、②転職する/残る選択肢のメリット・デメリットは何か、③転職するためにどんな手段を活用したか、について書いていきます。
これからコンサルティングファームに入ることを検討されている方も、コンサルに骨をうずめるよりは、更にその先を見据えていることだと思いますので、参考になれば幸いです。
1. シニアコンサルタント相当が採りうるキャリアの選択肢
シニアコンサルタント(ファーム毎に役職名は若干異なります)は、マネージャー手前の職階に当たります。マネージャーの意図を汲みながら案件を動かしつつ、下位スタッフの面倒を見る立ち位置で、手を動かす時間が最も長い職階とも言えるでしょう。
多くのファームでは、マネージャーの準備期間として位置づけられており、新たな案件獲得や継続案件の死守を目的とした提案活動にも関与する割合が増え始めており、一段視座が上がったと実感できます。
私自身は、一つ前の職階の頃から下位メンバーの指導を行っていたこともあり、そこまで負担が増えたようには感じませんでしたが、人によっては苦戦するかもしれません。
そんなシニアコンサルタントは、転職市場でどのように見られているのでしょうか。実は戦略コンサルに在籍していた友人もほぼ私と同時期に転職活動をしており、いくつか同じ企業の採用担当者から面談のお誘いがきていました。なので、その友人から得た話と合わせて、2020年後半~2021年前半付近で提示された選択肢をご紹介できればと思います。(なお、後述しますが転職に際して活用したツールは極めて一般的なものです。)
1.1 他のコンサルティングファーム
圧倒的にお誘いが多いのは、他ファームへの転職です。職業は変えていないので、転「社」と表現した方が正確でしょう。私の上司の中には、複数のコンサルティングファームでの経験を持つ方や、中にはいわゆるBig 4の2周目に入っている方までいました。
シニアコンサルタントまで上がった場合、他ファームに移るメリットは次の3点に集約されると思います。
①年収アップ
②職階アップ
③テーマ/チームの選択
それぞれ簡単に補足します。
①年収が上がるのは、引き抜きの意味合いが強まるからです。慢性的な人手不足と言われている昨今、コンサル未経験者を採用するよりも、他ファームで実績のある人を採用した方が、採用リスクが低いのは何となくお察しかと思います。ここでいう採用リスクというのは、面接時はGoサインを出したものの、プロジェクトに入れてみたら想定していたパフォーマンスを発揮してもらえず、早々に転職される、あるいはどのプロジェクト担当者もアサイン(配属)を控えることをイメージしてもらえれば良いです。
そのため、他ファームの戦力を削ぎ、自ファームの戦力を高める引き抜きは、戦国時代で言うところの調略に近いです。
②次に職階(ランク)ですが、こちらも引き抜きの材料として提示されることが多いです。ただ、マネージャーとして立ち上がるのは早計だと思っている人は、安易に飛びつかない方が賢明だと思います。というのも、実際にそのように無理をしてランクを上げて転職してきた方が、求められることが急激に増えてプレッシャーに耐え切れずに辞めてしまったケースを少なからず見てきたからです。
③最後にテーマ/チームを決められる、という点ですが、これはファームの中の特定のチームが転職エージェント等を経由して求人票を出している場合に見られます。もし、現ファームで思ったようなプロジェクトに入れない状況が続いており、魅力的なテーマでチーム組成されている他ファームがあれば、話に乗っかるというのは十分検討すべき事案だと思います。
1.2 事業会社の特定ポスト
特定ポストと含みを持たせて書きました。これは、過去にどのようなプロジェクト経験を積んできたかによって、お声がけされるポストが変わってくるからです。
私の場合は、4年間のコンサル経験の中で概ね、5つほどの特徴を持つ人材として採用担当者の目に映っていたようです。
・新規事業/戦略立案の経験を活かした事業立ち上げ/推進ができる
・DX(デジタル・トランスフォーメーション)の知見がある
・官公庁向けの調査案件で資料作成まで含めて出来る
・社会課題解決型のビジネス推進に関する感度が高い
・海外案件の耐性がある
とりわけDX関連の引合が多く、需要の高さを改めて思い知りました。戦略的にキャリアアップを図りたいのであれば、関心の高いテーマのプロジェクトで経験を積むことが大切なのでしょう。
また、単にコンサル経験者が欲しいと言わんばかりの求人情報もあり、この点は見極めが必要かと思います。友人の多くが、過去にクライアントとした企業の業界に近い領域に位置する事業会社への転職を果たしているため、最終的に内定に至るには最低限何らかの接点が必要なのかもしれません。
