なぜ米国の方が格段にカスタマーサービスが良いと言えるのか?
シリコンバレー人事のTimTamです。
「そんなはずはない。日本が世界一のおもてなしの国であり、きめ細やかなサービスに関しては雑な米国にまけるはずがない」ーそう思われた方もいるでしょう。
今回は、日本ではあり得ないようなカスタマーサービス対応について共有していきます。これを読むと、アメリカの文化に対する理解が深まります。また、ビジネスでもうまく立ち振る舞えるようになります。そして何よりも、在米日本人の方はもとより、海外旅行で米国に来る方も大きくお金をセーブできる可能性があります。やりすぎには注意しましょう(笑)。
日本の方がサービスがいい、は見方次第。
日本の方がサービスが格段に上、という人がいます。私もそう思ってました。おもてなし文化に代表されるこまかな心遣いなどは日本が誇れるものだと思います。
ですが、途中から気が付きました。「アメリカのほうがサービスいいかも」。と。
それは、サービスの在り方が若干違うからかもしれません。
日本の場合は、例えばホテルや旅館に滞在して、何か不手際があった時、ちょっとこういう困ったことがありました、というと、「本当に本当に申し訳ございません。以後スタッフを教育し、二度とこのようなことがないように徹底致します」と、やたら謝罪されます。でも、それだけなのです。そう、謝罪だけ。まさに、Talk is cheapの世界。
ところが、アメリカでは、気に入らないものは返品すれば全額戻ってくるし、新品と交換されたりもします。サービス業では 問題を報告すると、 割と簡単にお金が戻ってきます。もちろん、100%ではありませんが、主張をする価値はあります。
あくまでも紳士淑女に振舞えば、嫌な顔一つされることもありません。
この世界に慣れると、もう戻れません。達人の域になると、例えば旅行中のホテルで、何か問題を見つけると、逆にこれをつかってどういうよいディールを引き出そうかとワクワクしてしまう人もいるとか。
日本は、マニュアル文化、大量生産文化であり、フレキシビリティがありません。ものすごく丁寧に謝罪されることはあっても、初期不良品などでない限り、お金が戻ってきたりすることは稀です。日本でいろいろと交渉をすると、「わがままな人だ」とか思われてしまう。マニュアル文化を飛び出して、個別対応の世界であるアメリカに来た日本人は、最初アメリカの文化を「おおざっぱだし、いい加減」と感じることも多いようです。
以下に、アメリカでうまく立ち振る舞えば、何千ドル、何万ドルという節約につながる可能性の高いケースを10個まとめてみました。
1.言わないと相手に理解されない。なので言いましょう。
日本のように、島国で、そこに住んでいるのはほとんど日本人。よって、価値観も似ているし、すべて語らなくても大体こういうときにはこうするものだ、という事が阿吽の呼吸で理解されます。これを専門用語でhigh context cultureといいます。この文化の特徴は、相手が話を理解できていないとき、その責任は聞き手のせいになることが多いです。
一方、アメリカは移民国家です。いろいろな国出身の人が集まって住んでいます。なので、あなたにとって当たり前のことは、相手にとって当たり前とは限りません。よって、相手が分からない前提で話す必要があります。これをlow context cultureと言います。ここでは、相手を理解させる責任は話し手にあります。
2.基本中の基本、不要なものは返品する
これについては、別途返品についての深い記事を書いていきたいと思います。日本人からすると、信じられない話も沢山あります。2年前にかったジャケットが返品できる、レシートなしでも返品できる、枯れた植物でも新しいのと交換できる、等々。
もちろん悪用(abuse)しようと思えばできてしまいますが、違法ではありません。例えば、会社の人が友人とハワイ(マウイ島)に行ったときに、Costcoでビーチパラソルを買い、ハワイ滞在中だけビーチで使って、その後その友人はCostcoに返品して全額返金を受けたそうです。ここまでくると、unethical(道徳的にいかがなものか)な領域で、悪用と言わざるを得ないですね。こういうことをすると、そのうちバチがあたる(karma)と考えているアメリカ人も多く、よってもちろん皆がやっているわけではありません。ですがこれも違法ではないのです。
とはいえ、ものを買って使っていないようなら、まずは返品を試みる事ですね。古いものでもダメ元です。日本人はここで罪悪感を感じてしまうようですが、この返品制度のおかげで、「とりあえず買ってみよう」とより大きな消費行動につながっているのも事実です。あとはあなたの考え方次第です。
3.プライスアジャストメントを利用する
これについては、以前書いたエントリーを参照ください。Costco以外でも、Macysなどのデパートでもやってるところあります。これも、基本的には、ちょっと前に買ったのだけど、プライスが下がるとわかっていたら買わなかった、take careしてほしい、と主張する事と同じです。
