忘れられない人はいますか 2
席替えで隣の席になった彼。
好きになったきっかけなんて覚えていない。
優しい笑顔?たくさん話しかけてくれたから?格好よかったから?趣味が合ったから?
わからない、理由があったかもしれない、理屈ではなかったのかもしれない、ただもう遠い記憶すぎて覚えてないだけかもしれない。
でも、ただ
ただ、ただただ、私は彼を好きになった。
毎日の学校生活が楽しくて仕方なかった。
彼に振り向いて欲しい、彼に好きになってもらいたい、ううん、彼がどうしても私を好きになってくれなくても、そばにいて欲しい、1番でなくてもいい、お願いだから。
と、身勝手であり、それに何の意味があるのか、というようなことすら平気で、本気で考えていた。
それくらい、彼で私の世界は埋まっていた。
ある夜、父からの声かけ。
「おーい、次早くお風呂入りなさーい」
追い焚き機能などなかった時代、1人がお風呂に入ると、湯船が温かいうちに早く入るようにと家族みんな次々に入っていく。
しかしこの日の私は違った。
「今日から私は朝シャンをします!」
と家族に宣言。
両親は目を見開き「朝にシャワーをする時間なんてあなたにあるの?」と驚き半分、呆れ半分の様子だったのを鮮明に憶えている。
私は彼を好きになってから
朝シャン
というものをするようになった。
シャンプーは忘れもしない「スーパーマイルドシャンプー」
この香りが世界一いい香りだと信じ込んでいた。
この香りで彼を魅了したいという作戦だ。
人間、本気になれば早起きだってできるのだ。
あの頃の私は全力で生きていた。
何事も全力。
今の私のそのバイタリティはもうない。
一生懸命だった私。
おかしな思い込みだって、どこに力を注いでいるんだということだって、全部が愛くるしく思い出される。
告白の時期を探っていた。
コテンパンに振られることなど予想もしてなかったのか、
いやわかっていたはずなのに、1%の期待、これをなくすことはできなかった。
神様、おねがいだから。
何度神様におねがいしたことだろう。
神様、おねがいばかりの私の人生、お許しください。
「好きです!」
「あ、ありがとう」
「付き合ってください!」
「え、それはできない。」
コテンパン。