さらに言えば、大企業のみならずベンチャー企業からも多くの引合がありました。主にはある程度立ち上げて軌道に乗り始めた企業が、さらに拡大をするフェーズに入ったあたりでコンサル経験者に声を掛けるケースが目立つ印象です。本当の立ち上げ期から関わりたいという野心的な方は、ご自身で高くアンテナをはって、自分から情報を獲りに行く必要があるかと思います。
1.3 PEファンド
プライベート・エクイティファンドの求人情報もかなりあった印象です。これは体感ですが、DXの次くらいにありました。とはいっても、ファイナンスに精通しているわけでもなく、M&Aをテーマとした案件の経験もなかったので、意外な感じではありました。
話を聴いてみると、多くが投資先企業のバリューアップ(企業価値を高める)をするためにコンサル経験者を送り込むことが増えているのだという。確かに、クライアント先常駐経験もそれなりに積んでいるコンサルタントが多いため、親和性が高いのだと思われます。
年収や働き方の面では魅力的な待遇が用意されていましたが、転職活動時に思い描いていた次のキャリアのイメージとの乖離があったため、私自身は選択肢からは外すことにしました。
1.4 その他
上記3つが主な選択肢ですが、それ以外の選択をした友人・知人もちらほらいます。いくつか列挙すると…研究員、NGO職員、大学院進学(MBA含)、起業、地方自治体職員、専門調査員(外務省経由)等です。
いかに自分の人生の主導権を握るかということが大切かと、多様な分野で活躍している人たちを見るにつけて感じるところではあります。
2. シニアコンサルのタイミングで転職するメリット/デメリット
ここからがこの記事の本題です。マネージャー手前で転職するのは勿体ないのか?ということを念頭にメリット/デメリットを記述していきます。
メリット/デメリットという言葉が漠然としているため、ここでは3つの側面で整理しようと思います。目新しさはないですが「ヒト・モノ・カネ」に分けて記載します。すなわち、「人間関係(ネットワーク)、スキルセット・情報、年収」という側面での分析です。以下、少し言葉を補足します。
「ヒト」はすなわち人間関係(ネットワーク)を指します。社会人になって数年経って感じるのが、仕事の規模が大きくなればなるほど、人と人との繋がりが重要だということです。これを社会関係資本などと表現したりもしますが、それがシニアコンサルタントという段階で転職することで、どうなるかを書きます。
次に「モノ」ですが、これは広く捉えて自分が持つスキルセットを扱うことにします。先ほど、シニアコンサルタントはマネジャーの準備期間と書きました。つまり、プロフェッショナルファームで言えば、孵化する前の蛹(さなぎ)の段階であるとも言えます。そのため、蛹の段階(シニアコンサルタント)で動くのは時期尚早だという意見にも一理あると言わざるを得ません。このあたりを整理したいと思います。
最後に「カネ」は、短期的な年収のUp/Downの話ではなく、中長期的な視座で書いていこうと思っています。
ちなみに、私個人の意見は、たとえ遠回りになったとしても、一度コンサルティングという仕事から離れてみた方がいいのではないかと思っています。その思考に至った経緯は、この章の後半で書くことにします。
2.1 人間関係(ネットワーク)
プロパー(生え抜き)のコンサルタントの場合、シニアコンサルタント相当まで上がる頃には、在籍年数が3~5年程度経っています。この年数をどう捉えるかは人それぞれですが、私の感覚からすると割と古株になってきます。それほどまでに人材の流動性が激しいことがコンサルティングファームの特徴の一つと言えます。
そのため、プロパーのシニアコンサルタントは、ファーム内である程度の評価を勝ち取っていることは明らかで、そのような人材は、ファームで囲われる(優遇される)ことが多い傾向にあると思います。すなわち、育成・指導をしてくれる上司が複数おり、更に言えば将来マネジャーになった折にはプロジェクトメンバーになってくれそうな後輩メンバーもいるといった状態を築きつつあります。
転職をすることは、この状態をリセットすることに他なりません。それは詰まるところ
・上司を「活用」して取り組みたい案件に参画・形成するための機会
・中長期的な成長を見据えた指導・助言を得られる機会
・ファームとして注力していきたいアカウント(重要クライアント)やプロジェクトに優先的にアサインされる機会
を手放すことを意味します。実際、私自身も「仕込み」の段階にあった新規の面白そうな案件がありましたし、執行役員から定期的に面談がセットされその時々に応じた適切な助言を得られる環境に置かれていました。