もし、対応してもらえなければ、返品し、低いプライスに下がった同じものを買いなおせばよいのです。
4.旅行先でできる主張とは-ホテル編
一番初心者に狙いやすい領域と言えるでしょう。問題がおきたときに最も狙いやすいのは、Parking Feeを免除してくれ(車やレンタカーで行って駐車料金を取られた場合)、という事と、朝食をつけてほしいの2つです。次に狙えるのは、ポイントをくれ、です。最後に、チャージされた金額をリファンドしてほしい。です。これまでのトラブル事例と、解決方法を以下に書いておきますので参考にしてください。
◆ホテルのクリーニングって高いですよね。にもかかわらず、ホテルで出したクリーニングを、帰宅してから確かめてみたら、シミが取れてなかった。という事があります。アメリカのクリーニングは、日本ほど細かくないので、取れてない事はあるのですが、さすがに大きなシミが取れていないと、何のために出したんじゃい、となります。そのような事があった場合、帰宅してからでもメールや電話をすると、ほぼ100%お金が戻ってきます。これまで何度か経験あります。
ちなみに、同様の事がロンドンのホテルで起きた時。結果から言うと、お金は戻ってきましたが、証拠写真を送ってほしいとか、大変苦労しました。客を信用してないのか!という感じなのですが、アメリカで証拠写真を送ってくれと言われたことはありません。この経験から、イギリスのほうがもう少しルールに固く、日本とアメリカの中間という印象を持ちました。
◆とある米国のホテルにて、自分が泊まった部屋の外が改装工事中で、かけてあるビニール袋が窓にこすれて、カサカサいうので、うるさくて寝れなかった。一方、同じホテルに宿泊した同僚の部屋は素晴らしく、チェックアウトの時にとてもdisappointした。何かcompensateしてくれないか、といったところ、10,000ポイントもホテルポイントをくれました。名目としては、good will point adjustmentとありました。(当時はまだマリオットと統合する前のスターウッドポイントで、現マリオットポイント30,000ポイント相当に当たります)。
◆割と高級ホテルのはずなのに、部屋にゴキブリが出た→気持ち悪くて寝れないので、部屋を変えてほしい。禁煙ルームのはずなのにタバコのにおいがする→生理的に無理なので部屋を変えてほしい。こういう時は、すかさず連絡します。私の経験では、次の部屋は アップグレードされた部屋になる事が多いです。
◆ヒルトンホテルなんかは、 ポリシーとして、100% Satisfaction Guaranteeを謳っています。 一度泊まったホテルで、トイレのタンクが若干壊れていて、定期的に水が流れる音がするので、うるさくて寝れませんでした。この時は、その後にメールできたhow was the stay?というアンケートにこういうことが起きた、と書いたら、その後マネジャーからメールで返答あり、宿泊料金がすべて戻ってきました。
◆別のホテルで、下の会場で宴会が行われており、これまたロビーに連絡するも、うるさくて全然収まる気配はありませんでした。3度ほどロビーに連絡したところ、こちらもなんと宿泊料が全額戻ってきました。
◆ハワイでの経験ですが、事前に連絡をして、キッチンがある事を確認したので、食費を抑えようと、スーパーでしこたま食料品をかって、チェックイン。そうしたら聞いていた内容と異なりキッチンはおろか、冷蔵庫すらない。これにはさすがに、話が違う、と連絡をし、この買った食材の料金も無駄になるがどうしようかと相談したところ、まずポータブル冷蔵庫を部屋に持ってきてくれました。その時、冷蔵庫を持ってきてくれた担当者から、食材はスーパーに返品すればいいじゃないか、と言われましたが(笑)、若干距離の離れたスーパーまで戻るのが面倒くさいし、やっぱり無駄になるよね、といったところ、マネージャーと話をしてみるといい、とのアドバイスを受け、さっそく電話。食材費が無駄になるので、滞在中、家族分全員の朝食をつけてくれ、と話したら、即答でOK。これで一人20ドルくらいした家族分全員の朝食代が一週間の滞在文すべて無料になりました。さらに駐車場代もまけてくれたら、もうこれでこの話は水に流す、と言ってみたところ、こちらも即答でOK。駐車場代も一日20ドルくらいしたので、あっという間にここでも5日×20ドル=100ドルをSaveできたことになります。
◆さらに別の旅行で、部屋に備え付けられていたコーヒーの粉、朝に飲んで、一日外出先から戻ってきたら補充されていなかったという事がありました。その他のハウスキーピングは問題なかったのに、コーヒーだけ補充を忘れていたみたいです(注:コーヒーメーカーは汚い事が多いので私は普段は使いませんが、ここは割といいホテルで綺麗だったので使用しました)。この時は、サービスに電話をして、補充されていないから持ってきてくれる?と言って、その後プールに出かけ、部屋を不在にしました。プールで遊び終えて、さあ、部屋でコーヒー飲もう、と思ったら、まだ補充されていない。割とちゃんとしたホテルだったので、これはちょっといけてないな、という事で、起きた事を事実に基づき報告。「とてもdisappointした。せっかくの旅行なので、気分よく過ごしたかったのにと。もし、滞在中の朝食を家族分つけてくれたら、I will be very happy and forget about what happened.」 と言ったところ、後程封筒に入ってコーヒーとともに滞在中の朝食券が!ここのホテルは結構いいホテルだったので、朝食代は一人35ドルほどしたはずです。やはり朝食を無料にするというのは、比較的取りやすいディールといえます。