シニアコンサルタントの段階でファームを離れることのデメリットは、この状況を手放すことであると私は思います。
ここまでの話は、あくまでもファーム内での話です。これが社外も含めると自体は大きく変わってきます。私の感覚では、シニアコンサルタントはまだコンサルキャリアとしては若造です。そのため、指名されて仕事が獲れるほどの関係をクライアントと築けている人は極めて少数だと言えます。
これはマネジャーに上がってからもあまり変わらず、大企業の重役との面談や契約は、執行役員やその手前の人たちで行われているのが実態です。そのため、社外の人とのネットワークを活用してキャリアを形成していくことは、よほどの人たらしで仕事ができる人でない限りは難しいでしょう。
そのため、自分が今後関わっていきたい領域がファームの外の世界にあり、その世界に飛び込む手段として転職をするのであれば、転職後のネットワークの広がりはむしろ高まります。つまり、社内の人間関係をリセットしても有り余るほどの繋がりが期待できる場合は、転職のメリットは大きいと言えるでしょう。
実際、私も転職を機に途上国/新興国支援の領域に足を踏み入れましたが、学生時代に同領域に関心のある友人や先輩と再び繋がりました。また、LinkedInを更新したことで、この領域に関心のある人から声がかかる機会も増え、むしろ社外に人間関係が開かれた実感があります。
私の事例は一つのサンプルに過ぎませんが、まとめると
・社内ネットワークのリセットというデメリットは避けられないが、
・社外のネットワークが広がる可能性を秘めているというメリットはある
といったところでしょうか。
2.2 スキルセット
シニアコンサルタントは、コンサルタントとしてのデリバリーの基本が出来ているランクに当たります。デリバリーとは誤解を恐れず一言で表現すると、案件を動かすことを指します。すなわち、情報収集、分析、示唆出し、資料作成、プレゼンといった一連の動作を行うことです。
人によって得意・不得意や経験・未経験の動作はあるものの、シニアコンサルタント相当になる頃には、自走できる段階に仕上がっていると言えます。スキルの練磨に終わりはありません。ですが、体系的な訓練や指導を必要とする段階から、日々の業務を通じて試行錯誤する段階に移行した人がシニアコンサルタントと言えるでしょう。
そのため、求人広告で見かける「コンサルタントの基礎スキル」と言われる場合に期待されるものは、概ね身に着けたと胸を張れる状態にはあります。この基礎スキルを携えて、関心領域の高い分野に転職をするというのは、キャリアを通じた自己実現という観点からは合理的な選択と言えるでしょう。
では、シニアコンサルで他ファームへの転社ではなく、転職をした場合に身に着かないスキルセットや経験とは何か。それは、プロジェクトマネジメントや案件獲得のための営業活動です。
具体的には、クライアントの経営課題を見極めて「刺さる」提案をすること、契約締結に際してファームとクライアントの折り合う点を見つけること、プロジェクト遂行に必要なチームを組成すること、組成したチームをリードしてクライアントの期待を超える成果を出すこと、プロジェクト遂行上噴出した問題に適切に対処すること、etc...
これらは、私がスタッフの立場で見てきたマネジャーの仕事のごく一部ですが、このようなプレーヤーではなくプレーヤーを上手く動かす経験を積むことがシニアコンサルタントでは出来ません。
そのため、求人広告の中でも責任あるポジションには、まだ応募できる段階には無いと言えます。マネジャーまで経験したからこそ開かれる機会があるということです。もっとも、転職先で昇進してマネジメント経験を積むこともできるため、杞憂に終わるともいえるかも知れません。しかし、ファーム内でステップアップしていくのに比べれば、時期は少し先送りとなることの方が多いでしょう。
まとめると、マネジメントを期待されるハイランクの求人への応募はまだできないため、転職をするとマネジメント経験が数年先延ばしになる可能性があることがデメリットであると言えそうです。
2.3 年収
年収に関しては、転職先がどこであるかとの兼ね合いで決まるかと思います。先ほど述べた選択肢である①他ファームへの転職、②事業会社への転職、③PEファンドへの転職、④その他に分けましたが、このうち①と③のケースでは、ほぼ間違いなく年収アップが期待されます。一方で、②では年収減ないしは横滑りといったところです。
貰えるものは多く貰っておくに限る、という考えであればそれまでですが、何も考えずにファームでのキャリアを長引かせると、気が付いた時には身動きが取れなくなっている可能性があります。
総合系ファームの場合、マネジャーに上がると年収1,000万円を超えます。戦略ファームの場合はもう少し早い段階でこの額を超えるのが相場です。では、他の業界はどうかと言えば、20代後半~30代前半ですと良くて600~700万円程度が相場でしょう。(会社四季報の業界地図の冒頭で、各業界の概算の年収が載っています。)
年収が早く上がることのデメリットは、まさにこの点にあります。すなわち、マネジャーまで昇格した上で、培った経験・スキルを使って他業界・業種で活躍しようにも、同水準の年収を約束される求人数が極端に減少するということです。
人間、一度上がったものを下げたり、元に戻すのは難しいようです。実際、私のこれまでの上司の中には、何度がコンサルティングファーム以外への転職を考えたものの、年収が折り合わなかったという方が一定数いました。ライフステージが変わることで、ローンや子どもへの教育費等で何かと入用になるため、徐々に思い切った選択ができなくなる傾向にあります。
これは私見で改めて書こうと思いますが、コンサルタントである限りは、プレーヤーとはなれずあくまでも伴走者です。ファーム入社時は、特に特定の業界に思い入れはなくとも、色々と経験を重ねる毎に「勝負したい」「試してみたい」と思える特定の業種・業界が出てくることもあります。
仕事はお金のため、と割り切っている人にとっては「多かろう、良かろう」で終わる話です。ですが、時に合理的ではない意思決定に魅力を感じてしまうのが人間の性(さが)というのも一理あるように思います。
「年収を下げてでも」よりも「年収はほとんど同じだから」とフラットに自分の環境を変えるチャンスは、シニアコンサル相当くらいまでとも言えそうです。
2.4 私見
ここまで、シニアコンサル相当でのメリット/デメリットをなるべく私見を排して述べてきたつもりです。ここから少しだけ、私目線でシニアコンサル相当での転職の是非を書いていこうと思います。
まずデメリットですが、3か月~半年程度の時間の投資が必要な点です。20代後半~30代前半で経験できる仕事は、試行錯誤の連続であり、自分の仕事の型を体得していく機会であると言えます。転職活動と並行して現業を行う場合、どうしてもエネルギーの一部が転職の方に割く必要があるため、現業からの学びの機会は必然的に目減りします。(それを上回るだけの機会を転職後で得られれば、長期的に見た自己投資とも言えますが)
中には「キラキラなキャリア」を現ファームで築けており、引く手あまたという方もいるかもしれません。その場合は、自分から積極的にアピールすることなく、オファーが舞い込んでくるため、特段転職にエネルギーを割かれることはないかと思いますが、稀な事例と言えるでしょう。
私の場合、転職前直近の案件が、お世辞にも良いプロジェクトとは言い難く、最低限やるべきことをこなして、転職活動にエネルギーを全力投球していました。しかし、振り返ってみると、後知恵ではあるものの、工夫すべき点は幾つも見つかりました。もう少し時間をかけて思考できていれば違ったアウトプットになった可能性があったな、と思うこともあります。このあたりは、贅沢ではありますがトレードオフなのでしょう。
次にメリットですが、キャリアの棚卸しができたことと、現ファームでの自分の境遇を再確認できたことを挙げたいと思います。
以前からプロジェクトが終わる度に、LinkedInとBizReachでの職歴更新を行っていたため、完全にゼロから棚卸しをした訳ではありませんでした。しかし、自分を全く知らない人(リクルーターや面接官)に対して、自分のこれまでの経験を語り、出来ることをアピールする機会は、今回が初めてでした。
そのため、就職活動の時以上に準備をして、自分なりに分かり易いと考える4年間のファームでの経験をパッケージ化したつもりです。これは皮肉な結果なのですが、ファームの外に出るために最も役に立ったのが、ファームで培われたストーリー化して伝える力だったように思います。ファーム入社以来、短時間でリサーチや検討結果のプレゼンをする機会が、内部・クライアントを問わず無数にあったため、相手視点で何が有用な情報なのかをそこまで意識せずともできたように思います。
30代半ば、40代前までのタイミングで「どうありたいか?」、「何をしていたいか?」を考えるきっかけになったことも、今回の転職では大きかったです。また変わるかも知れませんが、私は今回の転職を機に、国際協力の領域での知見を高めてゆくゆくはアカデミアの世界へ…というキャリアパスを何となく描ける一歩を踏み出せたように思います。
また、ファームを去る時に声を掛けてくれた方々が多くいたことも、励みになりました。中には、今後一緒にプロジェクトをしようと思ってくれていた上司もおり、もう少しファームに留まっていれば、見える景色が異なっていたかもしれません。