5.旅行先でできる主張とは- レンタカー編
LAでの経験です。いつもは日本車を選択するのですが、この時は、ちょっと気分をかえてアメ車でいいかと、アメ車にしました。ところがこのアメ車、運転中に変な音がするばかりか、ブレーキの利きが悪く、事故をしそうになったのです。サービスセンターに電話して、指定された修理工のところに持っていき、解決しなかったので、結局レンタカーのところまで戻って新しい車と交換したのですが、このおかげで予定が半日潰れました。新しい車は快適で全く問題なかったのですが、最初の車のせいで被った時間的損失と、事故してたら死んでいたかもしれないかもしれないのです。そこでこれは、帰宅してから、再度レンタカー会社の電話番号に電話をし、あり得ないので、レンタカー代を戻してほしい、とお願いしてみました。すると・・・謝罪とともに、使ったレンタカー代が全額$500くらい戻ってきたのです。全然高度な交渉をしたわけではありません。そう、ただ言っただけです。
6.UberやLyftなども言いましょう。
今までUberやLyftでも、数多くのrefund(返金)を経験しました。やることはとても簡単で、あとで問題を報告するだけです。直接人と話す必要すらありません。私はこれまで二回ありましたが、ドライバーがどうみても写真と別人なのです。これはUber内でも重大な規約違反なので、報告すると逆に有難たがられます。私の場合は、Uberドライバーのプロフィールの写真がかなり年配の方なのに、実際に迎えに来た人が大学生くらいのおにーちゃん。これまでの経験だと、色々話しかけても、向こうは無口でほとんど最低限しか話してこようとしません。きっと、後ろめたさがあるのでしょう。
こういう場合は、のちに報告すると、全額戻ってきます。私の場合は、二回とも自宅から空港までで、70ドルくらいのUber代が全額返金されました。
他にも、UberやLyftで登録されているのと違う車が来た場合も規約違反です。
あとは、一度ドライバーの娘さんが乗っていたことがあります。「あれ? Uber Poolを頼んだ覚えはないんだけど」と思っていたのですが、ドライバーが、どうしても娘をピックアップしなくてはいけなくて、ごめん、と言ってきたのです。この時は、報告すればまた返金されたのかもしれませんが、ドライバーさんがいい人で、頑張って家族をサポートしているのかなと思って、何も報告しませんでした。
ちなみに話はそれますが、UberとLyftは、サービスになんら差を感じないので、アプリを両方立ち上げて、値段を比較して安い方に乗るというのが常識です。
あなたは以上の対応を見ても、アメリカのほうがサービスの質が悪いとお考えになりますでしょうか? ちなみに上記は数ある事例の一部です。まだまだあります。
なお、日本の知人に言わせれば、Uber Eatsで対応が悪いと、クレームするとすぐに返金されるとか。日本のアマゾンも返品に応じたりしていますので、今後少しずつこの文化は日本にも浸透していくかもしれませんね。
7.勤務先でも上司にはちゃんと昇給、昇進については相談する
役割が増えたがいつそれは給与に反映されるのか、など、チャンスを捉えては聞いてみましょう。これはとても大切なことで、勝手に上司がこちらの事を考えてすべてケアしてくれるだろう、などと受け身な姿勢ではいけません。繰り返しますが、相手はこちらが何にストレスを感じているのか、何にアンハッピーなのか、などは言わないとわかりません。自分もマネジメントの立場で考えると、ちゃんと言われるとできるだけ真摯に対応したいと思うものです。ただし、伝えるときは、あくまでもプロフェッショナルにベストなタイミングでいう事が必要です。
最近、とある日本からきた駐在員の人と話す機会があって「声がでかい人がどんどん有利な条件を取っていくのはおかしい」とおっしゃいました。これは、やはり日本的な考え方と言わざるを得ません。米国ではそもそも、ダイバーシティがある移民国家であり、個別対応が基本です。そして出来る人ほど、主張して、有利な条件を勝ち取っていく、そういう世の中です。日本のようにあまり差がつかない、ピーナッツバターのカルチャーではないという事を肝に銘じた方が良いでしょう。(peanut butter approachというのは、それをパンに同じように塗りたくるところから来た表現で、みんな同じようにボーナスをあげたりするようなアプローチの事をいいます)
8. ケーブルテレビや携帯電話会社なども!
驚くことにあまり日本人はやっていませんが、ケーブルテレビを契約している場合、契約1年目だけ安くて、2年目から料金が跳ね上がったりします。こういう時は、電話をして、聞いてみましょう。おそらくよいディールを得られるはずです。最近は、Netflixなどもありますし、従来のケーブルテレビ会社は顧客のつなぎ止めに必死です。
私の場合は、ケーブルテレビは見ないのですが、どうしてもインターネットの契約だけはしなくては行けなくて、最初68ドル毎月払っていました。ところが、同じインターネットプロバイダーで、会社の同僚が、45ドルで契約しているというではありませんか。そこで私はこの会社に電話をし、同じ会社の人が、同じ内容のインターネットを45ドルで契約している、アンフェアと思う、と電話してみたところ、私のも45ドルになりました!
9.定期購読/各種subscriptionサービス
よくあるのが、auto renewalといって、何もアクションを取らないと、毎年決まった日に勝手に更新されてしまいます。ここまで読んでくださった皆様はお分かりですね。はい、電話をかけて、更新するつもりはなかった、うっかり忘れていた、と言えば戻ってくることが多いです。ただし、会社によっては、最初の1回目だけ許してくれるが、それ以降は対応してくれないところもありますので、気を付けましょう。このような場合は、auto renewal設定をオフにしておきます。
10.停電
なんとアメリカは先進国なのですが、たまに停電が起きたりすることもあります。もりやんの住んでる地域など、シリコンバレー/ベイエリアといって、アメリカの中でも特に超先進地域のはずです。ところが、過去3年の間に、2回ほど大規模停電がおきました。12時間は電気がもどりませんでした。
おかげで、買ったばかりのアイスクリームはダメになり、あんなものやこんなものも色々とだめになりました。
そこで電気会社(PG&E)に電話をしてみたら、フォームを送るからそれに記入して、レシートなどもあれば一緒に送り返してくれれば、ダメになったものの分は弁償するから、とのこと。
おっ♪ と思い、あれやこれや盛って出したところ。。。
先方より電話があり、「申請に含まれていた費用のうち、停電のために外食した費用も入っているが、それはカバーできない。」と。私も負けじと食い下がり、「でも停電しなかったら、家で調理して安くすませられたのに、電気もつかない中どうやって料理しろというのか」と言ってみたところ。。。半額でどうだと言われて。。もうこれ以上面倒くさいからいいかと思って、そこで手を打ってしまいました。トータルで300ドル近くのチェックが送られてきましたよ。
まあ、もともと戻ってこなくてもいいかなと思ってたくらいなので、よしとしましょう。やっぱり言ってみるものです。
最後に、まとめ
最後のまとめとしては、ただ文句を言うだけではだめという事です。具体的に、問題があって大変な思いをしたので、どうして欲しいのかを明確にすることです。相手がカスタマーサービスだったら尚の事こういう事には慣れっこなので、そのリクエストに対してできるか、できないかを検討してくれることになります。ですが、ただ文句をいうだけでは、ただのクレーマーです。あくまでも、感情的にならず、オトナな対応で感じよく相手に敬意をもって接しましょう。「お客様は神様」的な、はき違えた日本的考えはアメリカでは通用しませんし、個人的にも好きではありません。サービスを提供する側にも、客を選ぶ権利があります。なので、先方とこちらは対等、という感覚で、あくまでもリスペクトをもって接しましょう。「これはあなたのせいでは全然ないだけど、こういう困ったことがあって、助けてもらえたりしないかな?」とか、助けてもらったらその後、レビューなどでちゃんと〇〇さんの対応は素晴らしいなどとコメントを残したりチップをあげたりすることも大切です。
あと、日本と違って、いろいろな請求の間違いなども多いです。間違いのせいで得をすることも多いのですが、大きく損をしている場合もあります。身を守れるのは自分しかありません。こういう時、即座に誤りを見つけて、相手にただすように言う、という行動をとらないと逆に間違えてしまいます。
今回は結構長くなりましたが、このへんで。