ただ、以前の記事でも書いたようにシステム導入案件の増加により、若手コンサルタントの裁量が限定的になってしまっている昨今の状況や、一度コンサルタントという職から離れてみなければならないという茫漠とした思いがあったため、転職すべきだったか否かは、不問にしようと思っています。
(転職から暫く経って改めて読み返しました。今書くと少しは違うことが書けるなという実感はありますが、またそれはその時)
3. 転職の際に活用したツールや参考書
最後に転職活動の際に活用したツールと参考書を紹介します。といっても、企業やリクルーターとの窓口に使ったのは、LinkedInとBizReachのみです。週平均で10社~20社くらいのお誘いがあったので、転職活動開始初期の段階では週4~5名/社と面談や面接をしていました。
シニアコンサルタントまで上がると、体感としては想像以上に引合があるため、闇雲に話を聴くのではなく、自分の中に一貫した「今回の転職の大義」を決めておくと良いです。実際、私も最初は「いい機会だし、いろんな企業の人と話をしてみよう」と軽い気持ちでカジュアル面談に応じていましたが、やはり一瞥して興味の持てない企業は結局どんなに頑張っても興味を持てないままです。(加えて、そういう候補者に対して「刺さる」プレゼンをできない窓口担当者は、残酷ですがリクルートには不向きと言わざるを得ません。今回の転職活動では、反面教師として分析していました。)
就職活動と決定的に違うのは、仮に落ちても現職で頑張れば良いという精神的なゆとりです。(もちろん、そうではなく追い込まれている人もいるでしょうが)そのため、私は面接の際に次の3点を話すようにしていました。
①私ができること(即戦力と見なせるかどうかを判断してもらうため)
②私がオファーを受ける条件(私が転職先で取り組みたいことが、その会社で今後取り組もうとしている領域と合致しているかを判断してもらうため)
③入社時期(複数の事情が重なり、即転職が出来なかったため、そこまで懐深く待ってくれる程度の余裕があるかどうかを私が判断するため)
この3点を確認することで、合わない場合は即落としてもらうようにしていました。時間は有限なので、お互いに無駄がないようにと。
このようなドライな気持ちになれたのは、これから挙げる次の書籍による影響が大きいです。
LinkedInの日本代表である村上臣氏による転職本です。村上氏独自の見解というよりは、様々な人が書いてきた記事・コラムや転職本のエッセンスが、漏れなく説明されている、といった印象です。まず転職を思い立ったらよむべき本なのかと思います。(ちなみに、私は他にもいくつかの本を読み比べた後に、こちらの本に辿り着きました。個人的には北野唯我氏の『転職の思考法』よりも、『転職2.0』の方がページ当たりの情報密度が濃いのでお勧めです)
こちらの本は、現職が向いているか否か、今の職場環境が自分にとって好ましいかどうか、今後やりたいと思っていることが自分の適性と合致しているかどうか、を判断する一助となります。
表題の通り、学術論文の知見を使った就職指南の本ですので、著名な経営者が書いたキャリア論や再現性に乏しいインフルエンサー的な人物が書いた自己啓発本を何冊も読むくらいであれば、こちらの書籍を手に取るのが良いかと思います。
と前置きをしておきながら、この本はいろいろと考えさせられました。
この本は、宇宙飛行士にあと一歩のところで選ばれなかった内山崇氏による宇宙飛行士選抜試験の体験記です。これほどまでに過酷な選抜試験に比べれば、転職での複数回面接など大したことはないと思えてきます。また、内山氏ほどに情熱を注ぎこんでも選ばれない非情さが、選抜というプロセスにはついて回るという現実や、仮に落ちてもまた別の道があるのだということを改めて思い起こしてくれる作品でもあります。
私自身、学生時代の就職活動で15年来の想いが打ち砕かれたことも相俟って、これから新たなスタートを切ろうとしている人へのエールの意味で、こちらの本を強く薦めます。
4. 今後のnote
本記事をもって、一度コンサルタントからの転職を内容とする記事に一区切りをつけようと思います。今度、このトピックで更新をするときは、コンサルティングで培った経験が思わぬ形で現職で生きたと思えた時や、数年後に改めて別の挑戦をした時になるでしょう。
次回以降は、現職に関連する情報発信(国際協力)や自分の趣味(本、映画、音楽)と絡めて気付きや発見が得られる記事を執筆していきたいです。
大学院での一番の学びは「立ち止まる勇気」。変化の多い世の中だからこそ、変わらぬものを見通せる透徹さを身に着けたいものです。気付きの多い記事が書けるよう頑張ります。